ただ自分の声が聴きたくて

毎日(できるだけ)つれづれなるままに^^ 
うつと本に向かい合うiyuk改め「かぷ」ワールド。

★ 過去話リニューアル6

2009年10月04日 05時44分31秒 | ♪ すごした時間
バンドが大変になった時と、私の心が身動き取れなくなったのは同じ時期だった。

私が何故涙脆くなったのかというと、自分で「お返事いりません」と書いておきながら、本当にお返事がなくなったための情緒不安定だった。
急に後ろ向きになる。
本当にくれないのは嫌われたからじゃないかと。

段々時が経ち、秋から冬になった。
倫さんは……ゴルチェのコートを着なくなった。
足下まですっぽりの、ゴルチェのコート。暖かいはず。……だけど倫さんは足下までのダウンコートを着ていた。

それと私は、ウェイトレスにかなりけんしょう炎で無理をしていたので、もう、トレーさえ持てない人間になってしまった。そうすると出来る仕事は限られて来る。
それを職場に伝えると、自然と契約更新しないで辞めてくれ、というムードになった。
私は三年、これを生き甲斐にやってきた。この仕事が好きで、将来の夢が変わった。

ここを失ったら…………!
私はここが大好きなのに………………!!!

涙が流れて止まらなかった。
もう、持ち上がらない、腕。
ライブにも、両腕包帯ぐるぐる巻きで、拳をあげる事も出来ず、疎外感を感じていた。

こういう時こそ返事が欲しかった。倫さんと喋りたかった。
だけどどんなに出待ちしても、他のファンに取られてばかりで、ゆっくり話す事も出来ない。

倫さんに伝えたい。手紙でも書いてるけど、言葉が欲しい。
なのに何のリアクションもない。

ああ……私は本当に嫌われてるんだ……

切手を同封しないのは、もう半年間、それをやり続けてたから、今更出来る訳がなかった。
コートを着ない。
携帯電話の番号も変えてる。

相変わらず克とは連絡をとっていたけど、私はもう心の余裕がなくなっていた。
夏から克が去って半年。相変わらず倫さんと克の関係は疑われたまま。
でも真木たちは話題には出さない。私が否定しに来るから。

私はライブに行く度、本当に報われない恋をしている事がツラくて、泣いてばかりいた。
影で泣いていたが、耳聡い醍さんファンの常連に見つかった。
「かぷ、どうしたの?何かツラい?」
……暖かい言葉を掛けられたのは初めてだった。
同じ倫さんファンの悠生も、事情は知っていたが、倫さんの行動には私と同じく、不信感を持っていた。だから、慰めてはくれるけど、倫さんへの文句だったので、いつも一緒にいてくれて、同じ倫さんファンでも本当に仲良くしてくれた。

だけど私は別の言葉が聞きたかったのかもしれない。

その子に「倫さんに嫌われててツラい……倫さんと克は、本当に付き合ってないのに、それの動きの感謝の言葉もないし……職場も辞めさせられるし……希望が何もない」たまりたまっていったものを吐き出した。
「絶対内緒の話なんだけどね」で切り出したこの弱音。
でも女の子は「絶対に内緒なんだけど」を親友に話す所がある。その子もそうしたんだと思う。

そうしたら、次の日メールをチェックしたら……克からだった。


「あなたとは一切連絡を取りたくありません。
不愉快です」


この二行のメールが突然現れた。
何?何?私は克に何をしたの?
「不愉快」そう使わない言葉。
戸惑って、克に電話した。

出た。

一秒後に切られた。



……それは前に、克の部屋に遊びに行った時に
「嫌いなヤツには、電話が掛かって来ても無視するんじゃなくて、お話するつもりは毛頭ありませんって意味で、一秒出て、即切るの」
と言われた通りの行動だった。

愕然とした。克に何度謝っても克は受け入れてくれない。
そもそも何で私の行動が昨日今日で分かるんだろう……。

何と、克は私に「監視」をつけていた。全部その人から聞いたのだと。
私は、震えた。
ここまで利用に利用され、捨てられた事があったろうか……?
私の事情は全て無視。
克は自分の思い通りになる人しか周りにおかない。そう、自分で言った。
私の恋を知っていながらの「利用」。

克が私を嫌ったという事は同時に倫さんが私を嫌ったという思考に達した。
私は目の前が真っ暗になった。

何てツラい恋だろう。

何て報われない恋だろう……。

泣いて泣いて悠生に全部話した。
悠生は怒った。
そしてもう隠しておく事もない。皆に言った。皆がますます克を軽蔑した。
今まで私は、克を信じて、克しか信じなくて、倫さんとの恋人話も耳を貸さなかった。

けれど。
超極秘で倫さんが他のバンドマンとセッションライブを行った。
ファンには誰も、この予定がある事を倫さんは決して言わなかった。誰にも。
しかしファンにはファンの情報網がある。
極秘ライブを耳に入れた常連は、皆、行った。

そして、ライブ出入り禁止にされてる克が、

最前列のど真ん中にいた。

克を呼ぶがための極秘ライブ。
私は泣けて泣けてしょうがなかった。
これで分かった。倫さんと克は付き合って、同棲している事が。

------「こんな噂、嘘だから。だからかぷに頼みたい事があるの」


嘘つき。嘘つき!嘘つき!!
私の想いを知りながら付き合い、尚且つ利用した克。
それも私に「監視」までつけて。

そうして、バンドのライブがあって。
バンドが歪んだ。

ライブが終わった、いつもなら無言でステージを後にする醍さんが、マイクの前に立った。
「僕はこれでこのバンドを、脱退します」

メンバーにも言わず、スタッフにも言わず、そう発言した、カリスマ的存在の醍さん。
彼がいたから、このバンドは人気があった。
彼がいてこそのこのバンドだった。

ライブハウスは混乱に陥った。


かぷ

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