忍之閻魔帳

ゲームと映画が好きなジジィの雑記帳(不定期)。
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「オールドボーイ」が繋ぐ日本と韓国の新たな関係

2004年10月26日 | 作品紹介(映画・ドラマ)

■DVD:「オールド・ボーイ スタンダード・エディション」


言い方としては気が少し早いが、今年の韓国映画は本当に凄かった。
インド、イギリス、台湾など、
特定の国の映画が一時的にブームになることは過去に何度かあったが、
今回ほど規模が大きく、かつ粒の揃ったブームは過去に類を見ない。

今回紹介する「オールドボーイ」は、昔ながらの韓国映画のテイストと、
ここ数年で急激に垢抜けた韓国映画のセンスの両方を兼ね備えた映画だ。
原作は96~98年にかけて漫画アクションで連載された土屋ガロン×嶺岸信明の同名コミック。
そう、原作は日本生まれなのだ。
この原作にいち早く目をつけ、本作の監督であるパク・チャヌクに映画化を勧めたのが
ポン・ジュノ(「殺人の追憶」の監督)であり、
この二人と情報交換し合うほど仲が良いのがキム・ジウン(「箪笥」の監督)であるという。
「殺人の追憶」も「箪笥」も、
私的には今年公開された映画の中でベストテンに入るほど好きな作品だけに、
この交友録には非常に納得させられた。
三人とも日本のホラー映画やゲーム、コミックに造詣が深いこともあり、
彼等の手掛けた作品は皆どこか日本的であり、
けれど日本では絶対に出来ないテイストを含んだ仕上がりになっている。

ストーリーは、ネタバレに抵触するので詳しくは書けないが、
倫理や法律では絶対に許されない間柄の愛が生んだ悲劇と、
純粋過ぎた故の狂気を見事に描いている。
復讐する側の執念と復讐される側の鈍感さのコントラストは、
現実世界でもよく見られる関係と言える。
「いじめ」などはその典型だ。
いじめた側は学校を卒業すると同時にそのことを忘れるが、
いじめられた側は一生忘れない。
加害者の最大の罪は、犯した罪を忘れてしまうことであり、
被害者の最大の屈辱は、加害者が自分の犯した罪を忘れてしまうことなのだ。

映像表現はこの上なくストレートで、
思わず目を背けてしまうような残虐シーンも多々登場する。
テーマといい映像といい、この映画が日本で製作されていたら、
AV女優上がりを使ってエロシーンを売りにするようなVシネマか、
残虐シーンを全て修正(またはカット)し、
肝心のテーマもぼやかした「デビルマン」のような映画になっていたと思う。
日本はコミックやアニメの世界は割と規制が緩いが、実写の邦画はまだまだ厳しい。
「バトルロワイヤル」程度で公開中止だの何だのと騒ぎ立てるレベルでは
ここまでストレートな映像化は出来なかったと思う。

日本生まれながら日本では映画化不可能、
今後はこういうパターンが増えるのかも知れない。
日本人としては残念なことではあるが、原作のイメージを粉々にされるよりは100倍マシだ。
軟派な韓流ブームに乗っかった奥様方には到底お勧め出来る代物ではないし、
「GANTZ」のような小綺麗な残虐さで喜んでいる中高生にも刺激が強すぎる。
観る人をかなり選ぶ映画ではあるが、
公式サイトやチラシを見てピンと来た人なら迷わずお勧めだ。


■DVD:「パク・チャヌク リベンジ・トリロジー (初回限定生産)」


「復習するは我にあり」「オールドボーイ」「親切なクムジャさん」の
3作をセットにした限定BOX。

★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
  タイトル:オールドボーイ
    配給:東芝エンタテイメント
   公開日:2004年11月6日
    監督:パク・チャヌク
   出演者:チェ・ミンシク、ユ・ジテ、カン・ヘジョン 他
 公式サイト:http://www.oldboy-movie.jp/
★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★★
コメント (4)
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