久々に読書づいてます～。今日はだんなさまが忘れなければ桃の枝を買って来てくれる予定です。チューリップの次に大好きなお話。梅林はあっても桃林はない……何故だろう。あったら物凄く行きたい、かぷでございます。
イヤー読んでますね～。それも結構心臓に悪いというか……最近ミステリでも人が死ぬタイプのものは読まなかったので、久々に読んで心臓に悪い……怖い、と思ってしまいます。
さて今回は歌野晶午著「そして名探偵は生まれた」。
歌野さんはとても好きなので、久々に手に取りました。短編集というか。3本話が入ってました。
一番最初の話が、「そして名探偵は生まれた」なんですけど、やっぱり最後にはビックリしてしまいました。そんな素振りを一切見せないのに、最後の一ページで物語がガラリと変わるんですもの……。
比較的こちらはドキドキしなかったんですけれど。
一番印象に残ってるのは二作目でした。
まるで「地下鉄サリン事件」プラス「生き残り地獄」。
地下鉄の某電車に、自分の信じてる教祖様に命じられて、誇らしく毒をまく５人。
それに対し、一切過ちは感じない。
教祖様のいった言葉が神様よりもっと高い位置にいるので、純粋に光栄だと思い、逆に誇らしく事件を起こす。
そしてその後５人は鹿児島県のとある島、屍島（かばねしま）に身を隠す実行犯で。
事件が一区切りつくまでここにいてくれ、との教祖様の言葉に疑う事なく屍島に入る５人。
しかし一人は「きちんと着いたかを報告して来る。非常食はかなりの量を用意しているから、当分これで凌いでくれ。オレも報告が終わったらまた帰って来るし迎えに来る」と言ってクルーザーで一人帰り、そして
二度と戻って来ない。
おかしい……とは思いながら過ごす４人。食糧は確かにあるが、いわゆるカロリーメイトのようなものが書かれている。
味も限られて来るし、迎えが来ない事に迷いが生まれる。
そして一ヵ月経ち、自分達はスケープゴートだったのだと思い始める。
まさに流罪ともいえるくらい、屍島には何もなく、船も通らない。唯一の救いは仲間のクルーザーのみ。それも帰って来ない。
サバイバルとなった。
ラジオも懐中電灯も段々電池がなくなってゆく。食糧も昼を抜き、朝夕にしないと生き残れない事を悟る。
そこで仲間が一人殺された。首をナイフで切り付けた、明らかに他殺。
いままで同じ宗教で、同じ人を神と崇めていたけれども、裏切られた事と、この中に殺人者がいる、という現実に仲間の心は完全に誰も信じられなくなる。
男二人、女二人。
誰だ。
そして男性一人が同じ手口でまた殺される。
残り、三人。
外部犯がいる、と結論付いた。三人とも絶対にやっていないと主張する。ということは、最初に「迎えに来る」と言ったクルーザーの男が隠れて到着し、全員死んでいるか確認しに来たのだ、死んでないので殺したのだ、という展開になる。
そこで外部犯と話し合おうと三人はそれぞれ島を歩き回り男を探す。それと一緒に食糧も妙な減り方をしているので、わざと住居を明けて三人は別々のところから住居を見張る事にした。
しかし二日経っても三日経っても誰も現れない。
そうこうしているうちに首をナイフで切り付ける形でまた男性が殺された。
残り女性二人。
食糧も底をついた。水しか飲まない日々。
何とか海岸で少ない貝を捕り火で炙り食べる。主人公はそうして生き残ろうとする。しかしもう一人の女性は食べようともしない。けれどムリヤリ食べさせていた。そんな日が10日間。とうとう、貝もカニも魚も取れなくなり火もなくなった。
そして主人公は気付く。自分は鏡も見たくない程ガリガリなのに、もう一人は違う……何故かふくよかだ。
決まった。
食糧を盗んで確保してるのも、男性を殺したのも彼女だという事に。そして追及した。持論を展開した。
あなたは、男性と性行為を行いながら男達を殺していったのだと。
そうしたらあっさり「わたくし一人ではございません」謎の回答。
「クルーザーの彼の子供を妊娠しているのです。なので彼は絶対にわたくしを見捨てない。迎えに来るのです」
愕然とする答え。サバイバルの中に妊娠。彼女だけ助かる。許せない。許せない。
彼女を殺せば……。
そんな思いが心をよぎる。そして
ああ。怖かった。サバイバルとは、人間が追い込まれた時の心情とは。実はあんな事もこんな事もあったとは。
他二篇あったが、強烈に残ったのはこの一作だった。
最後に一つだけニュースを。新聞の切れ端を。
「屍島で４人の遺体が見つかった。一人の女性は子供を生んだがその後出産の影響か亡くなっていた。奇跡的に見つかった子供は入院したが、本日無事退院し女性の両親に預けられた。奇跡の子供であり、女性の名前を一つ取って名前は春仁と名付けられた」
女性二人の名前は「永友仁美」と「大竹三春」という名であった。
「生存者、一人」
恐ろしい話だったがぐいぐいと引き付けるこの話は忘れられそうにない。
読むべし。
かぷ
傑作
「雪の山荘」、「絶海の孤島」、「西洋館」でおこる＜不可能犯罪＞