総務省が25日に発表した4月の東京都区部消費者物価指数(CPI)は、生鮮食品を除く総合(コアCPI)が前年比プラス3.4%と市場予想の同3.2%を上回る強い結果となった。3%台の上昇は2023年7月以来21カ月ぶり。筆者が注目するのはサービスが前年比プラス2.0%と前月の同0.8%から上昇幅が加速した点だ。日銀が注目してきた賃金上昇から価格への転嫁がここにきて鮮明になってきた「証拠」の1つと言えるだろう。
植田和男・日銀総裁は24日のワシントンでの会見で、「予断を持たずに適切に丁寧にデータを見ていきたい」、「それに応じて適切に政策を判断していく」と述べていたが、日銀が4月30日と5月1日の金融政策決定会合でどのような政策判断を示し、その後の会見で植田総裁が物価上昇の足音に高まりに対してどのような見解を表明するのか、市場の注目度が一段と高まりそうだ。
<高校授業料の無償化という特殊要因から解き放たれた4月東京都区部CPI>
4月東京都区部CPIは、コアCPIだけでなく、総合が前年比プラス3.5%と前月の同2.9%から跳ね上がり、生鮮食品とエネルギーを除く総合(コアコアCPI)も同3.1%と前月の同2.2%から急上昇した。
一部のエコノミストは東京都が昨年4月から実施してきた高校授業料の無償化による価格抑制効果が1年経過してなくなり、その分が上昇幅を大きくさせており、物価上昇テンポの加速を過大評価するのは正しくないとの見解を示している。
だが、筆者の眼から見ると、今年3月までの東京都区部CPIが「特殊要因」で物価上昇の力を実態よりも低く見せていたのであり、4月以降はより実態に近い物価上昇の姿が示されていると指摘したい。
<サービス価格は2%上昇、家賃の伸び加速>
例えば、物価上昇の力はコアCPIの示すデータよりも弱いと主張してきた一部のエコノミストや市場参加者が注視してきた「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」は、3月の前年比プラス1.1%から4月に同2.0%へと伸び率が2倍近くにジャンプアップした。
筆者は、サービス価格の上昇幅が大きくなっていることに注目する。2025年3月まではそれまでの賃上げ幅が大きくなった割合に比して、サービス価格の上昇幅が小幅だったが、4月はサービス価格の改定が多く実施される月とされており、その動向に注目していた。
結果は、3月の前年比プラス0.8%から同2.0%という大きな伸びだった。中でも目立ったのは、モノの価格上昇と比べて値上げの足取りが鈍かった家賃の動向だ。4月は前月の同1.1%から1.8%に加速。そのうち非木造の家賃は3月の1.3%から2.2%と価格上昇のパワーが高まった。
<外食の値上げ、コメ高騰プラス人件費上昇が影響>
サービスの中では外食の価格上昇が最も大きく、3月の5.3%から5.7%に伸びが高まった。コメ類が93.8%と過去最大の上昇になったことが大きく影響したが、深刻な人手不足が解消されない中でのバイト代など人件費の上昇も外食価格の引き上げにつながったとみられる。
つまり賃金上昇の大きな流れがサービス価格に波及してきた、という現象がようやく統計上でもはっきり確認できる状況になったということだろう。
<G7で最も高いCPI伸び率となった日本>
4月東京都区部CPIの強い結果は、4月全国CPIを予想する上で大きな参考データになるだろう。生鮮食品を除く食料が3月の5.6%から6.4%に加速していることやサービス価格の上昇テンポが高まっていることなどは、同じ傾向が示されると予想する。
日本は、3月の段階で主要7カ国(G7)中で最も高いCPI伸び率となっている。基調的な物価上昇率が2%に達していないというのが日銀の従来からの公式見解だが、足元における物価上昇が賃金上昇の波及によるサービス価格上昇というルートの影響と結びついているのは明らかだ。
<トランプ関税の下押し効果、物価上昇の判断で注目される植田総裁の会見>
トランプ関税による景気後退と物価下押しの圧力増大というリスクが、どこまで現実化するのか。今後の日米交渉で関税率が引き下げられれば、それに応じて物価下押し圧力も弱まるだろう。こうした不透明な要因も含め、日銀が次の決定会合でどのような政策判断を下すのか、5月1日の会見における植田総裁の発言次第で、株価・ドル/円・金利の値幅が大きく変動することも想定するべきだ。
植田和男・日銀総裁は24日のワシントンでの会見で、「予断を持たずに適切に丁寧にデータを見ていきたい」、「それに応じて適切に政策を判断していく」と述べていたが、日銀が4月30日と5月1日の金融政策決定会合でどのような政策判断を示し、その後の会見で植田総裁が物価上昇の足音に高まりに対してどのような見解を表明するのか、市場の注目度が一段と高まりそうだ。
<高校授業料の無償化という特殊要因から解き放たれた4月東京都区部CPI>
4月東京都区部CPIは、コアCPIだけでなく、総合が前年比プラス3.5%と前月の同2.9%から跳ね上がり、生鮮食品とエネルギーを除く総合(コアコアCPI)も同3.1%と前月の同2.2%から急上昇した。
一部のエコノミストは東京都が昨年4月から実施してきた高校授業料の無償化による価格抑制効果が1年経過してなくなり、その分が上昇幅を大きくさせており、物価上昇テンポの加速を過大評価するのは正しくないとの見解を示している。
だが、筆者の眼から見ると、今年3月までの東京都区部CPIが「特殊要因」で物価上昇の力を実態よりも低く見せていたのであり、4月以降はより実態に近い物価上昇の姿が示されていると指摘したい。
<サービス価格は2%上昇、家賃の伸び加速>
例えば、物価上昇の力はコアCPIの示すデータよりも弱いと主張してきた一部のエコノミストや市場参加者が注視してきた「食料(酒類を除く)とエネルギーを除く総合」は、3月の前年比プラス1.1%から4月に同2.0%へと伸び率が2倍近くにジャンプアップした。
筆者は、サービス価格の上昇幅が大きくなっていることに注目する。2025年3月まではそれまでの賃上げ幅が大きくなった割合に比して、サービス価格の上昇幅が小幅だったが、4月はサービス価格の改定が多く実施される月とされており、その動向に注目していた。
結果は、3月の前年比プラス0.8%から同2.0%という大きな伸びだった。中でも目立ったのは、モノの価格上昇と比べて値上げの足取りが鈍かった家賃の動向だ。4月は前月の同1.1%から1.8%に加速。そのうち非木造の家賃は3月の1.3%から2.2%と価格上昇のパワーが高まった。
<外食の値上げ、コメ高騰プラス人件費上昇が影響>
サービスの中では外食の価格上昇が最も大きく、3月の5.3%から5.7%に伸びが高まった。コメ類が93.8%と過去最大の上昇になったことが大きく影響したが、深刻な人手不足が解消されない中でのバイト代など人件費の上昇も外食価格の引き上げにつながったとみられる。
つまり賃金上昇の大きな流れがサービス価格に波及してきた、という現象がようやく統計上でもはっきり確認できる状況になったということだろう。
<G7で最も高いCPI伸び率となった日本>
4月東京都区部CPIの強い結果は、4月全国CPIを予想する上で大きな参考データになるだろう。生鮮食品を除く食料が3月の5.6%から6.4%に加速していることやサービス価格の上昇テンポが高まっていることなどは、同じ傾向が示されると予想する。
日本は、3月の段階で主要7カ国(G7)中で最も高いCPI伸び率となっている。基調的な物価上昇率が2%に達していないというのが日銀の従来からの公式見解だが、足元における物価上昇が賃金上昇の波及によるサービス価格上昇というルートの影響と結びついているのは明らかだ。
<トランプ関税の下押し効果、物価上昇の判断で注目される植田総裁の会見>
トランプ関税による景気後退と物価下押しの圧力増大というリスクが、どこまで現実化するのか。今後の日米交渉で関税率が引き下げられれば、それに応じて物価下押し圧力も弱まるだろう。こうした不透明な要因も含め、日銀が次の決定会合でどのような政策判断を下すのか、5月1日の会見における植田総裁の発言次第で、株価・ドル/円・金利の値幅が大きく変動することも想定するべきだ。