食料品の値上げが続く中、消費者物価指数(CPI)における食料の価格が高止まり、一部の消費動向への影響が鮮明になってきた。牛丼チェーンのすき家が28日に11年ぶりとなる牛丼の値下げを発表、客離れに苦しむ外食産業の苦境を浮き彫りにした。
一方で、最高値圏で推移する日経平均株価の動向などを背景に、株式を保有する富裕層には消費拡大の余力が生まれており、消費の二極化が一段とはっきりする状況となっている。相対的に所得の低い階層を直撃する食料品を中心とした物価高に対し、政府・日銀がどのような政策対応をしていくのか注目が集まりそうだ。
<生鮮除く食料は7.4%上昇、エネルギーは5.3%下落>
総務省が29日に発表した8月の東京都区部CPI(除く生鮮食品、コアCP)が前年同月比プラス2.5%となり、3カ月連続でプラス幅が縮小した。政府の電気・ガス料金負担軽減策でエネルギーが同マイナス5.3と大きく下がり、東京都の水道基本料金の無償化によって水道代が同マイナス34.6%と下落したことなどが影響した。
だが、生鮮食品を除く食料は同プラス7.4%と前月から横ばいとなり、7月まで7カ月連続で上昇幅が拡大してきたトレンドが止まったものの、高止まりが目立つ展開となった。
<すき家が牛丼値下げへ、株価は収益性低下を懸念して下落>
購入頻度の高い食料品価格の上昇は、従来から消費者の節約志向を強め、個人消費全体の伸び悩みにつながっていると多くの民間エコノミストから指摘されてきたが、牛丼チェーンすき家の11年ぶりの値下げは各方面に大きな波紋を投げかけた。
すき家の値下げは9月3日午前9時からで、牛丼並盛が450円、牛丼大盛が650円とそれぞれ30円の引き下げ。牛丼並盛は今年3月の値上げ以前の価格に戻ることになる。
29日の東京市場では、すき家を傘下に持つゼンショウの株価が前週末比で1.9%下落した。収益性の低下が懸念されたという。
<消費者の家計防衛、外食回数の削減に>
安価で手軽に利用できる牛丼は、デフレ時代には値下げを競う局面が長く続いた。だが、このところの脱デフレ基調によって牛丼を提供する各社は値上げを実施。売り上げが落ちないことから原材料や人件費の上昇、円安などを理由に複数回の値上げが行われてきた。
今回のすき家の値下げの背景には、今年3月の同社製品への異物混入の発覚という事態が影響を与えた点が大きいものの、足元で続く7-8%の食料品価格上昇を受けて、消費者が外食の回数を減らすということで「家計防衛」に走った可能性をうかがわせる。
<足元で進む所得階層の分離、年間平均給与は正社員530万円・非正規201万円>
特に相対的に所得の低い階層にとって、購入頻度の高い食料品価格の相次ぐ値上げは、消費行動の大きな変更を強いられた可能性が高いと思われる。
国税庁の2023年の民間給与実態統計調査によると、正社員の平均給与は前年比プラス1.3%の530万3000円であるのに対し、正社員以外(非正規従業員)は同プラス0.7%の201万9000円にとどまっている。
CPIの上昇率が前年比1%未満にとどまり、食料品価格の値上げが目立たなかった局面では、消費者の節約行動に関し、所得階層間での大きな対応の差はなかったものの、このところの大幅な食料品の値上げは所得の低い階層の人々に大きな打撃を与えた可能性がある。
<今夏の海外旅行者数は20%増、賃上げ・株高の恩恵も>
一方、大企業を中心に正社員に属する人々は、2025年も5%台の賃上げを獲得。さらに日経平均株価が一時、4万3000円台に急騰するなど株価上昇の恩恵を受けた人々は、日常生活での節約は行ったものの、旅行など「非日常」への出費は拡大させたようだ。
JTBの推計によると、今年の夏休み期間(7月15日ー8月31日)における旅行者数は、国内が前年比プラス0.3%と微増だったのに対し、海外旅行は同20.8%と大幅に伸び、平均旅行額の伸びも国内の同4.5%の4万6000円に対し、海外は同5.5%の28万9000円だった。
<新たな消費の二極化、食料品などの物価高が拍車かける構図>
このように直近の物価高は、所得階層間で消費の明暗が分かれる「二極化」現象を顕著にさせている可能性がある。この現象を放置していると、株価は最高値を更新しているのに物価高を背景に国内消費が伸び悩むという「令和の新現象」を継続させ、日本経済のひずみを大きくすることにつながる。
政府・与党が参院選前に打ち出した所得制限なしの一人当たり2万円の給付金の実施は、所得制限を付けて低所得者層への一人当たりの給付額を増やし、食料品値上げの打撃を緩和する政策に転換する必要があるのではないか。
足元で起きている継続的な食料品値上げによる多様な現象に対し、政府・日銀はそれを見守っているだけでなく、何が必要な対応なのか、国民に情報を発信するべきであると考える。