ヒストリカルロマンスアワー

Historical Romance Hour

Mr.Darcy's Diary

2007年03月29日 | Austen's Sequels

Amanda Grange. 2005, 2007. Darcy's Diary/ Mr. Darcy's Diary.
2005年に英Rober Haleから"Darcy's Diary"、2007年に米のSource Booksから"Mr.Darcy's Diary"として出版。

オースティンファンにはかなりのオススメ、です!
                 
              (英国版の表紙:私はこっちのほうが好き


オースティンの続編カテゴリーにしましたが、このGrangeの”Darcy's Diary"は、「高慢と偏見」(P&P)の続編ではなくて、「もう一つのお話」です。

P&Pのあらすじはもうここに書かなくてもいいですよね。

BBCのドラマ版を見ると、Darcyはかなりヒロイックに描かれていますが、オリジナルでは、彼のことに関する描写ってちょっと物足りないくらいだと思ったことありませんか。
あと、BBCドラマ版でも、映画「プライドと偏見」の中でもそうですが、DarcyとElizabethが出会ってプロポーズするまでの展開に多少びっくりされた方もいるかと思います。

"Darcy's Diary"ではその、P&P読者には空白に思える部分を全て知ることができます。
もちろん、Austen自身はどう思うかは分かりませんよね。でも、文句はないんじゃないかな???
Austenblogからは:
"A gift to a new generation of Darcy fans and a treat for existing fans as well"
の太鼓判!
作者GrangeはDarcy側から見たP&Pを、オリジナルを損なうことなく、みごとに作り上げています。

日記は、Mr.Darcyの妹GeorgianaがWickhamにだまされてもう少しで駆け落ちしてしまうところだったのを、Darcyが危機一髪で救う辺りから始まり、約1年半に渡って書かれています。
お話の中で次に何が起こるのかはもちろん分かっているのですが、"Darcy's Diary"はオリジナルには書かれていない気持ちや会話などが中心のお話なので、「あの時のDarcy側のストーリーはどんなのだったんだろう」とものすごく気になり、読み進まずにはいられませんでした!

プロポーズを断られた後のDarcyの気持ち、そしてElizabethの言葉を胸にどんどん変化していく様子、よく書けていたと思います。文句ナシ!
それに、Austenのユーモアや機知を損なうことなく描かれています。
                     

言い回し・表現もオリジナルにかなり近いのですが、現代の読者に分かりやすいようにGrangeの気の利いた工夫がしてあったと思います。
例えば、Lydiaがパーティーで下品にはしゃいでいる様子がDarcyの目に留まるシーンがありますが、そこでどっかり椅子に座り込んだときのLydiaのオリジナルのセリフは:
"I'm so fagged!"
だったと思います。でも、この'fag'
という言葉は現代では「疲れる」という意味はすっかりなくなってしまい、同性愛者に対する差別用語に変化してしまってるんですよね。
BBCでは"I'm so fat!"と発音が似ている語に直されていますが、私はGrangeの"Lord, how tired I am!"のバージョンのほうがオリジナルに忠実でいいなと思いました。
他にもいくつか分かりやすいように直されていましたが、一つだけ、"gay”という言葉が、当時そのままの"楽しい"という意味で使われていたように思います。
(もしかしたら、英国では今でもその意味で使ってたりして?)

前にもAustenファンを喜ばせる続編を書くのは大変でしょうね、なんてコメントしたことがありますが、このGrange作のP&Pはまさしく『ダーシーだけが知る裏話』と言ってもいいと思います。

以前にレビューしたLinda Berdollの続編(のさらに続編も出てる…)では、Darcyがマッチョで「オレについてこい」タイプになっていることから始まり、あと全て間違ってるけど、このGrangeの作品はあまりにオリジナルの世界の雰囲気そのままなので、私は原作と平行して読んでみてどこが違うのか調べたくなったほどです。

P&Pの世界を堪能されたい方にはオススメ。

                      

Grangeの"Mr.Knightley's Diary"もレビュー予定してます。読むのが楽しみ



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3 コメント

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P.S. (K)
2007-04-04 09:32:22
自分で自分の記事にコメントしてしまいますね^^;

Grangeがさらに、"Persuasion"の裏日記、"Captain Wentworth's Diary"を出したようです。
まだ出版されてませんが、もう注文できます。

私は注文するつもりです~。
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Unknown ()
2007-04-03 10:17:04
Dillさん、おはようございます
P&P読了、お疲れ様です~。
Austen関連の私の記事も読んでくださってありがとうございます。
自分で昔に書いたものを見るのはかなり恥ずかしいです…^^; 何か間違った記述があったらご指摘お願いしますネ。

このGrangeのダーシー日記、機会があったらゼヒどうぞ!
まず、現代の私たちに分かりやすい表現になっているところが嬉しいです。
Grangeの作品はこれを読む前に一冊だけ"Lord Deverill’s Secret”を読んだのですが、このダーシー日記で本領発揮していると思います。
Darcyが、自分の価値観に捕らわれているせいでLizzyとの結婚は考えられない、「Lizzyのことは忘れるんだ」と自分に言い聞かせる様子は、私たちはLizzyの気持ちをすでに知っているだけにちょっとおもしろくもあったけど、でも彼のLizzyに対する気持ちにドキドキしたりもました。


また読まれたら感想を聞かせてくださいね。
そちらへもまたお邪魔しま~す
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Unknown (Dill)
2007-04-02 13:16:44
Kさん、おはようございます
Pride and Prejudiceを読み終えたので、Kさんのブログで関連の本のレビューを読ませていただきました。この作品を愛されているKさんならではの、奥深い評価がとても面白いし、文章も巧くて、感心しました。中でも、このMr Darcy's Diaryは読んでみたくなりました。私もMr Darcyのイメージがどうも断片的で、物足りない気がしていたところです。
私は、今回は初めてJane Austenの本を読んだので、物語の世界に浸る前に、時代背景にびっくりして、そればかり気にしてしまいました。 こうやってKさんのレビューを読んで、近いうちにもう一回、今度はLizzyの心に近づいて読みたいと思いました。
また、遊びにうかがいます。
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