答えは現場にあり!技術屋日記

還暦過ぎの土木技術者のオジさんが、悪戦苦闘七転八倒で生きる日々の泣き笑いをつづるブログ。

心から

2024年03月13日 | ちょっと考えたこと

 退院翌日、所用があって出かける途中の娘が様子見に我が家へ寄ってくれた。
 まことに都合がよいことに、ソファーで横になっていたぼくは、わざとらしげに弱々しく手を振って、いかにも病人然とした振る舞いを見せるが、身体の内からかもしだす元気さは隠せなかったようだ。

 「だいじょうぶそうやね」

 といって笑う彼女の言葉は受けずに、手術以来ずっと心に思っていたことを吐露する。

 「アンタ、えらいなあ」

 なんのこと?と怪訝な顔をする娘に言葉では返さず、右の手で腹を切る真似をする。

 「ああ、ね」

 瞬時に理解したようだ。
 そう、彼女は帝王切開を三度経験していた。

 すると、それを聞いていた妻が自慢気に口をはさむ。

 「あらワタシだって、アンタのときは16針も縫ったんだからね」

 切開する縫合するの有無にかかわらず、お産にともなう痛みは、男の想像をはるかに超えるものであるらしい。いや、この期に及んで白状すると、ぼくはその想像すらしたことがなく、あたかも「アナタ産むひと」とばかりに、まったく他人事のように振るまってきた。
 それをだ。たまさかできた胆石が発端にして、たかだか腹腔鏡手術でちいさい穴を4箇所あけたぐらいのことで、口を開いてはイタイイタイと、まったくもって情けないといったらありゃしない。



 「いや、ホンマにえらいわ」

 娘や妻のみならず、会う女性尽くにしばらくそう繰り返していたぼくに、あるひとが言った。

 「尊敬しなさいよ」

 いやホント、尊敬してますってば。


コメント
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