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警察庁長官と警視総監、本当に偉いのはどっち?」日本人もよく知らない"警察2トップ"の違い

2024年09月28日 23時05分37秒 | 社会のことなど

警察庁

わたしの見たところ、警察組織全体の階級序列は長官、次長、官房長、そして、警視総監となるのではないか。

 ■長官の月収は117万5000円、総監は110万7000円  給料も長官は指定職(※)では最高の8号俸で、総監は7号俸。 


警視庁

※写真はイメージです - 写真=iStock.com/y-studio

日本の警察は、警察庁と都道府県警察という2つの組織に分かれている。例えば警察庁のトップは警察庁長官だが、都道府県警察のトップは警視総監となる。そのほかには一体どんな違いがあるのか。ノンフィクション作家の野地秩嘉さんが解説する――。 

【図表】警察庁組織図  

※本稿は、野地秩嘉『警察庁長官 知られざる警察トップの仕事と素顔』(朝日新書)の一部を再編集したものです。

■「警察庁」と「都道府県警察」  

日本の警察はふたつの組織に分かれている。  

ひとつは中央官庁である警察庁だ。職員は国家公務員で、霞が関にある合同庁舎内で働いている(図表1)。  

警察の総職員数、約30万人のうちの8000人前後が警察庁の職員で、東京大学卒、京都大学卒を主とするキャリア官僚の組織である。仕事は各県警を束ねる行政管理、政策を作るための企画立案、広域捜査の指導、連絡、調整など。企画立案というのは法律を作ることなのだけれど、憲法では立法は国会議員がやることになっている。そこで、企画立案という表現にしたのだろう。しかし、警察関連の法律は実際のところは警察庁の人間が作っていることは間違いない。  

もうひとつの警察は都道府県警察だ。各都道府県には警察本部があり、地方公務員の職員が働いている。数は28万8000人。そのうち、警視庁(東京都警察本部のこと)に所属するのが4万6000人(図表2)。

 ■「ノンキャリア」と呼ばれる警察の道 

 都道府県警察の職員は高校や大学を出て、各都道府県で採用され、警察学校を出た人たちだ。なかには東京大学、京都大学を出た人もいるけれど、ノンキャリアと呼ばれる。 

 都道府県警察に勤める警察官のうち、一部の人は警察庁に異動することもある。ただし、地方公務員として採用されているので、最終的には採用された都道府県に戻る。都庁や県庁に採用された職員が国の官庁に出向するケースと同じである。

  また、県警本部で長年勤め、警視正となった場合、本人が望めば地方に勤務しながら国家公務員になることができる。この場合、県によっては給料が下がってしまうこともあるのだが、たいていの人は給料より国家公務員になる方を選ぶという。


■巡査部長、警部、警視正…階級は数多い 

 前項で警視正という階級呼称を使ったので、ここで階級とそれに対応する役職について整理しておく。 

 階級は巡査から始まり、巡査部長、警部補、警部、警視、警視正、警視長、警視監、警視総監となっている。 

 ノンキャリアの場合、巡査で入る。巡査から警部までの昇任はすべて筆記試験の成績や勤務成績等の総合評価で決まり、年功序列ではない。ノンキャリアの警察官は仕事と試験に追われる生活だ。

  ただ、警部から上の警視、警視正、警視長に昇任する場合には筆記試験はないが、一方でポストに空きがなければ昇任しない。  

そして、ノンキャリアの昇任は警視長までだ。警視監、警視総監にはならないというか、なれない。たとえ警視長まで昇任したとしても、その時にはすでに定年年齢の60歳に限りなく近くなっている。そこで定年を迎えることになるから警視監、警視総監にはなることはできない。もっとも警視総監は東京都にある警視庁のトップ、たったひとりだけの階級だ。

 ■高学歴卒でも官僚の道を選ばない人間もいる 

 目安で言えば都道府県警察の警視正とは大規模署の署長もしくは本部の部長にあたる。県警本部の部長とは本部長のすぐ下の職位だから、県の治安を預かる大きな権限を持つ。ノンキャリアで入って都道府県本部の部長まで行けば大したものと言えよう(図表3)。 

 なお、東京大学、京都大学を出ても地方採用として警察組織に入る人間がいるのは自分が生まれた町の治安をよくしたい、加えて、現場で犯人を追いかけたいというふたつの気持ちが主ではないかと思われる。 

 警察庁で法律を作ったり、管理職になるよりも「オレは一生、現場の刑事として事件を解決したい」という人の気持ちはよくわかる。刑事は休みも少ないし、大変な仕事だけれど、人のために尽くす仕事だ。やりがいという意味では命を救う医師、消防士に匹敵する。

■県警本部長を経て部長、局長…と上がっていく 

 さて、階級の話に戻る。 

 警察庁に入ったキャリアのスタートは警部補だ。以後の昇任にも試験はない。警察庁内と全国各地の警察本部を異動しながら経験を積んで地位は上がっていく。 

 警察庁に入った後、地方に出て交番や捜査の現場を経験する。その後、警察庁に戻り、係長として行政業務を担当する課長になる。

  30代中ごろになってから現場の警察署長、もしくは県警本部の部長になる。 

 50歳前後で警視長になるので警察庁の課長や小規模県の県警本部長をやり、その後警視監として大きな県の県警本部長になる。  

その後、警察庁に戻ってきたら、警察庁本庁の部長、審議官、局長を務める。  本庁の局長職は5つ。別に長官官房がある。5つとは生活安全、刑事、交通、警備、情報通信の各局だ(図表3)。 

 各県警本部には地域部(交番のおまわりさんや白バイ警官が所属する)、公安部(国家体制を揺るがすような事案に対応する警備警察で、東京都のみにある)があるけれど、警察庁にはそれに該当する局はない。地域部は現場の仕事だから、中央官庁の警察庁には必要ないのだろうし、公安は警備局のなかに含まれている。 

 また、警察庁は2022年から、サイバー攻撃やサイバー犯罪に対処する体制を強化するため、「サイバー局」を新設することにした。警察庁が直轄する「サイバー直轄隊」も設置する。これにより、現場の捜査権限は都道府県が持つ従来の警察のあり方が変わることになる。

 ■警察庁長官と警視総監、本当に偉いのはどっち? 

  テレビのクイズバラエティでは「警察庁長官と警視総監はどちらが偉いのか」といった問いが出る。ためらうことなく、「警視総監」と答える人がいるくらいだから、世の中の大半はどちらが偉いのかよりも、まずは警察庁と警視庁の違いがわからないのではないか。 

 国税庁、資源エネルギー庁、海上保安庁、公安調査庁など、「庁」が付くのは国の組織だ。警察庁もしかりである。そして、「庁」は、府や省の「外局」として置かれているものを言う。 

 ところが、警視「庁」だけは国の組織ではない。東京都に属するのに、庁が付くところが、ややこしい。警視庁は東京都にある都道府県警察のこと。神奈川県警や北海道警と同格だけれど、呼び名が警視庁となっているだけだ。  

どうして? 

と問われたら、明治以来の由緒正しい呼称だから変えられない、と答えるしかない。長官は国税庁にも海上保安庁にもいるけれど、総監と名の付く人物は日本では、たったひとりだ。  「総監の方がいかめしそうだし、偉いんじゃないか」と誤認する人がいても仕方のないことだろう。

■階級序列は「長官、次長、官房長、警視総監」  

だが、事実は警察庁長官がもちろん警察組織全体のトップだ。  

警視総監は東京都の警察組織、警視庁のトップである。警視総監は警察組織全体では序列は2番目と書いてある資料もあるけれど、実際は違うと思う。  

というのは警察庁のナンバー2は警察庁次長だ。ナンバー3は官房長。そして、官房長、次長を務めた人は長官に昇任するのが通例だ。また、次長と警視総監の入庁年次や年齢を見ると、次長の方が警視総監よりも年次が古い。つまり、先輩なのである。 

 ただし、ここにもまた例外がある。95代の三浦正充警視総監(2018~20年)は「24年ぶりに警察庁次長から就任」だった。そして、彼以外の歴代総監の前職を見ると、警備局長、官房長、刑事局長だった人もいる。つまり、警視総監は局長を務めてから就任するポストだ。 

 一方、警察庁長官は前述のように別格の局長とも言える官房長になり、そして次長を経てから就く。年齢にすると、2歳くらい、警察庁長官の方が年上になる。  

わたしの見たところ、警察組織全体の階級序列は長官、次長、官房長、そして、警視総監となるのではないか。

 ■長官の月収は117万5000円、総監は110万7000円  給料も長官は指定職(※)では最高の8号俸で、総監は7号俸。 


 長官は各省の事務次官と同じ額で、事務次官等連絡会議にも出席する。つまり、各省の事務次官と同格だ。

一方、警視総監の給料は内閣府審議官、公正取引委員会事務総長、財務官、外務審議官など、各省の審議官、国税庁長官、海上保安庁長官と同じ俸給である。 

 指定職の年俸とはあくまで本俸で、これに地域手当がつくから本俸の1.2倍くらいにはなる。ただし、フェアな意見としては公務員幹部の給料は民間会社の社長に比べると、安い。 


 総理大臣でさえ年間4049万円だ。総理大臣の責任の重さ、年中無休の24時間営業を考慮すると、総理大臣の俸給は外資系企業エグゼクティブ、外資系金融マンの給料と比べると、不当とも言えるくらい安い。

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