内外の注目を集めている衆院選の投開票日が27日に迫ってきた。今回は複数の国内メディアが事前の予測報道で、自民党と公明党の連立与党で過半数の233議席を維持するのは微妙と伝えている。27日午後8時から出口調査の結果に基づいた推計獲得議席数を各テレビ局が一斉に速報するが、実際の開票作業はその時点から始まる。
午後9時から10時にかけて、東北、北海道、北陸、中国、四国、九州など人口の少ない地域から当選確実者が明らかになっていく。その後、都市部での開票が進み、28日午前零時過ぎには与党で過半数を維持できるかどうかの見通しが立ってくると予想される。
今回は、開票作業の進展にしたがってどの選挙区に注目するべきか、そこでの当落によって今回の衆院選での基調がどうなっていると判断できるのか、という点を説明し、少しでも早い時点で開票結果の「基調」が分かるように読者の皆様をご案内したいと考えている。
今回の衆院選は、自民党から見ると「西高東低」となっており、東日本での激戦区での勝敗によって、単独過半数の233議席は確保できるのか、220議席程度の議席に減少するのか、それとも200議席まで減少するのかを推定できるように解説していきたい。
<開票序盤の見どころ>
1.東北
青森1区(青森市など) 前回は自民候補が圧勝したが、今回は自民前職の津島淳氏と立憲元職の升田世喜男氏が接戦と伝えられている。もし、立憲が勝利すれば、自民党の過半数割れの可能性が高いと予想できる。
青森3区(弘前市など) 前回は自民候補が立憲候補の2倍近い得票で圧勝したが、今回は立憲新人の岡田華子氏が自民前職の木村次郎氏をリードしていると報道されていた。立憲が勝てば自民党は220議席程度まで議席を減らす流れになっているとみるべきだろう。
秋田1区(秋田市) 過去2回は自民候補が勝利している。今回は立憲前職の寺田学氏と自民前職の冨樫博之氏が互角の戦いとなっている。立憲が勝利すれば「躍進」の流れとみることができる。自民が勝てば終盤戦での盛り返しを象徴する選挙区となり、大敗を回避できるとの判断が浮上するかもしれない。
宮城3区(白石市など) 前回は3万票超の差で自民候補が勝利した。今回は立憲新人の柳沢剛氏が自民前職の西村明宏氏に先行していると報道された。自民が敗れるようなら220議席の確保も危ぶまれる事態になりかねない。
福島4区(いわき市など) 自民新顔の坂本竜太郎氏がやや優勢で立憲新人の斎藤裕喜氏が追う展開とされている。自民が勝利すれば立憲が優勢な福島県で踏みとどまったことになるが、もし、敗北するなら東北での自民劣勢を象徴する選挙区になるかもしれない。
2.北陸・信越
新潟5区(十日町市など) 立憲前職の梅谷守氏と自民前職の高鳥修一氏が接戦と伝えらえている。もし、自民が敗北すれば、新潟県内の1-5区で自民全敗・立憲全勝の可能性が高まり、自民は220議席の確保も危ぶまれることになりかねない。
富山1区(富山市の一部) 自民が議席を死守してきた選挙区。今回は立憲新顔の山登志浩氏と自民前職の田畑裕明氏が互角の戦いとみられている。自民が議席を失えば、220議席程度への議席減が視野に入ってくる。
長野5区(飯田市など) 過去2回とも自民が議席を獲得してきたが、自民前職の宮下一郎氏と立憲新顔の福田淳太氏が伯仲した戦いとされている。もし、立憲が勝利すれば躍進を象徴する選挙区となる一方、自民退潮が鮮明になるとも言える。
<開票中盤のポイント>
1.北海道
北海道5区(札幌市の一部など) 前回は自民候補が当選し、立憲候補は比例復活できなかった。今回は立憲元職の池田真紀氏がやや優勢で、自民前職の和田義明氏が追う展開とされている。自民が巻き返せば、選挙戦終盤の追い上げの成果が出た選挙区となる。立憲が勝利すれば、全国的な支持拡大の流れの1つとみられるだろう。
北海道10区(岩見沢市など) 公明党が道内唯一の小選挙区勝利を維持してきたが、今回は立憲前職の神谷裕氏が公明前職の稲津久氏を一歩リードしていると伝えられている。与党が議席を持ちこたえることができるのか注目されている。
2.北関東
茨城6区(土浦市など) 過去2回は自民が議席を獲得している保守王国の選挙区。立憲前職の青山大人氏と自民前職の国光文乃氏が互角の激戦と報道されている。もし、自民が敗北するなら220議席の確保も危うくなるとみられるだろう。
栃木4区(小山市など) ここも自民が議席を堅持してきた。立憲前職の藤岡隆雄氏が元総務会長の自民前職佐藤勉氏に対してやや優勢と伝えられている。仮に立憲が勝利すれば、自民党にとっては手痛い敗北となってしまう。
群馬3区(太田市など) 前回は自民候補が立憲候補に2万票近い差をつけて当選した。今回は、自民前職の笹川博義氏が立憲元職の長谷川嘉一氏と接戦になっていると報道された。自民が大敗回避へ持ちこたえるのか注目されている。
<開票終盤、与党過半数を見極める首都圏の選挙区>
東京3区(品川区など) 自民前職の石原宏高氏と立憲新人の阿部裕美子氏が激しく競り合うとされている。自民が勝てば何とか220議席は維持できる可能性も出てくるが、立憲勝利のケースでは都区部での自民敗北の連鎖の可能性も生じかねず、200議席程度までの減少を覚悟する必要性が浮上するだろう。
東京7区(港区、渋谷区) 3区と同様に自民の浮沈を占う選挙区になる。立憲元職の松尾明弘氏と自民新人の丸川珠代氏が互角の戦いと報道されている。自民が勝利すれば何とか220議席を確保できるかもしれないが、立憲が勝利するなら自民、公明での過半数獲得が困難という解説がテレビで行われている可能性がある。
東京11区(板橋区南部) 無所属前職の下村博文氏と立憲元職の阿久津幸彦氏が接戦とされている。政治とカネの問題で注目されている選挙区の1つで、立憲が勝てば選挙報道の中でスポットが当たると予想される。敗北すれば、野党乱立の象徴選挙区として取り上げられそうだ。
東京18区(武蔵野市など) 立憲新顔の松下玲子氏と自民新人の福田かおる氏が互角の激戦と報道された。多摩地区のトレンドを占う上で重要な選挙区で、自民が勝利すれば東京での大敗北を回避できる可能性が出てくるが、敗北するなら多摩地区でのドミノ倒し的な敗北の可能性も出てくる。
東京24区(八王子市の一部) 無所属前職の萩生田光一氏と立憲新顔の有田芳生氏の伯仲した戦いが展開されていると報道されている。今回の衆院選で最も注目されている選挙区ともいえ、午前零時を過ぎても当落が判明していない可能性もある。
神奈川20区(相模原市南区など) 立憲新人の大塚小百合氏と自民前職の甘利明氏が接戦と伝えられている。甘利氏は比例に重複立候補しておらず、背水の陣。都市部における自民党の勢いを図る選挙区とも言える。
埼玉14区(草加市など) 党代表の公明前職、石井啓一氏と国民前職の鈴木義弘氏が接戦と報道されている。公明として負けられない選挙区となっているだけに注目されている。仮に国民前職が勝利するケースでは、自公で過半数割れという事態になっている可能性もある。
千葉3区(市原市など) 官房長官を務めた自民前職の松野博一氏と立憲元職の岡島一正氏が激戦となっていると伝えられている。政治とカネの問題で有権者がどのような判断を下すのか、という点で注目されている。
上記の首都圏での激戦区における当落が判明する28日午前1時ごろには、比例代表での獲得議席の大勢も判明し、自公で過半数を維持できるのか、それとも割り込むのかがはっきりしているだろう。
その間に石破茂首相(自民党総裁)らに対するテレビ各社のインタビューも相次いで報道され、発言が速報メディアによって流され、28日の東京市場の行方を大きく左右することになる。