「十年前 あなたの大切な友達だった人は、今も あなたのそばにいますか?」
ー東洋航空402便が再び姿を現した3日後ー
1996年長崎空港へ向って飛び立った402便が忽然と消息を絶った。
その時機内で何が起きたのか、私は知らない、、、
わかっているのは402便に乗っていた人達にとって
それは僅かな時間に過ぎなかった事、、、
一方こちらは、僅かな時間どころか10年という月日が過ぎ、
死んだ筈の友達が生きていた、、、
10年前付き合っていた人が又、目の前に現れた、、、
「おはよう」歯ブラシをするヤス子(小林聡美)に挨拶する菊介(武田真治)
「んーー」
「姉ちゃん、飛行機が墜落した時、遺族係だったんだって?何で話してくんなかったの?」
歯ブラシを終えて、縁側のテーブルに瑠璃子(成海璃子)の母杏子(高橋恵子)からの手紙を見つけ
「これ、見たでしょ?」
「落ちてたから、、」
「人の物、勝手に読んだらダメでしょ!?」
「はは、あっミス角煮饅頭から電話あったよ。ヤッチって言ってた!ねぇヤッチって事は
あっちは、”アッチ”な訳だよね!、、、ミス角煮饅頭、、、イエス!!姉ちゃん
言ってたよね、生きてたら一緒にすき焼き食ってたって!?」
「・・・・」
「今日、いいよ!俺の心は準備OK!」
カッコ良くポーズを決めて、歯ブラシを口に銜え、ヤス子にウインク!
「・・・」部屋から追い出すヤス子
「呼んでよね、絶対だよ!紹介してくれるって約束したんだからね!!」
扉を閉めて、溜息、例のホームページの画面を見て又溜息
ーもう一度同じ現象により402便の乗員乗客は再び消えてしまいます
起きてしまってからでは遅いんです。時間がないんです、彼等は消えてしまうんですよー
ー言うなよ、亜紀には、、、自分が消えてしまうかも知れないって事、、
言わない方がいい、、なぁ、、ー
ーそれこそヤッチ!それでこそヤッチだよ!ー
パソコンの画面を閉じ、泣きそうになるヤス子、時計の秒針が無情にも一秒、一秒
過ぎて行く
途方に暮れるヤス子
忘年会!?の余興で”きんさん、ぎんさん”を演じる二人。大うけの会場、笑うヤス子と亜紀
哲也(山本太郎)のホテルに電話する
「はい、おーおはよう、こっちから電話しようと思ってたんだ、どうした?」
「昨日の事なんだけど、、」
「あー豚まん!!旨かったーサンキューな!」
「402便の乗員乗客が再び姿を消すって話、、、」
「あー俺もあれから考えみたんだけど、、俺さぁ、、あーいいやそっちから話せよ」
「亜紀には正直に話した方がいいと思う」
「えっ!?」
「8日後に消えるかも知れないって事、亜紀には言った方が、、」
「おい、ちょっと待てよ」
「私から話すよ」
「待てって、お前なぁ俺が言うなって言ってんだから言うなよ、お前は良くわかって
ないんだから、お前は消える方じゃないだろ?お前には亜紀の気持ちがわかんないんだから」
「あーのーお前、お前って何か凄く偉そうなんですけど、、」
「えっ!?いやーお前はお前だろ!?」
「話って何?何か話がある様な事、先程仰ってたようですが、、」
「あーあー俺今日からそっち泊るわ!」
「はい!?」
「いや-、前俺が住んでたとこは今新しい人が住んでるから、で、会社はずっとこのまま
ホテルに泊ってていいって言うんだけど、、」
「い、、いや、居ていいわよ、ずっと居なさいよ、、い、い、居れば良くってよ、
何で家なんかに、、、」
「俺も消えるんだぞ、、、、8日後に、、、」
「・・・・」
「お前に会えなくなる、、、、はぁーとにかく、亜紀には言うなよ!俺は例の駆け落ちカップル
探すから、お前は黒木亮君のお母さんの件、ちゃんと会社に報告しろ!わかったな、じゃ」
電話を切る哲也
「・・・・」一方的にしゃべって切られ電話を見つめるヤス子
坂倉(升毅)に電話し亮の母親と連絡が取れ、ロスから明日帰国する至を伝える
ヤス子
「担当でもないのにすいません」
すると、甲斐(尾美としのり)が世話係をヤス子に頼みたいと、来ていると言う。
家族会の意向は無視出来ないので頼むと。
「あの、では正式にご家族のケアに回ってもいいという事ですか?」
「あーー」
喜ぶヤス子
出て来た甲斐にヤス子からの電話で、世話係の事を伝えたと坂倉
人事にまで口は出したくなかったという甲斐が
「10年前私達家族に対してとても真摯に対応してくれたのは黛さんですから」
「他は、まるで何もかも不誠実だったかの様ですねぇ、、奇跡の生還を、こう見えても
私も心から感動し、喜んでるんですよ、あなたの弟さんもご無事で本当に良かった」
手を差し出す大屋(岸部一徳)握手はせずお辞儀をする甲斐
「ありがとうございます」
少しムッとして「じゃぁ失礼します」
「朝からすみませんでした何れ皆さん消えてしまいますが、どうかその最後の日まで
ケアの程宜しくお願いします」
「あの、その消えるという話、本当なんですかね?」
「信じてないんですか?」
「あ、いやでもまだ調査中という事で、皆さんにお伝えする事は控える様に言われています」
大屋が去って行った方を見る甲斐
ホテルでパソコンを見る航星(中村友也)例のホームページを見ていると、瑠璃子が来て慌てて閉じる
ホテルの廊下で亜紀に8日後に消える話をする航星
「加藤教授の理論によるとそうなんです」
「消えるって私達が?」
「402便の乗員乗客、、、会社から何も聞いていませんか?」
「・・・」
「今日、家の兄貴と教授が会う事になっているので、聞いてみます。」
支援対策室で、坂倉から注意事項を聞かされるヤス子。
会社に落ち度はなかった、消える事は言ってはいけない。それぞれ家族の状況を確認しあう
そこに亜紀が来る、自分も世話係を手伝うという亜紀に帰れと言う、坂倉とヤス子
駆け落ちカップルが見つかったと哲也から連絡が入る。
「ねぇマジで何の問題もないと?」霧島藍(矢沢心)
「もう10年も経ってるんだぞ、二人の交際に反対する人は居ないよ」
「うちらの交際!?」
「駆け落ちしたんだろ?」
顔を見合わせ驚く二人
「あのさぁー俺達、、」日向啓太(丸山智己)
止める藍
「そう!、、、うちら駆け落ちしたっちゃ!、、ねぇ!!」
「えーー!?おっおーー!!」
迎えが来るからとカバンを持とうとすると、啓太が慌ててカバンを取る(何か入ってる!?)
何か考える藍
「さぁもう、帰んなもうあんたが居なくても問題ないから、むしろ邪魔、邪魔ほら、ほら」
「あっじゃぁさぁ一人暮らしのヤッチの為に夜ご飯準備して待っててあげるよ」
「一人暮らしじゃないし、弟と暮らしてるし、、」
「そうなのーー?」
「私の事はいいから、自分の事考えなさいよ、これからの時間は自分の為に使いな」
「何それ!?」
「いいから、行って、帰った帰ったじゃぁね!あっ電話だ」
「はい、支援対策室です」
「後藤です、、」
ー長崎ー
ー東京に行きます、許して下さい 柚子ー
台所にパジャマで正座の藤吉(片桐仁)と桃子(佐々木麻緒)
「うん、これはねぇ、、、ちょっとそこまで買い物に行って来まーす
直ぐ戻りまーす って書いてあるんだよ、、うん」
「東京に行きます、許して下さい 柚子」
「字、読めんの?」
「お父ちゃん、お母ちゃんはきっと中武昇子という人の所へ行ったんだよ」
「知ってるの?」
「お母ちゃんは中武昇子という人と”えんたつあちゃこ”を目指してたんだよ」
「”えんたつあちゃこ”を知ってんの?」
「しゃべくり漫才で浅草の劇場を笑いで一杯にすんのがお母ちゃん達の夢だったんだよ」
「えっ!?」
「お母ちゃん達の持ちネタは、、」
「持ちネタも知ってるの?」
「だっちゅーーの!!」ポーズを作る桃子
正座に戻り
「お母ちゃんはもう、、、帰って来ないかも知れない、、」
「お父ちゃん!」
「桃子、、、」
「お父ちゃん!」抱き合って泣く二人
ー品川駅ー
「先輩!」柚子(市川実和子)
「柚ー!」昇子(明星真由美)
「先輩ー!柚ー!」
駆け寄り抱き合う二人
「だっちゅーの!、だっちゅーの!、だっちゅーの!あははは」
加藤教授の資料の束を航星に渡す甲斐。
当時は教授の説をバカにする者ばかりだった、自分も始めから受け入れた訳ではない事
航星が理論物理学を学んでいた事がきっかけだった事、科学少年だった航星ならきっと
興味を持つ、そう思って小難しい論文を読みふけったと話す甲斐
「お陰でそこ等の学者より詳しいかも知れないなぁ、航星お前も、、」
頷きながら「調べてみるよ!」
いつもの様に川を渡り、歩きながら、、
僕の友達はコンビニ、
お姉ちゃんの友達は”アッチ””ミス角煮饅頭””スッチー”
ニヤける菊介
「あのーもしかして黛さんの、、、ヤッチの弟?」
ピンと来て帽子を取り髪を直しながら
「はい!」と振り向く
「あはっ!」亜紀の可愛さに、振り向いてやった!のポーズ菊介
「やっぱ、そうだ、、大きくなったね、菊坊!!」
「菊坊!?」
ヤス子が待つホテルロビーに姿を見せる杏子
「ご無沙汰しています」
「娘は瑠璃子の気は変わったかしら?」
「いえ、、」
「まだ、ごねてるの?」
「御案内します」
ドアを開けるヤス子
母を見て立ち上がる瑠璃子
「お母さん!」
「瑠璃子、、、」杏子の目に涙が浮かぶ
あの日、ピアノのセミナーで壱岐島に行っていた瑠璃子と杏子。
打ち合わせの為一足先に帰った杏子、一緒に帰らなかった事を後悔していたと瑠璃子に伝えるヤス子
「私死んだんですよね?」
「生きています」
「でも、死んだ事になったんですよね、、」
「一度はそうですけど、、」
「じゃぁもう一度そういう事にしといて下さい」
「えっ!?」
その方がいい、あの時母が帰って、一人になってホッとした事、そして、本当は私が生きていて
困ってる、私にはわかるの。お母さんはそういう人だから、、、と告白
黙って聞いていた杏子が、涙を堪えながら、、、
「そうねぇーそうよ、どうしたらいいかわからないわ、
わからない、、、、あなたの言う通り困ってるわ。」
台所で食事の準備をする菊介と亜紀。
次はこれを切れ!これが切れていない!洗ったか!?とうるさい亜紀
「変わってないね菊坊は、、」
「そちらは随分変わりましたね、、、」
「はぁ!?」
「まさか、あの、僕の事、菊坊!菊坊!って言ったジャイアンみたいな人が”ミス角煮饅頭”
だなんて、、、」
「あは、ミス角煮饅頭ね、、、あれ、応募者二人だったから、、」
「えっ!?」
「あたしとヤッチ!接戦の末あたしが選ばれたの!」
包丁を置き、うな垂れ、しゃがみ込んで頭を抱える菊介
「ふーんもうそんなジャイアンなんて失礼ね、ちゃんと可愛がってあげたじゃない?」
と抱きついて頭を撫でる亜紀
「いじめてる子はいじめてる事気付かないのがいじめなのよーー」
「何モゴモゴしゃべってんの?ほら手ー休めんな!ほら!」
と、立ち上がり、菊介の髪を引っ張り上げる亜紀
「いてえー」
杏子が帰り、瑠璃子が
「あんな母親ですみません、あんなの母親じゃない。人として最低です」
しかし、ヤス子は家族達は、受け入れるのに必死だったのだと杏子を擁護した
忽然と消え、何一つ出て来なくて、全員死亡って言われて、、、遺族はようやく、
10年の歳月を経て、受け止められるかなぁと思った矢先に帰って来た、
どうしていいかわからないという気持ちはあると思う、だから最低とは言い切れない
とヤス子
「理解出来ません、私にはそういう気持ちわかりません」涙をこぼす瑠璃子
帰り道、子供達が飛ばすシャボン玉がヤス子の目の前に飛んで来た、目で追うヤス子
すると、パンとはじけて消えた、考えてしまうヤス子、、、再び歩き出す。
帰宅して、ドアを開けると
「お帰り!」玄関に正座して哲也が待っていた!
「な、何やってんの!?」
「今日から泊るって言ったろ?」
「えっ!?」
「おーい、帰ったぞー!」
「ちょ、ちょっと、、」
「あーーお帰り!」亜紀
「あー何!?」
「ちょっと菊坊、ビール!」亜紀
「ちょっちょっと!」
「姉ちゃん!?」睨む菊介
「どういう事!?」
グツグツ煮えるすき焼き
「せーーの、いっただきまーす!」嬉しそうな哲也と亜紀
しらーーっとするヤス子と菊介
「食べたら出てってね!」
「えっ!僕!?」菊介
「そちらの方、どうしても泊るっていうなら、弟の部屋にして!」
「えっ!?」
「あっそうだね私も今日はヤッチのとこ泊まるから」
「あんたも泊る気ー!?」
「うん!」
「よし、今日は男子と女子別れよう!」哲也
「イエーイ!」
「あっいや俺の部屋はちょ、、狭すぎ、、」
「あーはぁー!?」
「はっきり、しゃべれ!弟!」
「弟って言えばさぁあの甲斐航星君っているじゃない、あの子会長さんの弟さんなんだって?
ほら、菊坊もあれ位しっかりしないとダメだよ!」
とビアカップを菊介に差し出す亜紀
「すいません」とビールを注ぐ菊介
「あーでもあの子妙な事言ってたなぁー何か乗員乗客みんな消えるって、、」
手が止まる哲也とヤス子
「会社から何か言われてませんか?って、、」
「言われてないよなー?」哲也
「消えるんですか?」菊介
「消える訳ないだろうー」
「あっそう、加藤教授の理論によればそうなるとか言ってった。」
「・・・・」
「ねぇ加藤教授って誰!?」
「おい、食えよ!どんどん」話を逸らそうとする哲也
「はい、いただきまーす!」菊介
「いや、君じゃなくて、、」
「だから、、ねぇ!!」
「402便は墜落してない、乗員乗客は時空を越えて生きてるっていう説を発表した人よ」
「おい!?」
「実際加藤教授の言う通りだった、、」
「よせよ!」
「話してよ!私に隠し事しないで!」
「教授の話によると、もう一度同じ様な現象が起きて、」
「やめろって!」
「みんな、8日後に消えるって、、」
「お前なぁー」
「そういう事だから、」
「そういう事だからじゃないんだ、、、はぁ、、、」
「食べよ、食べよ」
「あっ姉ちゃんそれトマト、」
「あーあー」鍋にトマトを入れ慌てるヤス子
「まだ、はっきり決まった訳じゃないから、、」哲也
「聞いてくる!」立ち上がる亜紀
「えっ!?」
「あの、家族会の会長さんとあの教授会うって言ってたから、私ちょっと聞いてくる」
「おいおいおい、どうすんだよ!?」
「大丈夫だよ」
[大丈夫じゃない、お前知らないからそんな事簡単に言えんだよ、亜紀はなぁ、あの日
無事に着いた日の夜、助かって良かったってスゲー泣いたんだぞ!あの時機内で
どういう思いだったかお前わかるか?怖くて怖くて死ぬかと思ったってみんなそうだよ
誰だってあんな思いしたら、、、いきなり10年後だって言われて納得出来るかっつったら
出来ないけどあん時の事考えたら、10年後だろうが、20年後だろうが生きてて良かったって
そう思って、必死に気持ち切り替えて、明るく振舞ってたんだよ、、以前のままで変わらず、
それをお前、、、わかんないよなぁ、お前には、、わかる訳ないよな、、、」
探しに行こうとする哲也
「私が行くよ!私が行く、、」
車で甲斐を待つ加藤、甲斐が見えた
「甲斐さん!」
「長崎から車でいらしたんですか?」
「本当は時空を越えて来たかったよ、、フィルムは?」
「今此処に来る途中教授にお会いしたいという方から電話が来ましたお時間頂けますか?」
「断る!」
「約束してしまったんです」
「高速を飛ばして来たんだ疲れてるんだよ私は」
「東洋航空の支援対策室で待ち合わせしてるんです」
「東洋航空!?」
「402便の客室乗務員だった竹村亜紀さんと黛さんです」
「黛ってあのバカ女か?」
「教授の理論について詳しく知りたいと言ってました。」
「この宇宙から全ての物質が消滅したら時間と空間のみが残ると嘗ては信じられていた
しかし、相対性理論によれば物質と共に時間も消滅する、わかりますか?」
「わ、かりません、、」
「あーこっちが時空Aこっちが時空B本来なら隔絶している筈の時空Aの一部が時空Bに
はみ出した、しかし、時空の復元力により元に戻る、こう言えばわかるかな?」
「ううーんもうわかりません!」
「もう、おしまい!」
「教授!?」甲斐
「バカ女2号!」
「物凄ーく乱暴に説明すると、ゴム風船みたいなものなんじゃないかなぁー」
「えっ!?」
「壁にあいた穴から風船を膨らましてパッと離すと元に戻るでしょ?時空からはみ出した
物が戻るっていうのはそういう感じをイメージするとわかるんじゃないかなぁー
消えるっていうのは、元の時間軸、元のあるべき場所に戻るっていう事なんだと思う」
「おーー少しは勉強した様だな、バカ女。」
「でもまだわからない事が、、」
「当然だよ、そう簡単にわかって堪るか!」
「10年前の物は全て消えるって仰いましたよね?」
「そうだ!」
「服は、例えば彼女が着ていた乗務員の制服、、」
「あんなのは縁起が悪いから焼却炉で焼き捨てます!」亜紀
「焼いたとしても元の時間軸に戻る過程で分子レベルで再合成され、問題ない」
「じゃぁ今着ている服は?」
「元に戻る際、その場に残る」
「中身だけが消えるんです」甲斐
「裸になるんですか?」
「えっ!困ります!」
「いやー現れた時の服装になって消えるという事で、、」
「え、いつ着替えるんですか?」
「えーだから、瞬間的に移動するんです」
「瞬間的に裸に?」
「えーーもう、どうすればいいの?」
「細かい事は気にするな!」
「どうして?」
「答えられないからじゃないかしら、、、」
「ふっ、、」
「違うぞ!彼女にとって不毛な会話だからだ」
「記憶も消えてしまうらしいんです、つまりこの世界で起きた事は彼女の記憶には
一切残らないと」
「奇跡の出来事は我々の中にだけ残るだろう、、」
「えっちょちょっと待って、それってつまり私もう、その、、、」
「あーー何もかも消えると言っただろう?」
「そ、それは私は死ぬって事?」
「私の理論上ではそういう事だ」
「じゃぁ何の為に助かったの?あの時あんな怖い思いして、何のために10年後の世界に
来たのよ意味ないじゃない!結局死んじゃうなら、今此処にこうしている事だって
無意味じゃない?、、、」力なく出て行く亜紀
「何処行くの?」
「何処だっていいでしょ!」
「教授の説が外れる可能性もありますよね?」
「いや、ゼロに等しい」
「でも、絶対じゃありませんよね?」喰い付くヤス子に
「アインシュタインの言葉にこういう言葉がある、君に捧げよう”神はサイコロを振らない”」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「我々人間は神のそれを受け入れるしかないんだよ」
「・・・」
「・・・」
「・・・」
「可哀想に、彼女を慰めてやるといい、もうどうしようもない事なんだから」
「どうしようもないからって、怯む人じゃありませんから、彼女はそんなヤワな女じゃありませんから」
廊下で聞いていて、歩き出す亜紀
出て行った亜紀を探し、哲也に家に帰ってないか確認するヤス子
「亜紀の事は私に任せて、それよりそっちは大丈夫?」
「えっ!?」
「あの時死ぬかと思ったって、、怖かったんでしょ?」
「ばか、、それは亜紀で、、俺は別に、、」
「無事で良かったね!お帰りなさい、、ちゃんと言ってなかったから、、お帰りなさい」
泣きそうになるが、菊介が居たので
「俺の事はいいから、亜紀の事ちゃんと探せ」
「心配しないで、亜紀とは長い付き合いなんだから、、」
亜紀を探しに出て行く哲也
東京タワーに着くヤス子
あれはいつだったろう、なめ猫が大ブームで文化祭で二人で突っ張ったっけ「なめんなよ!」
もう随分昔の話だ、80年代90年代にかけてずっと私達は一緒だった、流行り物には
直ぐ飛び付くあの子が居たから私はナタデココもパンナコッタもヨーグルトきのこも食べたっけ、、モツ鍋が流行った時は寒い中二人で並んだなぁー
飲み会の余興もピンクレディーは勿論きんさんぎんさんもやったっけ
あの子がいたから、そっ402便が消息を絶った1996年のあの日まで
私の傍にはいつもあの子がいたあの子がいたから私の人生は、、、
亜紀を見つけ、缶コーヒーを置くヤス子、メイドの恰好で外を眺める亜紀
「いたんだー」
「いたよー」
「着替えたんだ?」
「着替えたよー」
「衝動買い?」
「良く此処がわかったね?」
「ヤナ事あった時は衝動買いして、最後は必ず此処に来た、、、その服さぁーー」
「流行ってんだよ、知らないのー相変わらず疎いんだね」
「ま、流行ってなくはないけど、、」
「あーー参った、あー教授の話は参ったよー」
「亜紀には言うなって言われてたんだけどね」
「哲!?」
「自分だけ知らないの我慢出来ないタイプでしょ?」
「黙ってられたら、あったま来る」
「だから話したんだけど、もう1個いい?」
「もうまだあんのーー?」
「その服流行ってると言っても極一部。」
「えーー嘘!間違ってた?私もこんなの流行ってんのかなぁって」
「昔、余興できんさんぎんさんやったでしょ?今やるとしたらこれかなー」
「えーー!」
「萌え~~とか言ってね」
「萌え~?」
歩きながら
「私が居なかった間色んなものが流行ったでしょ?Drコパ、パラパラ、寒天ダイエット
ヨンさまとか」
「あーそんなのつき合わされなくてホッとしてる」
「退屈だったでしょ?」
「穏やかだったよ」
「つまんなかったでしょー?」
「静に過ごせて良かったよー」
自分は悔しい、ヤス子の10年に自分が居なかった事が悔しい、28~38の時間も一緒に過ごしたかった、残された時間はヤス子の為に使う、いなくなった後味気ない
人生を送るであろうヤス子にサイコーに素敵な時間、人生で最も忘れられない
かけがえのない時間にしてあげるどうしようもないから怯むようなヤワな女じゃないと、、
亜紀を見つけられず帰宅した哲也にメールを見せ、無事だった事を知らせる菊介。
部屋に入った、哲也は見付けてしまいます。
HPの作者が、謎の手紙の主が菊介である事を、、、。
公式HP
菊介だったんですね、、何の為?っていうか何で知った?残された時間は7日
駆け落ちカップルもカバンに何か入ってる!?駆け落ちじゃないみたいだし。
文字数ギリの為おしまい。