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ベルカ、吠えないのか?
古川 日出男 著 文藝春秋 / 2005.4
1943年・アリューシャン列島。
アッツ島の守備隊が全滅した日本軍は、キスカ島からの全軍撤退を敢行。
島には「北」「正勇」「勝」「エクスプロージョン」の4頭の軍用犬だけが残された。
そしてそれはイヌによる新しい歴史の始まりだった――。
不思議な本でした。
帯には、『四頭のイヌから始まる、「戦争の世紀」。』と書いてあります。
犬がメインのようだけど、ひとくちに犬本とは言えないし、そうかと言って、犬本ではないとも言えない。
本当に不思議な本だと思いました。
軍用犬として活躍する犬たちの優れた血統が、その後何代にも渡って引き継がれていきます。
それは、時として軍用犬であったり、犬ぞり用の犬であったり、バカな主人に仕えたり、また、主人を持たず野犬と化したりと、様々な生き方を持って引き継がれてゆくその血の濃さに感動さえ覚えます。
優れた血統というのは如何なる事があっても引き継がれるものなんだな~と、そして、その血を引き継ぐ犬たちはどんな事があっても生き延びる、それが本能というものなんだな~とつくづく思わされます。
でも、常に陰が付きまとい、愚かな人間に翻弄されるのが犬たちの宿命でもあるのかと、悲しくも思わされました。
二十世紀は戦争の世紀であって軍用犬の世紀である、と文中にあります。
命を落としたのは人間だけではなかったと言う事を改めて思い知らされました。
印象としては戦争とイヌがテーマのようだけど、もう1つのテーマとして、1957年11月3日に打ち上げられたスプートニク2号に搭乗したライカという犬が始まりで、ライカに執着した1人の兵士の物語でもあるんだと思います。それは、ライカは地球に帰還出来る可能性が無いに等しい、あまりにも実験的な存在だったからで、全て人間のエゴ。エゴに犠牲となるイヌ。それが運命。それが二十世紀。
読後、ひたすら感じた事が、
著者の【怒り】と【愛】でした。
怒りは愚かな人間に対して、愛は犬に対して。
犬好きの人には物悲しさが残り、犬好きではない人には理解できないかもしれない。
言葉が乱暴なのは、犬の強さを現したかったのだと、そう解釈する事にします。
直木賞、残念でした。
ちょっと余談。
オススメの犬本!!
戦争を生きた犬のお話として『吠えろアンティス~戦場をかける犬~』。どうしてもどうしても読みたくて初めて古書を買いました。感動しましたね~、素敵なお話でした。犬って素晴らしい!!
このベルカではシベリアからお話が始まるのですが、極北を舞台とした犬のお話として『極北の犬トヨン』があります。
これは、お友達に紹介してもらって読んだ本なのですが、たまりません!!犬と人間の絆がとってもとっても素敵に書かれています。
どちらもオススメです。