【70才のタッチ・アンド・ブースト】ーイソじいの”山””遍路””闘病””ファミリー”ー

【新連載】 『四国曼荼羅花遍路-通し打ち45日の マイウェイ』

イソじいの、イチ押しBOOK~2019年上半期④

2019-08-09 15:56:31 | イチ押しBOOK
 「この世にたやすい仕事はない」津村記久子。「私」が経験した5つの仕事を書いたオムニバスのフィクション。かつて仕事で燃え尽きた負の経験と、自分に合ったキャリアカウンセラーとのやり取りのを通じて、マイペースで転職を繰り返す。だけれどもさりげなく自分らしさや個性を失わない感性が、爽やか。
 「戦争の時代と夏目漱石」小森陽一。著者は9条の会の発起人。漱石は戊辰戦争、西南戦争、日清(1894)、日露(1904)、日韓併合(1910)、第1次世界大戦(1914)と日本の膨張期、日本型ファシズムが形作られる時期に生き、著者は漱石の全著作を研究し、漱石の自分らしさを凛として崩さず達観したシニカルな目線で軍国主義を見事に批判していることを丁寧に検証している。今の世の中の為政者・権力者の醜い愚かさを、現代の「知識人」はどのような矜持を持って告発し世に問うのかを、本書は鋭く問いかけている。
 「カジノミクス」大門実紀志。大門さんならではのユーモアも交え国政の現場での検証も深く解明されていて、理論的にも大変優れた良書。昨今のまったくもって理不尽な経済・財政・金融政策は深く理解できた。それに対する怒りと絶望だけでなくグローバルな規模での良識の闘いや動きも最終章に論じられ希望や道筋を示してくれる。日銀の暴走や金融政策など金融工学的論述など、少し難しい部分もあったが、自分の今後の学習に刺激になった。ただ、表紙のイラストが〝コミカル”すぎるのと、「カジノミクス」はイギリスの女性経済学者が新自由主義を批判して名付けた経済理論解説だが、タイトルに一工夫欲しいと思った。多くの研究者、特に若手研究者や学生に読んでほしい、それほど価値のある本書だ。
 「麦酒とテポドン」文聖姫(ムン・ソンヒ)。副題-経済から読み解く北朝鮮。日本の大学院を出て朝鮮日報の特派員として北朝鮮の民衆や経済活動をいきいきとレポート。面白かった。官邸・与党は嫌韓とセットで北朝鮮の脅威をあおり、文在寅大統領と金正恩・北朝鮮との融和に国民へ猛烈な危機感をあおっているように思えるが、実はグローバルスタンダードの国際感覚から大きく外れ、世界から取り残されているのではないか。対話や理解の精神をかたくなに拒否し続けるなら、世界から哄笑されるのではないかと言った危機感さえ感じる。まずはフランクに北朝鮮を理解するのに、好書であった。