トランプ米大統領が14日、自動車関税をめぐってメーカーの一部支援を検討していると述べ、マーケットは一時のパニック的な心理からかなり落ち着きを取り戻しつつある。一部の参加者の間では、相互関税の上乗せ部分の発表が市場にとって最も「打撃の大きい」局面だったが、今後は各国とのディールで関税率が漸次、引き下げられていくとの見通しが浮上している。
そこで注目を集めているのが、17日にワシントンで開催される日本の赤沢亮正・経済再生担当相と米国のベッセント財務長官らとの日米交渉と、同じ日のイタリアのメローニ首相とトランプ大統領の米伊首脳会談だ。この2つの外交交渉で関税率の引き下げの道筋が明らかになれば、株などのリスク資産にマネーが戻る可能性もある。一方、歩み寄る気配がないと判断された場合は、相互関税の上乗せ部分のさらなる引き上げ方針を米側が示す可能性もあり、通貨安問題を抱える日本は厳しい局面となりそうだ。
<自動車メーカー支援に言及したトランプ氏、対象は米メーカー限定の可能性>
トランプ大統領は14日、ホワイトハウスで記者団に対し「自動車メーカーの一部を支援する何らかの方法を検討している」と述べた。「彼らはカナダやメキシコなどほかの国で製造されていた部品を切り替えているが、米国で製造するとなると、少し時間が必要だ」と、支援検討の理由を指摘した。
15日の東京市場では、トヨタなど自動車株などを中心に幅広い銘柄に買いが入った。だが、筆者はトランプ大統領の言及した自動車メーカーはGМなどの米国のメーカーで、トヨタなどは含まれていないと考える。「アメリカ・ファースト」のトランプ氏が日本や欧州の自動車メーカーにまで支援の手を差し延べることはなく、自動車関税の税率はそのまま維持し、米メーカーに限定して還付金や補助金を交付する可能性が高いのではないか。
<日米交渉、日本の提案次第で関税率引き下げの可能性>
とはいえ、ここにきてトランプ大統領の手法がだんだんと明らかになってきた、との声が市場で広がってきた。最初に最も高い要求を突き付け、そこで貿易相手国が譲歩案を提示すれば、それを材料に高めの税率を引き下げ、米国に有利な「貿易協定」を結ぶという交渉手法だ。
例えば、日本に対しては、24%の相互関税と25%の自動車関税などを課すとしているが、米国が高い優先順位で要求しているコメなどの農産品の関税引き下げ、通貨安の是正、日本の自動車安全基準や基準認証などの修正と米国自動車の輸入拡大などで、日本が米国の納得する「新提案」という名の譲歩案を示せば、24%と25%の税率を一定程度引き下げるという展開だ。
<不十分な提案なら税率引き上げのブラフも、日本にとって難しい円高誘導の問題>
だが、日本国内ではあまり指摘されていないが、米側は交渉相手が目立った譲歩案を示さない場合は、相互関税などを引き上げるスタンスも示しており、交渉の展開によっては、相互関税と自動車関税を50%に引き上げるという強い姿勢を示す可能性もあると予想する。
そこで、最も深刻な問題になりそうなのが、通貨安の是正の問題だ。大幅なドル安・円高水準への誘導を求められても、ベッセント財務長官が米長期金利の上昇を誘発しかねないドル売り・円買い介入の実施には反対の立場とみられ、日本側に具体的な実施手段があるのかどうか非常に難しい立場に立たされかねないからだ。
<世界が注目する赤沢・ベッセント、トランプ・メローニの関税外交>
こうした中でグローバルな金融・資本市場の関係者が注目しているのが、日米関税交渉と米伊首脳会談だ。どちらも17日にワシントンで開催される予定だが、そこで米側がどのような具体的な要求を提示し、日本とイタリアがどのように対応するのか、ということが今後の交渉のモデルケースになるからだ。
特に日本にとっては、トランプ大統領がメローニ首相にどのような要求を突き付け、どのように対応するのかが非常に参考になると考える。
<関税率の引き下げにメド付けば、マーケットは株買い優勢に ドル/円は円高進展も>
もし、日米関税交渉と米伊首脳会談が順調に進展したなら、18日の東京市場ではリスクオン心理が優勢になって日本株が大幅に上昇する展開も予想される。
ただ、ドル/円は円高誘導がテーマになっている可能性が高いため、交渉後の両国当事者の情報発信内容によっては円高が進展する可能性も相応にあると予測する。
17日の2つの外交交渉の結果が、当面のグローバルマーケットの方向性に大きな影響を与えそうだ。
そこで注目を集めているのが、17日にワシントンで開催される日本の赤沢亮正・経済再生担当相と米国のベッセント財務長官らとの日米交渉と、同じ日のイタリアのメローニ首相とトランプ大統領の米伊首脳会談だ。この2つの外交交渉で関税率の引き下げの道筋が明らかになれば、株などのリスク資産にマネーが戻る可能性もある。一方、歩み寄る気配がないと判断された場合は、相互関税の上乗せ部分のさらなる引き上げ方針を米側が示す可能性もあり、通貨安問題を抱える日本は厳しい局面となりそうだ。
<自動車メーカー支援に言及したトランプ氏、対象は米メーカー限定の可能性>
トランプ大統領は14日、ホワイトハウスで記者団に対し「自動車メーカーの一部を支援する何らかの方法を検討している」と述べた。「彼らはカナダやメキシコなどほかの国で製造されていた部品を切り替えているが、米国で製造するとなると、少し時間が必要だ」と、支援検討の理由を指摘した。
15日の東京市場では、トヨタなど自動車株などを中心に幅広い銘柄に買いが入った。だが、筆者はトランプ大統領の言及した自動車メーカーはGМなどの米国のメーカーで、トヨタなどは含まれていないと考える。「アメリカ・ファースト」のトランプ氏が日本や欧州の自動車メーカーにまで支援の手を差し延べることはなく、自動車関税の税率はそのまま維持し、米メーカーに限定して還付金や補助金を交付する可能性が高いのではないか。
<日米交渉、日本の提案次第で関税率引き下げの可能性>
とはいえ、ここにきてトランプ大統領の手法がだんだんと明らかになってきた、との声が市場で広がってきた。最初に最も高い要求を突き付け、そこで貿易相手国が譲歩案を提示すれば、それを材料に高めの税率を引き下げ、米国に有利な「貿易協定」を結ぶという交渉手法だ。
例えば、日本に対しては、24%の相互関税と25%の自動車関税などを課すとしているが、米国が高い優先順位で要求しているコメなどの農産品の関税引き下げ、通貨安の是正、日本の自動車安全基準や基準認証などの修正と米国自動車の輸入拡大などで、日本が米国の納得する「新提案」という名の譲歩案を示せば、24%と25%の税率を一定程度引き下げるという展開だ。
<不十分な提案なら税率引き上げのブラフも、日本にとって難しい円高誘導の問題>
だが、日本国内ではあまり指摘されていないが、米側は交渉相手が目立った譲歩案を示さない場合は、相互関税などを引き上げるスタンスも示しており、交渉の展開によっては、相互関税と自動車関税を50%に引き上げるという強い姿勢を示す可能性もあると予想する。
そこで、最も深刻な問題になりそうなのが、通貨安の是正の問題だ。大幅なドル安・円高水準への誘導を求められても、ベッセント財務長官が米長期金利の上昇を誘発しかねないドル売り・円買い介入の実施には反対の立場とみられ、日本側に具体的な実施手段があるのかどうか非常に難しい立場に立たされかねないからだ。
<世界が注目する赤沢・ベッセント、トランプ・メローニの関税外交>
こうした中でグローバルな金融・資本市場の関係者が注目しているのが、日米関税交渉と米伊首脳会談だ。どちらも17日にワシントンで開催される予定だが、そこで米側がどのような具体的な要求を提示し、日本とイタリアがどのように対応するのか、ということが今後の交渉のモデルケースになるからだ。
特に日本にとっては、トランプ大統領がメローニ首相にどのような要求を突き付け、どのように対応するのかが非常に参考になると考える。
<関税率の引き下げにメド付けば、マーケットは株買い優勢に ドル/円は円高進展も>
もし、日米関税交渉と米伊首脳会談が順調に進展したなら、18日の東京市場ではリスクオン心理が優勢になって日本株が大幅に上昇する展開も予想される。
ただ、ドル/円は円高誘導がテーマになっている可能性が高いため、交渉後の両国当事者の情報発信内容によっては円高が進展する可能性も相応にあると予測する。
17日の2つの外交交渉の結果が、当面のグローバルマーケットの方向性に大きな影響を与えそうだ。