日本の生殖医療を世界レベルに!

男性不妊症専門医が学術活動ならびに雑感を徒然と綴ります。

2021年3月

2021-03-08 08:56:48 | 日記
大阪では緊急事態宣言も解除され、東京ももう一歩というところまで来ました。
院内の制限などご迷惑をおかけしますが、宜しくお願い申し上げます。

2021年2月の男性不妊手術件数
micro TESE 13件
simple TESE 4件
精索静脈瘤手術 31件
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2021年2月

2021-02-01 10:04:37 | 日記
緊急事態宣言下、不自由な毎日ですが、東京・大阪ともに診療時間は従来通りで行っております。
東京クリニックでは診療スペースを拡張し、待合においても着席できるように、そして蜜を避けるように、スタッフ皆で様々取り組んでおりますので、何卒ご理解の程よろしくお願い申し上げます。

2021年1月の男性不妊手術件数
micro TESE 12件
simple TESE 5件
精索静脈瘤手術 27件
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2021年1月

2021-01-09 18:53:44 | 日記
明けましておめでとうございます。大変な世の中となりましたが、今年も着実に前進していきたいと思う新年です。
さて、新春特別企画、友人であるサッカー元日本代表播戸竜二さんが、東京クリニックに来られました。その際のドキュメンタリーフィルムを。今年元旦のサッカー天皇杯決勝においてはNHKで解説をされてましたが、彼のサッカーにかける情熱は半端ないものがあります。この動画は非常に示唆に富んだ、興味深い内容となっています!
ぜひご覧ください、🙇⤵️
▼動画URL
https://www.youtube.com/watch?v=g6hGJeZ7c90

2020年12月の男性不妊手術件数
micro TESE 15件
simple TESE 5件
精索静脈瘤手術 32件


2020年の当グループ男性不妊手術件数
micro TESE 172件
simple TESE 53件
精索静脈瘤手術 484件



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2020年12月

2020-12-14 08:03:55 | 日記
いよいよ今年も終わりに近づいてきました。
コロナ禍だけでなく、大変な一年でしたが、残りを安全に、そして何とか貢献できるよう頑張っていきます。

2020年11月の男性不妊手術件数
micro TESE 19件
simple TESE 2件
精索静脈瘤手術 44件
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私の夫は無精子症II

2020-11-30 13:49:28 | 日記
昨晩、放映されたNNNドキュメント「私の夫は無精子症II」に関して大きな反響をいただいております。
本ブログでの告知を失念しておりました。
再放送があるようですので、ぜひご覧になってください。
現在の本邦における生殖医療を取り巻く諸問題があらわになっている放映と思います。
様々な方にご協力いただき、誠にありがとうございました。

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2020年11月、「不妊治療を保険適用に」の問題点3

2020-11-02 17:31:05 | 日記
さて、不妊治療を保険診療にすることの問題点をさらに挙げていきます。

生殖補助医療(体外受精、顕微授精)を行うのは医師だけではありません。医師が窓口にはなるのですが、実際に手技を行うのは胚培養士です。彼ら彼女らは配偶子を取り扱うプロフェッショナルです。精子、卵子は肉眼では見えません。一日のほとんどを顕微鏡に向き合いながら業務を行っています。もし、生殖補助医療を保険診療にすると、国家資格のない彼らの手技や技術に診療報酬を付けることが可能なのでしょうか?精子調整、媒精、検鏡、顕微授精、凍結、融解、TESE時の精子探索などなど、精子・卵子・配偶子になるべくストレスを与えないように行うことで、妊娠率に大きな差が出てくると考えられており、胚培養士は生殖医療クリニックのまさに心臓です。もちろん胚や配偶子の凍結の管理も胚培養士の仕事です。
 近年、急速な技術の発展とともに、機器だけでなく、技術も急速に必要とされる度合いが増えてきています。胚培養士がいないと生殖補助医療は成り立ちません。これまでのように、臨床検査技師が採血業務の傍ら、胚培養士を行うという時代はとっくに過ぎ去っています。規模の大きいクリニックになればなるほど、胚培養士の負担は大きくなります。当院では東京・大阪合わせて、約50名の胚培養士が在籍しており、来年4月には7名の新卒を迎えることが決定しています。いわゆる理系の大学、大学院出身のエキスパートで学生時代から胚操作を研究で行っているような人材ばかりです。当院では本邦だけでなく、海外にも毎年数名の胚培養士を学会やワークショップに派遣し、最先端の技術を身に着けることに積極的に投資を行っています。おそらく日本一の投資額ではないかと思います。当然のことながら技術職ですので胚培養士の報酬もピンからキリまでで、米国では、特殊な技術を持つ胚培養士が$200Kの報酬を得ることも稀ではありません。
 まずは胚培養士の国家資格化、これがないと診療報酬がつきません。マルメで体外受精いくら、とか顕微授精いくらとしてしまうとモチベーションならびに繊細な技術力低下は否めないものとなるでしょう。医療従事者の奉仕の心や良心のみに期待してはいけないことは自明です。こういった技術にきちんと診療報酬(点数)をつけないと、レベルが一気に下がることが懸念されます。

2020年10月の男性不妊手術件数
micro TESE 15件
simple TESE 3件
精索静脈瘤手術 38件
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2020年10月、「不妊治療を保険診療に」の問題点2

2020-10-05 09:01:24 | 日記
本邦における生殖医療について、様々なメディアでも取り上げられることが多くなり、非常にありがたいことです。
さらに深い議論となるといいと思います。一部メディアやコメンテーターからは、生殖医療機関が既得権益を守ろうとしているだとか、私利私欲に走っているなど、医療側が敵視されることも多々ありますが、日夜必死に誠心誠意やっている実際の医療現場(患者さんや医療従事者など)を一度でもご覧になってから、そして生殖医療を理解していただいてから指摘していただきたいものです。

さて、不妊治療を保険診療にすることの問題点をさらに挙げていきます。
 保険診療になると、薬剤などすべて各保険組合ごとに異なる保険審査の基準に則ったものとなります。おかしな薬剤の使い方や過剰な診療(検査も含む)がチェックされることになります。これはこれで、ガイドラインを策定して運用していけば、決して悪くないシステムなのですが、自費診療が長く続いていたため、不妊治療に使う薬剤など、メーカー側が、ほぼ全く適応承認を取ってきていません。医療機器や培養液、採卵凍結移植その他のキットの承認や保険価格の設定が急いでできるのかという問題点。まだまだエビデンスが乏しい医療であり(妊娠率が世界的にも高くない)、ガイドラインの策定は難しく、実際にクリニックごとに診療内容は大きく異なるのが現状です。

 薬剤に関しては、全くの適応外処方が多く、また国際的には何の問題もないが日本の添付文書的に禁忌の薬剤が多い(例えば妊婦へのホルモン剤など)点は最大のハードルだと思われます。治験をクリアしないと適応取得は困難でしょうが、そもそも禁忌とされている薬剤に治験ができるのか、など本邦独自の問題点があります。治験なしで使用実績や海外の報告をもちいて、学会やワーキンググループから添付文章改訂を申請することが、まだ現実的な方法になるかと思われますが、これにもかなりの時間がかかることが予想されます。高度生殖医療においては、実際臨床においては、妊娠後にホルモン補充を行っているのが一般的で、これができないとなると、妊娠率は極めて低いものとなってしまいます。こういったことが他にも多々あり、治療の幅が大幅に狭くなり、医療の質が低下する可能性は極めて高いと考えられます。

 このようなことを回避するためには、混合診療の事実上無制限の解禁が不可避でありますが、他の医療への影響が大きすぎることもあり、実際には困難でしょう。検査の回数や適応に関しても、回数を大幅に多く認めるか、ある程度の混合診療がないと、患者さんに対してのテーラーメードでの多様な検査の独自性が失われ、画一的な検査のみ実施可能になるような保険化なら医療の質は大幅に低下することが予想されます。当然のことながら不妊の原因は単純なものではなく、千差万別です。細々としたルールの策定は性急にできるものではありません。

 また現在の助成金のルールである、年齢制限と回数制限に関して、保険診療となっても残す場合(残さないというケースはまず考えられませんが)、誰がどのようにカウントするのか、現状の助成制度との移行期の後、カウントはリセットされるのか存続されるのか、などの制度設計が必要になります。これを医療機関側に求めるのは困難です(虚偽の報告の場合、すべて医療機関負担になってしまうと、保険診療を行う施設はまずなくなるでしょう)。

 以下に私からの提言を記します。財源には限りがあり、また社会保障費という観点からも、何でもかんでもというわけにはいかないと思います。特に、以下の3-6をパッケージで行わないと、今回の施策はほぼ意味がないものになってしまうと考えます。性急に進めることなく、しっかりした建設的な議論がなされ、また国民にとってより良い方向に進んでいくことを期待します。まずはできるところから保険診療にしていき、高度生殖医療に関しては、議論に時間をかけ、準備が整ってから行わないと大火傷することは明確です。

1. 不妊治療の保険適応を、施設間のレベル差が少ないと考えられる人工授精(注射、点鼻薬、超音波検査、採血、また治療に必要なパートナーの精液検査、精液調整まで適応拡大)、また無精子症などに対しての精巣精子採取術治療にまでに広げる。

2. 体外受精、顕微授精の高度生殖医療に関しては、これまでの助成金制度を拡充する方向で検討する。
→助成金制度に関しては、
・前年度一定の症例件数(例えば501件以上の(体外受精+顕微授精))を施行した施設で治療を行った場合においてのみ。
・所得制限を夫婦合算で1,500万円までに引き上げ、もしくは撤廃。
・逆に年齢制限をこれまでより厳格なものとする(例えば43歳未満→40歳未満など)。
・回数制限は6回→10回に(もしくは年齢ごとに区切った回数制限の緩和)。
・助成金を現在の2倍とする。

これらはすべて、なるべく妊娠の確率の高い、女性年齢が若い間に治療を受けてもらい、妊娠・出産まで繋げてもらえるように誘導、啓発するものです。年齢制限に関しては,、患者サイドからは大きなお叱りがあると思いますが、妊娠率などのデータからの客観的な政治判断が求められると思います。

3.高度生殖医療を受ける女性に対する就労支援。不妊治療休暇などの制定。男性に対しても労働環境を変化させる施策(働き方改革含め)。

4.女性のエンパワーメント(女性活躍、ダイバーシティ)を進める施策。

5. 高等教育に対する重点化 (「プレコンセプションケア」という観点を浸透させる)。

6. 出産・子育てに関する支援。


2020年9月の男性不妊手術件数
micro TESE 16件
simple TESE 1件
精索静脈瘤手術 39件
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今朝のグッとラック放映から

2020-09-14 16:17:46 | 日記
今朝TBS系列でのグッとラックに私の取材コメントが取り上げられました。
内容としては、私の不妊治療の保険適応に反対の立場でのコメントであり、医療レベルが低下するのが理由であるというものでした。あまりに私のコメントが切り取られていたので、曲解を招く番組内容になってしまっていたと思います。

何人かの患者さんから「せっかくの不妊治療を保険適応にするという機運を台無しにするのか。」「メイン司会者が言っていたように金のない人間は不妊治療するな、ということなのか」などなど批判を頂き、確かに残念ながら私が一般視聴者でもそのように捉えてしまうであろう内容でした。

実際に生殖医療に従事する、そして日本でも最大のクリニックのうちの一つ(二つ)を運営する立場としての意見は前回に述べました。今回取材に対しても時間をかけて丁寧に対応いたしましたし、取材後もフリップ作製など、様々な協力もしてまいりました。肝心の私の主張が全く取り上げていただけず、非常に残念に思っていますが、これも私の力不足のところもあるでしょうから、再度説明させていただきます。

以下は今回の取材でもすべてお話しした内容です。

まず菅新総裁が「不妊治療を保険適応に」と不妊治療に対する対応を政策の一つに取り上げて頂いたことはとても感謝しておりますし、実際生殖医療に携わる一人として、患者の経済的負担は具に見ており、また感じておりますので、公的資金(社会保障費、元は血税です)を、子供が欲しくても希望がかなわない方の治療へのハードルを下げることに、焦点を当てて頂いたことは本当にうれしく思っています。

私はこれまで、自分の専門である男性不妊手術である、「精巣精子採取術」に対する助成金認定や、「顕微鏡下精索静脈瘤手術」を保険適応にすることなど、行政とのコラボレーションをライフワークの一つとして、患者さんの経済的負担軽減に積極的に取り組んできました。その結果、ともに実現することができ、現在に至ります。

今回、不妊治療を保険適応にという案は唐突かのように思われますが、以前より、2004年から開始された高度生殖医療(体外受精、顕微授精)に対する助成金、そして右肩上がりに上昇する助成金交付額、妻の年齢制限の開始、など様々なポイントで内閣府の少子化危機突破タスクフォースでも検討されたと聞いております。
不妊は男女ともに原因があるのに、女性だけがストレスを受け、しんどい思いをしている、夫婦そろって治療に参画することが重要であることなど、私自身、内閣府でのプレゼンや講演も含めて、ずっと伝えてきています。またそれを具現化したのがリプロダクションクリニックです。患者さんの精神的負担軽減にも積極的に取り組んでまいりました。

現在の本邦の不妊治療の現況は前回お伝えした通りですが、日本産婦人科学会2016データブックより補足しておくと、全体の高度生殖医療治療周期の半分以上が1001周期以上の大規模クリニック(約2割、125/578施設中)で行われています。一般的に言うと、大規模クリニックでの治療費は高額です。なぜなら大規模で最先端の医療を行うには、最新医療機器、都市部にあるため賃料高、診察室・手術室・培養室などスペース、技術を持った専門職、これらは必須です。そのため、自由診療の結果として、患者さんの負担が大きくなることは否めない事実です。しかしながらこのような施設に患者が集中しているというのは、やはり妊娠、出産という目的をかなえたいからであり、少しでも妊娠率の高いところに、というのが患者さんの本音だと思います。この自由診療が長年続いたために、医療格差はとても大きくなり、妊娠率でもずいぶんと違ったものになっています。

ここにいきなり一律の診療報酬を設定するとどのようなことが起こるか、想像に過ぎませんが、以下のことを危惧しています。もちろん制度設計などこれから議論していかないものは多いですが、限られた社会保障費を使うのであれば、意味なく垂れ流すよりも、より狭く深いところに使った方が効率的だと考えています。

1. 大規模施設はほとんど診療報酬が下がることになる(診療報酬設定の基準をどこに設けるかによりますが)。
2. 診療報酬を高めに設定すると専門外の新規参入が増え、医療の質は下がることが懸念される。
3. 最新の医療機器の導入、高い技術力保持のための国際的なセミナーや学会参加ができにくくなり、また自由診療だからこそ出来ていた踏み込んだ検査、治療ができなくなる(混合診療を解禁にするなら話は別です)。
4. 価格が高くて足踏みしていた患者さんが大規模施設にさらに集まることになり、医療側が対応できなくなる。またさらにスペース、人件費などの固定費がさらに必要になり、経営を圧迫する(診療報酬が下がらなければ必要に応じて拡充はできますが)。

番組内での批判に対して、
メイン司会者が言われた、「金持ちしか治療できなくなる、金持ちだけ相手にしていていいのか」という指摘については、私の一番の主張は、同じ公的資金を使うのであれば、それは保険適応でなく、「助成金の拡充」です。これを全く伝えていただけず、「自分のクリニック運営がしんどくなるから反対している」かのような論点でとらえられたのは非常に残念でした。
コメンテーターからは、「レベルの高いクリニックは自由診療を続ければよい」と指摘を頂きましたが、それでは全く今回の政策の意味がないと思います。医療のレベルを下げない(むしろ上げたい)状況で、患者さんの負担を軽減することが目的でありますので、本邦の治療周期の半数を占める、全体の2割の大規模クリニックが自由診療を続けることは、決して政策として正しくないのではないかと思います。
社会保障に関しても、消費税は下げろ、保育園などの子供に関するところに手当てを、そして不妊治療も、すべてやらないといけないとのコメント、気持ちはよく理解できますが、重要な政策から順位をつけるべきなのは自明です。財源が限られた中でやるのであれば、そういった議論をスタジオでしないと残念なことになってしまいます。

以上、せっかくfocusを当てて頂けるのであれば、医療の質の低下が懸念される保険診療ではなく、実際に高度な治療を受ける患者さんが受給できる助成金の拡充を求める、というものです。
患者負担は下がりますし、またこの助成金のシステムを施設認定など厳格にすれば、よりつらい思いをされている患者さんに行き渡るのではないかと、主張しました。さらにこうすることにより、最先端の治療ができる施設は増え、妊娠の確率も上がっていくのではないかと感じています。フランスやイギリスでは不妊治療は公的資金で賄われていますが、患者満足度は決して高くなく、様々な問題点があり、どちらかというとアメリカやオーストラリアのように医療の集約化を行うほうが患者さんの受ける恩恵は大きいのではないかと個人的には考えています。

患者さんサイドからすれば「不妊治療を保険適応に」というのは自己負担が下がりますし、願ったりかなったりのことであることは百も承知しています。しかしながらそうすることにより、医療の質が下がり、ひいては限られた時間をいい結果が出せずに、結果としてのぞみが叶わない、という患者さんにとって、また国民にとって不利益な状況になる可能性について、火中の栗を拾うつもりで、指摘させていただきました。

もちろん様々なご意見があることは承知しており、このような番組内での私の発言が公的資金導入に水を差すようなことは決して本意ではありません。私自身の力不足で様々な誤解を生み、非常に残念に思っています。また今後このようなストーリーありきの切り取られ方がなされないよう、十分注意をしたいと思います。


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2020年9月、「不妊治療を保険診療に」の問題点1

2020-09-09 06:33:05 | 日記
さて、「不妊治療を保険診療に」することに反対する意見の一つとして、施設間における治療レベルの非常に大きな格差があります。

例えば、最も施設のチーム力が問われることの一つと考えられる、「精巣精子使用ICSI」を例に挙げてみましょう。
2017年に発表された2016年の日本産婦人科学会のデータによると、本邦で高度生殖医療を行った施設は587施設。
そのうち、「精巣精子使用ICSI」が行われたのは228施設のみ。また、実施11例以上の施設が58施設しかないのです。51例以上となると4施設しかありません。全体で妊娠例が報告されたのは53施設、実際出産まで至ったのはたったの43施設(7.3%)。まさにこの治療の専門家として個人的に考えるに、高いレベルを保つためには、そして患者さんに提供できるレベルとすれば、最低年間51例程度は必要なのではと考えます。

もちろん施設の規模など、一概に施行していない施設のレベルが低いとはいえませんが、他、体外受精、射出精子使用顕微授精においても同様の傾向があります。大規模に行っているところに治療周期は集中している、患者が選択して集中していることが他の疾患に比し顕著です。quality controlの観点からも医療において、症例数というのは施設のレベルを量る要素の一つであることはいうまでもありません。

また世界的に考えても、生殖医療を大規模にやっているところはほぼすべて都市部に存在し(生殖年齢の人口は都市部に集中していることも大いに影響していますが)、その格差はますます開いていきます。
地方の患者も、レベルの高いクリニックを求めて、都市部への通院を選ばれている患者が多くなるのは欧米ではより顕著です。

都市部で大規模な施設を運営することは、賃料、人件費などの固定費が増大することになります。もちろん最先端の治療を行うためには、最新の医療機器が不可欠であり、その分自由診療というカテゴリーから、患者さんへの費用負担が大きくなる傾向は否めません。それでも成功率を求めて、患者さんは選択されるのです。その結果ますます診療内容の格差が開いていきます。この繰り返しが長い間ずっと行われてきたわけです。だから体外受精1周期当たりのコストが30万円から80万円と施設によって大きな差が生まれてきたのです。ここに公的負担として、助成金が(年齢制限や所得制限はあるものの)1周期当たり30万円というのが現状です。

ここに保険診療をいきなり導入すると何が起こるか?診療点数の決め方は様々な観点から、平均的な点数が設定されます。平均的な点数となると、大規模な先進施設はほぼコストダウンとなり、何かを削らなくては運営していけなくなります。お分かりのように、その結果として医療の質の低下が生じます。

豪州ビクトリア州などは公的負担の条件として、症例数(採卵数)の最低ラインがあります。年間に採卵2000件以上(前年度実績)の施設で治療を行う場合のみ、公的負担があるなど。これを2016年の本邦に当てはめると、587施設中48施設(8.3%)だけで治療を受ける際に公的助成を受けられることになります。
スウェーデンでは公立病院で治療を受ける、妻の年齢が40歳以下である場合にのみ、公的助成があります。にもかかわらず、大半の患者は助成のないプライベートクリニックで治療を受けています。

これらから鑑みても、本邦で「不妊治療を保険診療に」することには絶対に反対です。
保険診療にするのではなく、助成金制度の拡充を図れば、解決できることは多く、地方においても、たとえば中国地方に一つ、四国に一つ、九州に一つなど、大規模施設が生まれ、そこに選択的に集中し、高いレベルが保てるのではないかと考えます。データを分析しても、日本の生殖医療を行う施設は多すぎます。どこでも助成を受けられる体制(軽い審査はありますが)を厳格に変えれば、淘汰は進み、本気で生殖医療をやらないと廃れていくという構図を図るべきであり、「不妊治療を保険診療に」することは完全に逆行することにつながります。


2020年8月の男性不妊手術件数
micro TESE 22件
simple TESE 5件
精索静脈瘤手術 40件
コメント

2020年8月

2020-08-12 06:58:43 | 日記
~不妊治療を保険診療に~
「第4次少子化社会対策大綱」では、不妊治療についても言及。今回はその中で初めて不妊治療における保険適用、費用や需給条件についての見直しを図ると明記された。また自民党の「不妊治療への支援拡充を目指す議員連盟」(甘利明会長)の要望書には、不妊治療に対する医療保険の適用検討のほか、不妊治療の費用助成額を保険適用の場合と同等程度まで引き上げたい旨記されている。

個人的に絶対に「反対」の立場です。実際に不妊治療に従事している、良識ある医療関係者であればほとんどの方がそう思われていると考えます。保険診療にする弊害は非常に大きく、日本の生殖医療自体の衰退に繋がりかねません。
ひいては患者さんの不利益につながります。
私が強く求めるのは、助成金制度の拡充、集約化です。
いくつもの理由がありますが、今後少しづつ述べていきます。

2020年7月の男性不妊手術件数
micro TESE 22件
simple TESE 3件
精索静脈瘤手術 46件
コメント