団地小説短編集を歩く

団地小説短編集の舞台を歩きながら団地や地域の魅力をお伝えします。

小説タウンハウス 21 呑吐ダム(堤内サイホン) 淡河川・山田川疎水(淡山疎水)11

2020-05-08 07:26:43 | 日記
 
 山田川疎水の山田川頭首工は吞吐ダムの完成と共に廃止されて

     小説タウンハウス 16 山田川頭首工跡から第四隧道 淡河川・山田川疎水(淡山疎水)7(2019.3.22)

 水は川代ダムからはるばる運ばれることになります。

     小説タウンハウス 18 川代ダム十丹波竜 淡河川・山田川疎水(淡山疎水)9(2019.8.23)

     小説タウンハウス 19 大川瀬ダム十鴨川ダム 淡河川・山田川疎水(淡山疎水)10(2019..9.20)


  

 平成3年11月13日吞吐ダムの完成に伴い山田川頭首工は廃止され、山田川疎水の水は川代ダム➡川代導水路➡大川瀬ダム➡

大川瀬導水路➡吞吐ダム堤内サイホン➡山田幹線水路と変更になりました。

       吞吐ダム

  

 市街地から近いところに本格的なダムを見ることが出来ます。下流の三津田橋からの写真になります。今はほとんど車も通りま

せんが立派な橋があります。ダムの堰堤を渡って三津田橋から戻る、ダムが一望できる周遊コースが造られたのかもしれません。

   

 上流側からの堰堤とダム湖の「つくはら(衝原)湖」です。

   

 吞吐ダムには農林水産省 近畿農政局 加古川水系広域農業水利施設総合管理所があります。一部吞吐ダムの見学会の写真を使用

していますので普段は立ち入れない場所の写真があります。

       吞吐ダムの概要図

  

       吞吐ダムの歴史探訪

 〇天満大池(大和時代後期:稲美町)吞吐ダムから給水しているため池で、兵庫県で一番古いため池。

 〇箱木千年家(室町時代前期:神戸市)吞吐ダム建設に伴い移転保存されている「日本最古の民家」

 〇山田川疎水(大正4年:三木市)江戸時代から計画された疎水で、難工事から明治時代に御坂サイフォンで有名な淡河川疎水

  へ計画が変更された。その後疎水計画が再燃し、明治44年に工事を着工して大正4年に完成した全長11㎞の用水路。吞吐

  ダム建設により改修されダムの内部をパイプラインが通り、下流に送水されている。

       吞吐ダムの諸元

    位置  兵庫県三木市志染町三津田        河川  加古川水系志染川支流山田川

       注  この看板が作られた当時はこの付近は山田川であったようです。現在は志染川に変更されています。

    形式  重力式コンクリートダム          堤高  71.5m     堤長  260m

    流域面積  直接 49.8㎢(間接 279.7㎢)    注 間接面積は川代ダム、大川瀬ダムが含まれます。

    満水面積  104.6ha

    総貯水量  18,860,000㎥   有効貯水量  17,800,000㎥   計画洪水量  925㎥/秒

    常時満水位  EL143.00m    最低水位  EL111.00m

 吞吐ダムの由来  ダム上流にあった「吞吐の滝」に由来しダム湖は現在「つくはら湖」と呼ばれています。

       集水地域

  

 集水地域は神戸電鉄の大池駅あたりまでとなります。六甲山系北側は瀬戸内型気候としては比較的多雨の地域ですが計画時

から篠山川の水が予定されていました。前掲の小説タウンハウス 16に六甲山の降水量の図があります。

  

 総合管理所には「このダムの水の多くは四十キロメートル離れた篠山川から送られてきています」の垂れ幕があります。その年

の天候により異なりますが、ダム湖の約四割の水が篠山川から送られてきています。

 自己水域(49.8㎢)から年間36,300,000㎥、川代ダム、大川瀬ダムから送られてくる30,000,000㎥の水

を貯水し農業用水、水道用水の補給をします。

   

 大川瀬導水路の出口になります。水がないとき、水があるときです。


       吞吐ダム堤内サイホン

 山田川頭首工では10月1日から5月30日までの間、1.3㎥/秒の水利使用が認めれれていました。(期間外でも水量が豊富

な時は取水が出来ました)これの補償処置として、大川瀬導水路を流れてきた水の一部は吞吐ダム堤内のサイホン(サイフォンと

表記することもありますが見学会でいただいた資料の表記のサイホンに合わせます)を通って山田幹線水路に流れて行きます。

 現在は東播用水として運用されていおり年間を通じて必要な水が供給されています。

  

 山田幹線水路堤内サイホンは当然ながら外からは見えません。

          見学会で頂いた資料です。

  

  

 山田幹線水路堤内サイホンはEL145.5mからEL123.5mまで下がってから対岸に上ります。

  

 平面図は農林水産省農政局加古川水系広域農業水利施設総合管理所の吞吐ダムのパンフレットです。


       吞吐ダム揚水機場

 日本酒ブームにより酒米「山田錦」の需要が高まり三木市周辺での水需要が増えます。これによりつくはら湖から「山田川」

の水を汲み上げることになります。

 淡河川疎水の完成後水需要の高まりにより山田川疎水事業が再興されます。当初は御坂サイフォン付近において山田川(志染

川)の水を蒸気揚水機で汲み上げる計画でしたが、設備の耐用年数と更新費用、故障のリスク、石炭の購入費と輸送コストの問題

から、江戸時代からの計画である上流から水路による引水が採用され急峻な岩山に水路を造る難工事が行われました。現在の技術

により山田川の水を汲み上げる計画が実現しました。

  

       揚水機場の必要性

 従来  酒米「山田錦」の増産等による北分地域の水不足に対応するため、北部地域と南部地域の用水再編を行います。

     大川瀬ダム掛かり末端の淡山疎水受益の一部を吞吐ダム掛かりに変更し「吞吐ダム揚水機場」を新設して、同ダムから

     揚水(補給)します。

 計画  大川瀬ダム受益の用水需要が増加したため、一部を吞吐ダムから用水供給に振り替えることで、地域の水需要に対応。

       揚水機の規模

    口径  450mm     台数  2台     吐水量  0.496㎥/秒

       揚水機場

   

   

 揚水機場には2台のポンプがあります。取水口はEL108mにありますが湖水面が高いときは揚水の高低差が少ないため並列

運転をします。湖水面が下がると揚水の高低差が大きくなるため直列運転をします。

  

 揚水機場から黒い配管で山田幹線水路堤内サイホンはまで水を送ります。

 写真の下側の屋根が半分見えている建物が吞吐ダム小水力発電発電機室です。中央幹線水路に放流する水の水圧を利用して発電

します。平成28年4月1日発電開始。最大出力275kwh 、年間計画発電量860000 kwh。


       桜並木

 国営東播用水農業水利事業は瀬戸内型気候に属し水不足に悩む東播地方における水対策として川代ダム・大川瀬ダム・吞吐ダム

を水源としてこれらのダムを水路で結び有機的に活用することにより効果を発揮するものとし、昭和45年に着工、平成4年度に

完了します。

 3つのダムはほぼ同時期に完成します。川代ダム・大川瀬ダムの見事な桜並木を紹介して、この時代のダム補償の流行ではと書

いたところでありますが今回は吞吐ダムになります。

   

 実はダム周辺にはあまり桜並木は有りません。 写真左 ダム下流右岸に桜並木がありますが忘れられた存在です。

 写真 右 総合管理所隣の神社の桜になります。

  

 ダム上流に水没した衝原集落(33戸)の集団移転のニュータウンがあり、つくはら湖と山田川(現在の行政上の呼び名は志染

川ですが旧山田村の住民にとっては受け入れ難い名称)に沿って見事な桜並木があります。

   

 つくはら湖右岸に桜並木が続きます。神出山田自転車道の一部を形成しており、自転車と歩行者のみが通れます。

   

 箱木千年家の湖側と陸側からの写真になります。

  
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