6月22日の通常国会会期末が迫る中、野党第一党の立憲民主党が内閣不信任案を提出するかどうかに政界関係者の注目が集まっているが、複数の国内メディアは同党の野田佳彦代表が不信任案不提出の方針を固めたと伝えた。また、朝日新聞は12日付朝刊で石破茂首相が内閣不信任案が提出されない前提で、今国会中に衆院解散しない方針を固めたと報道した。
野党7党はガソリン税の暫定税率を7月1日に廃止する法案を11日に衆院に提出。暫定税率の早期廃止に難色を示す自民・公明の連立与党を揺さぶり、参院選の争点にする戦術を採用した。これは内閣不信任案の「代替」とも映るが、政府・与党は備蓄米の安値供給で国民の関心を引き付けており、コメ対ガソリンの物価対策をめぐる与野党の攻防は、今のところ与党が押し気味に展開しているのではないか。
<不信任案出ないなら、衆院解散は見送りへ>
12日付の朝日の記事では「立憲の野田代表が不信任案を提出しない方向で検討。石破首相はこれを受け、解散見送りを決断した」と報道した。このような展開になれば、7月20日の可能性が高まっている参院選は衆参同日選ではなく、単独での選挙になる。
野田代表は週明けには内閣不信任案を提出するかどうか決断するとしか発言していないが、日米関税交渉が進行中であり、政治空白を作ることは望ましくない、という大義名分を立てて不信任案の提出見送りを決める公算が大きいと予想する。
その背景には、1)小泉進次郎農相の就任後、スピーディーに安い政府備蓄米が店頭に並び、国民の幅広い支持を得ている、2)低迷していた石破内閣の支持率が反転する調査結果が出てきた、3)立憲民主党の支持率はあまり伸びていない、4)立憲はじめ野党の衆院選準備は大幅に立ち遅れており、早期の衆院解散は立憲民主党など野党の敗北に終わる危険性がある──との政治情勢に対する認識があったからではないか、と分析する。
国内報道機関の複数の報道では、石破首相が内閣不信任案の提出があれば、採決前に衆院解散する方針を固めているとされ、野党内に選挙準備の遅れを懸念する声が急速に広がったとの観測が出ている。石破首相の強気の姿勢が、野党の機先を制した格好になったと筆者は考える。
<ガソリン暫定税率の廃止法案、野党7党は参院選前に与党けん制>
一方、立憲や日本維新の会、国民民主党など野党7党は11日、ガソリン税の暫定税率を7月1日に廃止する法案を衆院に共同で提出した。衆院における7党の議席は228議席と過半数の233議席に迫っており、衆院で可決される可能性がある。
参院では自民・公明の与党が過半数を維持しており、仮に衆院で可決されても参院では否決され廃案になる公算が大きい。
野党側は参院選を前に「ガソリン税の引き下げに反対する自民、公明両党の姿勢を浮き彫りにする」という狙いがあり、最大の争点に仕立て上げるという狙いがありそうだ。
<主食用輸入米の入札、6月27日に前倒し コメ市場参加者に「畏怖」与える効果>
だが、小泉農相がリーダーシップを取って実施している備蓄米の随意契約による安値販売が国民の注目を集め、テレビのワイドショーは連日のようにコメをテーマにした番組を放送し、単にコメの安値販売のニュースだけでなく、コメの流通構造の複雑さやコメの国内における需給状況、作り手の高齢化による日本の稲作の衰退状況などかつてない量の報道を展開し、コメと日本農業に対する国民の関心が急速に高まっている。
小泉農相は12日、主食用として輸入しているコメの入札を例年より前倒しし、今月27日に実施すると表明した。政府は毎年、ミニマムアクセスという枠内で10万トンの外国産米を主食用として輸入。いつもは9月に実施しいていた入札を大幅に前倒しして実施し、5キロで5000円台の価格にもなっていた銘柄米の値段を下げるための「冷やし玉」として早期投入することを決めた。
6月5日の当欄で指摘したように、小泉農相が迅速に実行している安値の備蓄米の提供は、外為市場における「介入」と同じ行為であり、効果が出るかどうかは当局がマーケットのセンチメントと実需を正確に把握し、市場参加者に「畏怖」を与えることができるかどうかにかかっている。
コメ市場では、これまで当局の思い切った介入は実施されてこなかったので、コメの専門家と称する方々のコメントを見ると、効果が出るかどうか不明という内容が多い。
しかし、当局側に無尽蔵の介入資金があれば、立ち向かう市場参加者は恐れおののき、介入は成功する。政府備蓄米が残り10万トンになったところで、コメ市場の参加者の一部は「勝った」と思ったかもしれない。
だが、ここで小泉農相が輸入米の投入というカードを切ったことで「新米の出回る直前の7、8月は高値になる」との皮算用は脆くも崩れ去ったのではないか。
<コメの安値投入、その先にある日本農政の大改革プラン>
一部の野党関係者は、小泉農相の一連の対応を「父親譲りの劇場型政治で、いずれ国民から飽きられる」とみているようだが、高をくくっていると痛い目にあう可能性がある。
高いコメ価格を安価な備蓄米の投入で修正させるのは第1段階であり、第2段階は全国農業協同組合連合会(JA全農)などの集荷業者のパワーが強いコメの流通構造の改革を打ち出すと予想する。
さらに第3段階では、事実上の減反政策を転換し、コメの増産方針を打ち出し、輸出拡大へとかじを切る計画が打ち出されるだろう。
それと並行して、農地の集約化を迅速にできる権限を国や自治体などに与え、農地の大型化と生産性の向上を進める大改革案を表明すると予想する。
当然、現在の小型経営を前提にした様々な農業ビジネスに携わる関係者から猛烈な反対の声がわき上がるだろうが、石破首相と小泉農相は「日本の農業改革」と「食料安全保障」を組み合わせて、幅広い国民からの支持を集める戦略を展開していくと予想する。
<7月参院選、改選125議席のうち50議席で与党過半数に 薄れる自民の悲壮感>
7月の参院選では、東京選挙区の補欠選挙(欠員1)と合わせて125議席が争われる。与党の改選議席は自民が52議席、公明が14議席の計66議席。非改選は自民62議席、公明13議席の計75議席で、50議席を確保すれば、過半数を維持できる。
当初、与党の非公式な情勢調査では、50議席の確保が危ぶまれていたが、足元では復調傾向が見えているとの観測がある。
そこに小泉農相の安いコメの投入効果で与党の支持率が上がっているとの見方が加わり、参院選の情勢は投票日まで1カ月超の期間があるものの「敗北必至」という悲壮感はかなり薄れてきたとみられている。
<次の衆院選、農業の大改革が争点になる可能性>
もし、参院選が与党勝利に終わるなら、上記で指摘したコメと日本農政の改革プランは、存続する石破内閣の大きな旗印となり、内閣支持率の上昇が継続している場合、早期の衆院解散になだれ込む「主要政策」になっている可能性がある。
一方、野党側はあらためて消費税減税の必要性を訴えてくるかもしれない。足元で起きつつあるコメ対ガソリンの争点争いの帰すうは、今年後半の政治展開を大きく変えるパワーを持っていると指摘したい。









