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男性不妊症専門医が学術活動ならびに雑感を徒然と綴ります。

精子DNA損傷

2011-11-04 16:39:46 | 日記
精子の頭部にはDNAが入っています。これが精路を通過する間に損傷を受けます。いかにこの損傷を防ぐかで、妊娠率が変わってくるといわれています。それではどうすればDNA損傷は減るのでしょうか?またDNA損傷を引き起こす酸化ストレスを下げるためにできることは。

今回IVF学会ではそのことをテーマに講演させていただきました。少し取り上げておきます。
1. 禁煙:たばこによりあっという間に精子DNA損傷が増えます。禁煙、出来なければ節煙を3ヶ月間は頑張りましょう。
2. 高温:精巣は高温環境に弱いです。実験では37度にすると造精機能が半分に、39度にするとほぼ全滅するといわれています。
ブリーフを避け、トランクスにしましょう。ずっと座り続けることはよくありません。たまに起立して精巣をブラーーんとさせましょう。
3. 精路感染:女性が膀胱炎になりやすいのと同様、男性は精路感染をきたしやすいのです。既往がある際はなるべく精液中の白血球を下げましょう。これが酸化ストレスの原因となります。
4. 抗酸化剤:2011年のCockrane reviewで抗酸化剤(ビタミンE)の内服はIVF結果を改善するとの報告がでました。抗酸化剤であるビタミンC, Eを積極的に摂取しましょう。
5. 精索静脈瘤:積極的に外科治療を行いましょう。精索静脈瘤は酸化ストレスと共に陰嚢内の温度まで上昇させます。すぐに治療できる施設に行きましょう。精液所見が原因で、男性側の診察をせずにARTにいくのは問題ありです。
6. 禁欲期間:ARTするなら毎日でも射精するべし。少なくとも1週間に3回は射精してください。射出に出てくる精子のDNA損傷は瞬く間に下がります。
7. 精巣精子:精液所見不良でART反復不成功例では、精巣精子の使用も考慮に。男性不妊専門医に診てもらいましょう。DNA損傷は精路にいる間に一番損傷を受けます。特に精巣上体を通過してる間に。

DNA損傷が高いと、たとえ顕微授精で子供を授かったとしても、産まれてくる子供の健康問題にまでつながります。
一つずつの心がけで妊娠率はアップすることでしょう。
ゴールは妊娠することでなく、出産して、元気な赤ちゃんを家に連れて帰ることです!