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一歩先の経済展望

国内と世界の経済動向の一歩先を展望します

今国会の衆院解散回避か、コメの争点化狙う石破・小泉コンビに遠大な改革プランも

2025-06-12 15:22:29 | 政治

 6月22日の通常国会会期末が迫る中、野党第一党の立憲民主党が内閣不信任案を提出するかどうかに政界関係者の注目が集まっているが、複数の国内メディアは同党の野田佳彦代表が不信任案不提出の方針を固めたと伝えた。また、朝日新聞は12日付朝刊で石破茂首相が内閣不信任案が提出されない前提で、今国会中に衆院解散しない方針を固めたと報道した。

 野党7党はガソリン税の暫定税率を7月1日に廃止する法案を11日に衆院に提出。暫定税率の早期廃止に難色を示す自民・公明の連立与党を揺さぶり、参院選の争点にする戦術を採用した。これは内閣不信任案の「代替」とも映るが、政府・与党は備蓄米の安値供給で国民の関心を引き付けており、コメ対ガソリンの物価対策をめぐる与野党の攻防は、今のところ与党が押し気味に展開しているのではないか。

 

 <不信任案出ないなら、衆院解散は見送りへ>

 12日付の朝日の記事では「立憲の野田代表が不信任案を提出しない方向で検討。石破首相はこれを受け、解散見送りを決断した」と報道した。このような展開になれば、7月20日の可能性が高まっている参院選は衆参同日選ではなく、単独での選挙になる。

 野田代表は週明けには内閣不信任案を提出するかどうか決断するとしか発言していないが、日米関税交渉が進行中であり、政治空白を作ることは望ましくない、という大義名分を立てて不信任案の提出見送りを決める公算が大きいと予想する。

 その背景には、1)小泉進次郎農相の就任後、スピーディーに安い政府備蓄米が店頭に並び、国民の幅広い支持を得ている、2)低迷していた石破内閣の支持率が反転する調査結果が出てきた、3)立憲民主党の支持率はあまり伸びていない、4)立憲はじめ野党の衆院選準備は大幅に立ち遅れており、早期の衆院解散は立憲民主党など野党の敗北に終わる危険性がある──との政治情勢に対する認識があったからではないか、と分析する。

 国内報道機関の複数の報道では、石破首相が内閣不信任案の提出があれば、採決前に衆院解散する方針を固めているとされ、野党内に選挙準備の遅れを懸念する声が急速に広がったとの観測が出ている。石破首相の強気の姿勢が、野党の機先を制した格好になったと筆者は考える。

 

 <ガソリン暫定税率の廃止法案、野党7党は参院選前に与党けん制>

 一方、立憲や日本維新の会、国民民主党など野党7党は11日、ガソリン税の暫定税率を7月1日に廃止する法案を衆院に共同で提出した。衆院における7党の議席は228議席と過半数の233議席に迫っており、衆院で可決される可能性がある。

 参院では自民・公明の与党が過半数を維持しており、仮に衆院で可決されても参院では否決され廃案になる公算が大きい。

 野党側は参院選を前に「ガソリン税の引き下げに反対する自民、公明両党の姿勢を浮き彫りにする」という狙いがあり、最大の争点に仕立て上げるという狙いがありそうだ。

 

 <主食用輸入米の入札、6月27日に前倒し コメ市場参加者に「畏怖」与える効果>

 だが、小泉農相がリーダーシップを取って実施している備蓄米の随意契約による安値販売が国民の注目を集め、テレビのワイドショーは連日のようにコメをテーマにした番組を放送し、単にコメの安値販売のニュースだけでなく、コメの流通構造の複雑さやコメの国内における需給状況、作り手の高齢化による日本の稲作の衰退状況などかつてない量の報道を展開し、コメと日本農業に対する国民の関心が急速に高まっている。

 小泉農相は12日、主食用として輸入しているコメの入札を例年より前倒しし、今月27日に実施すると表明した。政府は毎年、ミニマムアクセスという枠内で10万トンの外国産米を主食用として輸入。いつもは9月に実施しいていた入札を大幅に前倒しして実施し、5キロで5000円台の価格にもなっていた銘柄米の値段を下げるための「冷やし玉」として早期投入することを決めた。

 6月5日の当欄で指摘したように、小泉農相が迅速に実行している安値の備蓄米の提供は、外為市場における「介入」と同じ行為であり、効果が出るかどうかは当局がマーケットのセンチメントと実需を正確に把握し、市場参加者に「畏怖」を与えることができるかどうかにかかっている。

 コメ市場では、これまで当局の思い切った介入は実施されてこなかったので、コメの専門家と称する方々のコメントを見ると、効果が出るかどうか不明という内容が多い。

 しかし、当局側に無尽蔵の介入資金があれば、立ち向かう市場参加者は恐れおののき、介入は成功する。政府備蓄米が残り10万トンになったところで、コメ市場の参加者の一部は「勝った」と思ったかもしれない。

 だが、ここで小泉農相が輸入米の投入というカードを切ったことで「新米の出回る直前の7、8月は高値になる」との皮算用は脆くも崩れ去ったのではないか。

 

 <コメの安値投入、その先にある日本農政の大改革プラン>

 一部の野党関係者は、小泉農相の一連の対応を「父親譲りの劇場型政治で、いずれ国民から飽きられる」とみているようだが、高をくくっていると痛い目にあう可能性がある。

 高いコメ価格を安価な備蓄米の投入で修正させるのは第1段階であり、第2段階は全国農業協同組合連合会(JA全農)などの集荷業者のパワーが強いコメの流通構造の改革を打ち出すと予想する。

 さらに第3段階では、事実上の減反政策を転換し、コメの増産方針を打ち出し、輸出拡大へとかじを切る計画が打ち出されるだろう。

 それと並行して、農地の集約化を迅速にできる権限を国や自治体などに与え、農地の大型化と生産性の向上を進める大改革案を表明すると予想する。

 当然、現在の小型経営を前提にした様々な農業ビジネスに携わる関係者から猛烈な反対の声がわき上がるだろうが、石破首相と小泉農相は「日本の農業改革」と「食料安全保障」を組み合わせて、幅広い国民からの支持を集める戦略を展開していくと予想する。

 

 <7月参院選、改選125議席のうち50議席で与党過半数に 薄れる自民の悲壮感>

 7月の参院選では、東京選挙区の補欠選挙(欠員1)と合わせて125議席が争われる。与党の改選議席は自民が52議席、公明が14議席の計66議席。非改選は自民62議席、公明13議席の計75議席で、50議席を確保すれば、過半数を維持できる。

 当初、与党の非公式な情勢調査では、50議席の確保が危ぶまれていたが、足元では復調傾向が見えているとの観測がある。

 そこに小泉農相の安いコメの投入効果で与党の支持率が上がっているとの見方が加わり、参院選の情勢は投票日まで1カ月超の期間があるものの「敗北必至」という悲壮感はかなり薄れてきたとみられている。

 

 <次の衆院選、農業の大改革が争点になる可能性>

 もし、参院選が与党勝利に終わるなら、上記で指摘したコメと日本農政の改革プランは、存続する石破内閣の大きな旗印となり、内閣支持率の上昇が継続している場合、早期の衆院解散になだれ込む「主要政策」になっている可能性がある。

 一方、野党側はあらためて消費税減税の必要性を訴えてくるかもしれない。足元で起きつつあるコメ対ガソリンの争点争いの帰すうは、今年後半の政治展開を大きく変えるパワーを持っていると指摘したい。

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少数与党の皮肉、当面は石破首相続投のパワーバランス 参院選後は大政局の可能性

2025-03-18 13:22:06 | 政治

 国内報道各社の世論調査で、石破茂首相の支持率が大幅に低下している現象をみて、東京市場の参加者の一部で石破首相の早期退陣と、高市早苗前経済安全保障担当相などの積極財政派の首相就任の可能性を予想する声が出ているようだ。だが、自民党と公明党が少数与党に転落している現状では、自民党総裁を交代させて自動的に首相に就任させるという「多数派」時代の慣性の法則は通用しない。

 また、臨時の総裁選実施のためには、所属国会議員と都道府県連の代表を合わせた数の過半数の要求が必要になるが、今の時点でそこまでの票は固まっていないもようだ。筆者は今年7月とみられる参院選の結果、自民、公明の連立与党で非改選も含めて過半数を割り込む結果にならなければ、石破首相が退陣することはないと予想する。それでは、参院選はどうなるのか。比例では自民党が大幅に議席を減らしそうだが、選挙区では1人区での野党の候補者調整が進まずに自民党が「不人気」ながら辛勝する選挙区が多くなれば、過半数割れを回避できるかもしれない。参院選の帰すうは、野党の選挙調整にかかっていると言えそうだ。

 

 <商品券で支持率低下、一部に早期退陣の思惑>

 17日付読売新聞朝刊は、石破内閣の支持率が前回調査(2月実施)から8ポイント下がり、昨年10月の内閣発足以来、最低の31%に低下したと伝えた。自民党の当選1回の衆院議員15人にそれぞれ10万円の商品券を配布した問題が厳しい評価を受けたと分析していた。

 朝日新聞の調査でも14ポイント低下の26%まで下がり、毎日新聞の調査では7ポイント低下の23%に下落した。

 このため、一部の国内メディアは1)2025年度予算案の成立後の4月上旬、2)6月15-17日にカナダで開催される主要国首脳会議(G7サミット)後、3)通常国会会期末の6月22日の直前──などが石破首相の退陣の時期の候補になりうるという記事を掲載した。

 

 <早期の自民党総裁選に高いハードル>

 このような見方が浮上する背景には、不人気の石破首相のまま、7月の参院選に突入すれば、大敗して参院でも連立与党が過半数割れに陥るという危機感が、自民党内に広がりつつあるからだ。

 だが、参院選前の石破首相の退陣と新首相の選出には、いくつかのクリアすべきポイントが存在する。

 まず、円滑な首相交代には、石破首相の辞任表明が必要になるが、筆者の見るところ、石破首相に辞任の意思は全くないのではないか。ようやく手にした自民党総裁と首相の座をやすやすと手放さない、という決意は商品券問題で陳謝しつつも、法的に問題はないと突っぱねているところに鮮明に出ている、と指摘したい。

 石破氏が首相辞任の意思を持たない場合、自民党総裁選を臨時に行うには「党所属の国会議員及び都道府県支部連合会代表各一名の総数の過半数の要求があった時は、総裁が任期中に欠けた場合の総裁を公選する選挙の例により、総裁の選挙を行う」(自民党党則6条4項)との要件を満たす必要がある。

 衆参両院と都道府県連の議員の総数の過半数が早期の総裁選実施を求めるまで、足元の自民党内で「石破辞任」の声が盛り上がっているとは言えない。

 実際、朝日新聞の世論調査によると、商品券の配布問題で石破首相は「辞めるべきだ」が32%だったのに対し、「その必要はない」が60%だった。世論は商品券問題に厳しい反応を示しているものの、この問題が「首相辞任」に直結するわけではない、とみているようだ。

 

 <内閣不信任案の提出に慎重な野田氏、衆院解散への警戒も>

 このような情勢の下で、参院選前の石破首相の辞任のカギを握っているのが、野党から提出される可能性のある内閣不信任案の動向だ。これは衆院にだけ許されている権能で、可決されれば首相は衆院解散か総辞職を10日以内に決断しなくてはならない。

 ただ、野党第1党・立憲民主党の野田佳彦代表は16日、商品券の配布問題で「徹底して説明を求める。内閣不信任決議案提出や退陣を求める声があるが、私は簡単に求めない」と述べた。背景には、石破首相の下で与党が参院選を戦った方が、野党としては「与しやすい」との思惑があるとの解説が永田町では出ていたようだ。

 確かにその点も重要だが、もし、石破首相が衆院を解散した場合、衆院選における小選挙区での野党間の候補者調整が全く行われていない現状で、衆院選を戦うのは「不利」との情勢判断が働いたのではないか、と筆者は推理する。

 したがって予算案成立直後やサミット終了後のタイミングでの内閣不信任案の提出の可能性は低く、そこまでは石破政権が継続している可能性があると予想する。

 

 <会期末に支持率低下なら不信任案の可決も、石破首相は解散と総辞職のどちらを選択するのか>

 問題は通常国会の会期末における情勢だ。衆院選の候補者調整が進んでいなくても、石破内閣の支持率がかつての森喜朗内閣のように10%を切るまでに下落しているようなら、内閣不信任案を提出し、野党の賛成多数で可決し、衆院解散か総辞職か、という場面があるかもしれない。

 その場合は、自民党内の石破降ろしが本格化し、石破首相が参院選を前に総辞職を決断。総裁選で新総裁を選ぶことになるが、ここで衆院での与党過半数割れが大きく作用する。野党の一部の賛成か、野党の分裂を待たないと、新内閣は発足できないことになり、政局は大混乱する可能性が高まる。

 一方、石破内閣の支持率がサミット出席などで回復し、内閣不信任案の提出があっても、野党の一部が反対ないし棄権に回って否決され、そのまま7月の参院選になだれ込むというケースも想定される。

 

 <自公の人気低迷、参院選で過半数維持は可能なのか>

 7月の参院選を前に、自民、公明の与党は非改選で74議席を有しており、改選124議席と東京選挙区の1議席(任期3年)を含めた125議席のうち、51議席を確保すれば、参院全体の過半数125議席を有することができる。与党の改選議席は66議席なので15議席負けても過半数を確保できる計算となる。

 ところが、直近の国内メディアの世論調査では、自民党の人気が低下しており、比例区での議席減が心配されている。先の読売の調査によると、参院選・比例区での投票先は自民が25%、国民民主が17%、立憲民主が11%、日本維新の会が6%、れいわ新選組が5%、公明が4%、共産が3%などとなった。

 国民民主とれいわの伸長が目立ち、自民、公明の連立与党は比例で19議席、7議席の現有勢力を維持するのが難しい情勢に直面している。

 選挙区での野党間の候補者調整が進ちょくしていないものの、比例で与党が大幅に議席を減らすようなら、過半数維持の目標達成が危うくなりそうだ。

 もし、トータルで与党が125議席を割り込めば、衆参ともに少数会派となり、政権の枠組み自体が大幅に変更される展開もありうる。

 他方、125議席以上を確保できれば、石破首相は続投する公算が大きく、石破政権として与党の枠組みが変更される可能性も出てくる。

 いずれにしても、参院選前とは一変して、参院選後は大政局が待ち構えていると覚悟した方がよいと指摘したい。

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来年夏の参院選、与党過半数割れはあるか 織り込めない市場は大変動も

2024-12-25 14:21:47 | 政治

 2024年の日本の政治は、自民党総裁選における石破茂氏の当選と直後の衆院選で自民・公明の過半数割れが起きるという大きな変化が生じた。年が明けて25年は夏に参院選が行われる。現在は過半数を維持する自民・公明がもし、過半数割れとなれば、日本の政治情勢は一段と混迷の度を深めるだろう。

 だが、多くの市場関係者は、夏の参院選後に日本の政治がどのように変化するのかほとんど織り込んでいない。筆者は自民・公明の過半数割れの可能性がかなりあると予想する。そこで何が起きるのか──。いくつかのシナリオを考えてみた。

 

 <前哨戦の都議選、自民に裏金問題の暗雲>

 まず、参院選の前哨戦となる都議選は、6月から7月に選挙が行われる予定。現有議席(総定数127)は自民30、都民ファーストの会27、公明23、共産19、立民14などとなっているが、今年7月の都知事選で2位になった石丸伸二氏が新党を立ち上げるとみられており、議席数は大きく変動する可能性がある。

 そこに都議会自民党会派の裏金問題が浮上。25日付朝日新聞朝刊は、会派事務局が政治資金収支報告書に記載しなかった収入の総額が直近の5年間で3000万円前後に上る疑いがあり、東京地検特捜部が立件の可否を検討していると報道した。

 裏金問題が立件されたり、都議会自民党の多くの議員が裏金問題に関与していることが明らかになれば、今年10月の衆院選と同様に自民党への逆風が吹く可能性が高まる。

 

 <来年の参院選、7月20日投開票の報道>

 このような中で行われる参院選の投開票日をめぐっては、様々な観測が交錯しているが、20日付読売新聞朝刊は、政府・与党が25年の通常国会の召集日を1月24日とする方向で調整に入り、会期延長がなければ、参院選の日程は「7月3日公示、20日投開票」が有力となる、と伝えた。

 参院の現有勢力は、自民が113、公明が27の計140と過半数の125を上回っている。このうち来年の選挙で改選されるのは、自民が52、公明が14の計66。非改選は自民が61、公明が13の計74で、両党で合わせて15議席減の51議席になっても過半数は維持できる。

 

 <衆院選の流れ継続なら、苦戦必至の自民>

 10月の衆院選前は、改選議席の少ない自民・公明が過半数割れする可能性は低いとみられていた。ところが、衆院選での与党惨敗で参院選をめぐる情勢は急変した。

 読売新聞の試算によると、衆院選の得票数から参院選の比例区の獲得議席は自民14、立民11、公明6、国民6、維新5、共産3、れいわ3となる。前回22年の参院選では自民18、維新8、立民7、公明6、共産3、国民3、れいわ2だった。

 また、参院選の結果を左右する1人区32選挙区の勝敗は、野党の一本化が成立すれば、与党が15、野党が17となり、前回の自民28勝4敗から様変わりした結果となる。

 野党の一本化には高いハードルが存在するが、足元で30-40%台で推移する石破内閣の支持率を前提にすれば、参院選での与党過半数割れの可能性は、足元で上昇してきたのではないか。

 

 <トランプ関税と株価、賃上げが自民の逆風になる可能性>

 23日の当欄「トランプ関税の影響受ける来年の春闘、無防備なら石破政権や日銀利上げにも影響」で指摘したように、トランプ次期米大統領が対メキシコの関税を25%に引き上げた場合、日本の自動車メーカーのメキシコから米国への年間77万台の自動車輸出に大きな影響が発生する可能性がある。

 その結果、自動車株の下落や自動車各社の賃上げ率の抑制などで、石破政権が目指す24年並みの25年賃上げ達成が難しくなり、賃金が上がらない中で物価だけが上がる実態に世論の関心が集中すれば、参院選を前に石破内閣と自民党の支持率が一段と低下し、参院選に大きな逆風となる展開が予想されると指摘したい。

 23日にも言及したが、石破内閣はトランプ次期米政権の「関税引き上げ」という戦術に対する具体的な対応策が今のところなく、このままでは1月中下旬以降に金融市場が動揺する懸念がある。

 

 <物価高に不満の世論、感度が鈍い政府・与党>

 そもそも石破首相と自民党幹部は、10月の衆院選での自民大敗の原因分析が不十分ではないか、と筆者の目には映る。確かに裏金問題が主な争点になり、自民党の選挙態勢が後手を踏んだことが影響したのは間違いないが、それだけでは28議席へと4倍増を果たした国民民主の躍進を説明できない。

 いわゆる「103万円の壁」を強調し、178万円への大幅な引き上げを主張した国民民主に支持が集まった背景には、物価高で手取りの所得が目減りしているという金融資産をあまり保有していない階層の支持を集めたことがある、と強調したい。

 つまり、物価高に不満を持つ階層が与党ではなく、国民民主など野党を支持し、多くの既存メディアの想定を超えた与党の議席減を生んだとみるべきだ。

 

 <参院選で野党多数になっても、立民中心の政権が難しい理由>

 だが、筆者は参院選で仮に与党が過半数割れとなっても、立民を中心とした野党政権が発足する可能性は低いと予想する。立民と国民、維新との安全保障やエネルギー政策などでの距離が大きく、最終的には自民、公明、維新、国民の4党連立か、自民、公明の少数与党を維新、国民が個別政策で支持する「令和版多数派」の形成に落ち着く可能性が高いと予想する。

 その際に石破氏が首相を退くのか、それとも政権を維持するのかは、その時の自民党内のパワーバランス次第だろう。

 

 <不透明感増す日本の政治情勢、織り込めないマーケットに弱点>

 いずれにしても、参院は半数改選のシステムで選挙を行うため、いったん過半数割れを発生させるとその解消には相当の時間がかかる。それを短期間で解消するには、連立の組み替えか政界再編しかないが、ドラスチックな変化を回避するなら「令和版多数派」の形成で凌ぐしかないだろう。

 日本の政治構造が大きく変化する際に、マーケットが事前に織り込めないなら、事後に大きな価格変動があると予想するのが合理的だ。

 25年は日本の政治情勢と金融・資本市場が同時に大きく動く局面がある、と予想する。

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石破少数内閣に3本の対野党パイプ、25年度予算案の成立へ試される構想力

2024-12-13 15:24:07 | 政治

 10月27日の衆院選で少数与党に転落した石破茂政権が12日、2024年度補正予算案の衆院通過を果たした。石破首相は最初の関門を通過した形だが、注目するべきは「103万円の壁」問題で協議した国民民主党だけでなく、日本維新の会や立憲民主党とも新たなパイプを造り、さらにハードルが高くなる第二の関門である2025年度予算案の成立に向け、政治環境が少しずつ変化してきたことだ。

 3本の政策協議ルートは、国民民主党とだけの1本のルートよりも政府・与党に選択の幅を与え、政治的に孤立して不信任案を提出されるリスクを抑える機能を持たせたことになる。この新たな動きの中心にいたのが森山裕・自民党幹事長と見られている。25年度予算案の成立に向けた道筋はまだ見えてこないものの、25年度税制改正大綱や予算案編成の着地に至るプロセスで、自民・公明両党と他の3党との距離感やその先の連携の有無が浮かび上がってくる可能性がある。

 

 <国民民主と合意、補正予算案が衆院通過 目立つ森山幹事長の存在感>

 今回の補正予算案の衆院通過までの過程をみると、3つの特異な政治的合意があった。1つ目は、「103万円の壁」の引き上げにかかる財源問題で与党と国民民主党との溝が深まり、国民民主党が補正予算案への反対の可能性をちらつかせる中、幹事長レベルで急転直下、合意文書を作成して国民民主党の補正予算案賛成を決めたことだ。

 「178万円を目指して」「暫定税率の廃止」「2025年からの実施」という文言を盛り込みつつ、前の2つには時期を盛り込まなかった「玉虫色の決着」は、森山幹事長の決断だったとされる。万が一、補正予算案が衆院で否決されれば重大な政局問題に発展したに違いなく、森山幹事長の政治的な駆け引きは水際だった巧妙さを見せた。

 

 <自民と立民に新たなパイプ、注目される森山氏と安住氏の人間関係>

 12日付読売新聞朝刊は、国民民主党を合意へと促したのは、自民党と立憲民主党との補正予算をめぐる妥協の動きだったと伝えた。これが2つ目の出来事だ。

 連立与党は立憲民主党の要求を飲む形で能登半島の復旧・復興支援のため、予備費から1000億円を充てる修正案を11日にまとめ、立憲民主党の安住淳・予算委員長は12日の補正予算案採決を決定。12日の補正予算案採決の段階では、この修正案に立憲民主党も賛成した。

 予算委では補正予算案の政府原案に与党と国民民主党、日本維新の会が賛成して可決され、本会議では修正案に一本化されて採決されたが、立憲民主党は緊急性の低い基金への支出が多いことなどを理由に反対した。補正予算案の審議が始まって修正されて可決されたのは初めてで、この点は立憲民主党も野党優位の国会の成果と評価している。

 ここでも森山氏と安住氏の国会対策委員会で形成された人脈が生かされたと国内メディアは報道している。自民党と立憲民主党との間に確かなパイプが形成されたことの証と言えるだろう。

 

 <維新も補正予算案に賛成、教育無償化で自公と協議会設置へ>

 3つ目は、日本維新の会が前原誠共同代表の下で、教育無償化をテーマに与党と政調会長レベルで協議会を設置することで合意し、日本維新の会も補正予算案に賛成したことだ。

 あまりの急展開のため、日本維新の会ではこの方針転換に反発する声が表面化するというハレーションまで発生した。

 25年度予算案の成立を目指す際に、教育の無償化をめぐって例えば高校の授業料無償化などに関し、一定の合意が与党と日本維新の会で形成されれば、予算編成の過程でその合意内容が盛り込まれるという展開もありえる。

 

 <本予算案成立へ、自民党にとって増えたカード>

 もし、25年度予算案をめぐって与党と日本維新の会の合意が先行すれば、国民民主党が高いボールを投げてきても妥協を強いられることがなくなるという道が開ける。 

 そのような可能性があることを内外に示すだけでも、国民民主党に対するけん制力が増すことにもつながるという計算が自民党に働いたとみることもできるだろう。

 

 <立民との調整、国会での修正協議が主戦場か>

 立憲民主党は予算案の国会提出前の事前協議のかたちでの合意形成方式を強く批判しているため、与党と同党との合意形成は、補正予算案と同様に国会での修正という形をとることになると予想される。

 仮に水面下での自民党と立憲民主党との間での折衝で、特定の予算項目での減額や増額で折り合いが付きそうになれば、大規模な予算案の修正が国会の場に姿を現す可能性もあると筆者は予想する。

 その場合の主要なプレーヤーは森山氏と安住氏になり、最終的な決断は石破首相と立憲民主党の野田佳彦代表が下す展開が予想される。ただ、本予算に賛成することは、事実上、与党の政治路線を認めることにもなるため、立憲民主党内で異論が噴出することも想定される。

 

 <予算案めぐる駆け引き、その後の展開につながる可能性>

 このように3本のパイプができたことは、石破内閣の選択肢の幅を広げることにつながるだけでなく、その先の政権の枠組み変更や政界の地殻変動に連動する大きなパワーに発展する可能性を秘めている。

 だが、3本のパイプが同時に目詰まりし、最終的に予算案が否決されるというリスクも相応に存在する。その場合は内閣総辞職というドラスティックな結末が待ち構えていることもありえる。

 同時に進行する政治資金規正法の再改正問題と合わせ、自民、公明両党と野党各党の「構想力」の真価も問われることになる。

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国民民主要求の政策、新財源のメド立たず 国債大増発なら石破政権と市場に試練

2024-11-27 12:04:29 | 政治

 少数与党の第2次石破茂内閣にとって、2025年度予算案の編成が大きなハードルとして浮上してきた。国民民主党が主張するいわゆる「年収103万円の壁」の引き上げやガソリン税の減税を実施した場合、9兆円を超える新たな財源の確保が必要になるが、そのめどが立っていないためだ。さらに防衛費をめぐる増税の取り扱いで国民民主党の玉木雄一郎代表が反対を表明し、25年度の税制改正をめぐる自民党、公明党と国民民主党との調整が難航して、予算編成が大幅に遅延する可能性も出てきた。

 自公両党は衆院で過半数を割り込んでおり、25年度予算案の成立には国民民主党の賛成が不可欠となっている。このため最終的には自公両党が国民民主党の要望を受け入れる可能性が高いが、その場合は赤字国債の大規模な増額が不可避となる。だが、円債市場関係者の多くは昨年までの自公優位の国会運営に慣れてしまい、大幅な国債増発の可能性を織り込んでいない。石破内閣にとってもマーケットにとっても25年度予算案の編成は、大きな分かれ道となりそうだ。

 

 <石破首相、所信表明で「他党にも丁寧に意見聞く」と発言へ>

 読売新聞など複数の国内メディアは、29日の臨時国会で石破首相が行う所信表明演説の主要なポイントを事前に報道し、石破首相が「他党にも丁寧に意見を聞き、可能な限り幅広い合意形成が図られるよう、真しに謙虚に取り組んでいく」と述べると伝えた。

 実際、自民、公明、国民の3党は、所得税の非課税枠である基礎控除と所得税控除の合算額である103万円について「25年度税制改正の中で議論し引き上げる」との合意文書を交わし、ガソリン減税は「自動車関係諸税全体の見直しに向けて検討し、結論を売る」ということで合意し、24年度補正予算案について「年内の早期成立を期す」ということで合意して、補正予算案の成立が事実上、固まった。

 

 <先送りされた財源問題、解決に2つの障害>

 ただ、財源問題は11月20日の当欄で指摘したように具体的な結論は先送りされた。そのツケをいよいよ、25年度予算案編成のプロセスで払うことになる。

 103万円の壁の引き上げ財源に関し、障害になっているのは不足する税収の規模が大きいことと、26年度以降もその手当てが必要になる「平年度ベース」の制度改正になるという2つだ。

 国税と地方税を合わせて7-8兆円の税収不足に直面するが、税収の上振れ分や予算の使い残し、税外収入を当てる対応策では、1)7-8兆円の全額を賄う規模にならない、2)26年度以降の財源確保のメドが立たない──という問題に直面する。

 

 <財源不足は9兆円超に>

 そこで国民民主党の主張する178万円まで引き上げるのではなく、消費者物価指数の上昇分に見合う引き上げ額にする案などが与党サイドから提起される可能性があるものの、国民民主党が拒否すれば、少数与党だけで予算案を可決できないため、予算案成立のメドが立たない現実に直面することになる。

 同様に国民民主党が主張する旧暫定税率を廃止してガソリン税を減税する場合、1.5兆円程度の減収が恒常的に発生する。

 合わせて9兆円強の財源不足をどうするのか──。25年度予算案の編成上、最大の問題になることが予想される。

 

 <防衛増税、玉木氏は「必要ない」と指摘>

 さらに防衛増税の問題が新たに浮上してきた。防衛費を増額するための財源として政府は、所得、法人、たばこの3税を引き上げる方針を決め、22年末に閣議決定した大綱で「27年度に向けて複数年かけて(増税を)段階的に実施する」と明記した。ただ、22、23年と2年連続で増税開始時期の延期を決定したため、27年度には1兆円超の増収を予定していた計画が本当に実行できるのか微妙な状況になっている。

 こうした中で国民民主党の玉木代表が26日の会見で、25年度における防衛増税は「必要ない」と発言。合わせて自民党の茂木敏充前幹事長が同党総裁選で「防衛増税の停止」を主張していたことにも触れて「まず自民党の中の意見をまとめてもらいたい」と主張した。

 自民党の宮沢洋一税調会長は26日、防衛増税は「大きな方針を党として決めてある」と述べ、何らかの増税実施に前向きの姿勢を示した。

 

 <一部に越年編成の声も、国民民主の賛成なしで難しい予算案成立>

 このように大規模な歳出項目の前提になる財源問題で、自民、公明、国民3党の意見は大幅に食い違っており、一部の政府・与党関係者の中では財源問題での調整難航を理由に、予算編成が例年よりも大幅に遅れて場合によっては越年する可能性があるのではないかとの声も出ている。

 ここで、現在の政治状況を俯瞰してみると、代表選を戦っている日本維新の会で次期代表に選出される可能性が大きいとみられている吉村洋文・共同代表は、自公両党と距離を取る政策に重点を置くスタンスを強調しており、25年度予算案で賛成に回る可能性は低下しているとみられる。

 また、野党第1党の立憲民主党が予算案の賛成に回るよう通常国会で「予算案の組み替え」に応じる選択肢も理論上はありうるが、政治的にかなり難易度の高い「技」の発揮を求められ、現状ではかなり難しいと筆者は考える。

 そうなると、国民民主党の要求を概ね容認するかたちで25年度の税制改正大綱をまとめ、103万円の壁引き上げなどの実現に必要な歳入は、大部分を新規国債の発行で賄うという「落としどころ」がどこかで浮上するのではないか、と予想する。

 

 <市場に心の準備がない新規国債大増発のケース>

 このような国債の大増発への「心の準備」が、マーケットにはできているのだろうか──。足元における長期金利の動向を見ていると、国債の前倒し発行の存在が心理的な支えになって、安心しきっているのではないかと筆者の目には映る。

 確かに前倒し発行分で吸収できるということは事実だが、それを繰り返していると、その先に何が待ち構えているのかは明白ではないか。

 

 <注目される石破首相の決断>

 10月の衆院選の結果、28議席の国民民主党がキャスティングボートを握り、予算編成で大きな影響力を持つようになったが、財源問題がネックになって予算編成のプロセスが大幅に遅延する可能性もある。 

 遅延しない場合は、国債発行額が大幅に増額され、市中で消化される国債の量が市場の想定よりも大幅に上振れするリスクが高まる。

 石破首相と政府・与党にとって予算案の成立と国債大増発の可能性をどのように比較衡量することになるのか、大きな分かれ道は12月上中旬にやってくるだろう。

 マーケットにとっても、前倒し発行分で増発分が吸収され、市中消化に大きな影響は出ない、と安心していられないような「大きな波」が、いきなり押し寄せてくる可能性もある。

 かつてない注目の予算編成と言ってよい事態が、間もなく衆人環視の下で展開される。

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