【70才のタッチ・アンド・ブースト】ーイソじいの”山””遍路””闘病””ファミリー”ー

【新連載】 『四国曼荼羅花遍路-通し打ち45日の マイウェイ』

イソじいの、いち押しブック-2019年上半期版➀

2019-08-12 15:28:07 | イチ押しBOOK
 私の読書のペースは、2週間で約3冊。年間52週(365日÷7日/週=52.1週)だから年間約80冊となります。但し現役労働者をリタイア、その結果往復3時間以上かかる通勤時間に本を読んでいたのができなくなり、その分読了ペースが落ちました。なお、私は溜る一方で、過剰在庫になる本を処分するのが忍び難いということで、本は買わない主義で市民図書館や大学図書館で借りて読んでいます。
 というわけで、今回は1月~6月にかけて読んだ本の紹介です。「創価学会の変貌」「戦争の真実」「日本の戦争」「日本の戦争Ⅱ 暴走の本質」「国体論」「21世紀の〈マルクス〉」「骨が語る兵士の最期」「銃後の民衆経験」「この世にたやすいしごとはない」「戦争の時代と夏目漱石」「カジノミクス」「麦酒とテポドン 経済から読み解く北朝鮮」「神社本庁」「凛としたアジア」「自衛官の氏名と苦悩」「激変の北東アジア 日本の新国家戦略」「下町ロケット ヤタガラス」「凛とした小国」「労働弁護士50年 高木輝雄のしごと」「加藤周一 戦争と青春「青春論ノート」を読む」「9条を活かす日本~15%が社会を変える」「トランプ報道のフェイクとファクト」「考証 東京裁判 戦争と戦後を読み解く」「言葉の国イランと私 世界一おしゃべり上手な人たち」他雑誌の論文等も含め、書名省略で約10冊強です。

イソじいの、イチ押しBOOK~2019年上半期②

2019-08-11 15:34:50 | イチ押しBOOK
 先に紹介した本は、いずれも印象に残った良書ですが、特に私にとって血肉となった本を紹介します。
「創価学会の変貌」著者:柿田睦夫(敬称略、以下同じ)-公明党は創価学会の完全な支配下にあり、“現生利益”の教義に則り安倍・自民党への積極的フォローワーになったこと、政経分離という憲法上の問題・矛盾に対し事実と資料を丁寧に使い、学会の変貌を解明。戦争は良くないと言い続けた池田大作名誉会長の人望を徹底的に利用することから最近の“池田外し”変貌した創価学会の真実についても表現は穏やかだが鋭く切り込んでいる。
 「戦争の真実」赤旗編集局。赤旗日刊紙、日曜版の30才代記者を中心に、真摯に取材を重ね、資料を集め会席し一生懸命アジア太平洋戦争の真実を伝えようとする態度に感銘。
 「日本の戦争 歴史認識と戦争責任」「日本の戦争Ⅱ 暴走の本質」いづれも山田朗。著者はアジア太平洋戦争の研究者としては第1人者だが、戦後生まれ。軍部と官僚が敗戦後徹底的に証拠隠滅のため戦争関係の書類を焼却した中で、現存する書類や兵士が書き留めた手紙などを丁寧に収集して、戦争を解明。歴史修正主義者たちが「自虐史観」と罵り、南京大虐殺や慰安婦や民間人の虐殺等に対して「証拠がない」とか「後世の歴史家が明らかにする」とかまるで歴史の捏造を前提にするヘイトスピーチの“ノリ”で歴史を『語る』愚かさとあまりにもかけ離れた真摯さに感銘。
 「国体論」白井聡。「永続敗戦論」に続き、著者独特の鋭い感性に感銘。1977年生まれの若手の行動する研究者。新しい近現代政治理論を従来にない視点からアプローチされていて、私は白井さんを注目して、期待している。
 「21世紀の〈マルクス〉‐生誕200年(特集1) -新自由主義下の大学の使命(特集2)」唯物論研究協会編。 特に特集1は、青年マルクスがヘーゲルの疎外論からフォイエルバッハの疎外論へと傾倒し、やがて(人間・労働の)疎外を科学的に解明し最終的に資本論へと繋がっていった生き方がマルクス研究を通じて読み解かれている。今日AIやロボットが人類に何をもたらすか、それとも単に生産手段としてのみ資本家に活用され、多くの人類がより一層労働から疎外されてしまうのかを真剣に考えることが迫られている時、「ドイツイデオロギー」等は必読の書となるだろうと思う。それらを示唆する特集1であった。特集2も必読。




イソじいの、イチ押しBOOK~2019年上半期③

2019-08-10 15:46:06 | イチ押しBOOK
 「骨が語る兵士の最期」楢崎修一郎。アジア太平洋戦争での戦没者遺骨収集の真摯な人類学者による記録。科学的な遺骨鑑定を通じて戦争の不合理さを客観的・科学的に告発。特にサイパン島、テニアン島での遺骨鑑定と収集では女性や子供、老人の遺骨が多く発見され、子をかばう女性の遺骨などに筆者の悲しみが何の脚色もなく書かれ、その切ない悲しみ、嗚咽を込めながら、冷静に科学的に記述され、読んでいて切々と伝わってくる。ちなみに、私の母方の叔父もサイパン島で玉砕した(と伝えられている)。それだけによけいに戦争を仕掛け、民間人も含め300万人以上の国民を死に追いやった者(戦争で儲けを諮った者やその代弁者の軍部・政治家、一部の右翼国粋主義者等々)達を決して許してはいけない憤りを覚えさせる、心に残った本であった。
 「銃後の民衆経験-地域における翼賛運動」大串潤児。読むのに大変時間がかかった。約1ヶ月。敗戦の時、軍部や官僚は戦争責任から逃れるために公文書はもちろんすべての文書を徹底的に焼却し、証拠隠滅を図った。そういった歴史検証上の困難を持ちつつ、本書は膨大な当時の雑誌や各地方に残されている公文書や機関紙誌等を丁寧に収集、銃後の民衆の姿を客観的に事実に基づいて詳細に報告している。その一つ一つが銃後の民衆の姿をリアルに浮き上がらせ、丁寧に読ませていただいた。在郷軍人会、国防婦人会、産業報国会、御真影を奉り教育勅語を叫び天皇のために死ぬことが最高の名誉であると叫び若者や子供たちを死地に追いやった教師たち、多く国民の孫・息子・父・兄・弟のみならず病弱者までも兵士に送り出すための行政を推し進めた地方行政官、等々は戦後何所に行ってしまったのか。前述の「骨…」と同じく、今また戦前と変わらない状況が近づきつつあることに対して、真摯に丁寧に警鐘を鳴らしておられる本だと私は感じている。



イソじいの、イチ押しBOOK~2019年上半期④

2019-08-09 15:56:31 | イチ押しBOOK
 「この世にたやすい仕事はない」津村記久子。「私」が経験した5つの仕事を書いたオムニバスのフィクション。かつて仕事で燃え尽きた負の経験と、自分に合ったキャリアカウンセラーとのやり取りのを通じて、マイペースで転職を繰り返す。だけれどもさりげなく自分らしさや個性を失わない感性が、爽やか。
 「戦争の時代と夏目漱石」小森陽一。著者は9条の会の発起人。漱石は戊辰戦争、西南戦争、日清(1894)、日露(1904)、日韓併合(1910)、第1次世界大戦(1914)と日本の膨張期、日本型ファシズムが形作られる時期に生き、著者は漱石の全著作を研究し、漱石の自分らしさを凛として崩さず達観したシニカルな目線で軍国主義を見事に批判していることを丁寧に検証している。今の世の中の為政者・権力者の醜い愚かさを、現代の「知識人」はどのような矜持を持って告発し世に問うのかを、本書は鋭く問いかけている。
 「カジノミクス」大門実紀志。大門さんならではのユーモアも交え国政の現場での検証も深く解明されていて、理論的にも大変優れた良書。昨今のまったくもって理不尽な経済・財政・金融政策は深く理解できた。それに対する怒りと絶望だけでなくグローバルな規模での良識の闘いや動きも最終章に論じられ希望や道筋を示してくれる。日銀の暴走や金融政策など金融工学的論述など、少し難しい部分もあったが、自分の今後の学習に刺激になった。ただ、表紙のイラストが〝コミカル”すぎるのと、「カジノミクス」はイギリスの女性経済学者が新自由主義を批判して名付けた経済理論解説だが、タイトルに一工夫欲しいと思った。多くの研究者、特に若手研究者や学生に読んでほしい、それほど価値のある本書だ。
 「麦酒とテポドン」文聖姫(ムン・ソンヒ)。副題-経済から読み解く北朝鮮。日本の大学院を出て朝鮮日報の特派員として北朝鮮の民衆や経済活動をいきいきとレポート。面白かった。官邸・与党は嫌韓とセットで北朝鮮の脅威をあおり、文在寅大統領と金正恩・北朝鮮との融和に国民へ猛烈な危機感をあおっているように思えるが、実はグローバルスタンダードの国際感覚から大きく外れ、世界から取り残されているのではないか。対話や理解の精神をかたくなに拒否し続けるなら、世界から哄笑されるのではないかと言った危機感さえ感じる。まずはフランクに北朝鮮を理解するのに、好書であった。