耳を洗う

世俗の汚れたことを聞いた耳を洗い清める。~『史記索隠』

この“裁判員制度”では司法の信頼は得られない!

2009-02-25 09:32:18 | Weblog
 『JANJANニュース』2月20日、山崎康彦氏の「なぜ日本には心の卑しい“ヒラメ裁判官”が大量発生するか?」と題する記事が掲載された。本ブログでもいくつかの“冤罪事件”や“中国・朝鮮人強制連行”裁判などを取りあげ、警察・検察ならびに裁判の現状に疑問を投げかけてきたが、三権分立を標榜するわが国「司法」の独立性を疑う国民は決して少なくないとみてよかろう。わが国裁判の「有罪率」が99.9%という異常な数字も一因となっている。

 司法不信に関するWebページを調べていたら、『Goodbye!よらしむべし、知らしむべからず』というページが目についた。その2007年4月14日の記事「有罪率99.9% こんな裁判所はいらない! 元凶の最高裁」には、東海テレビで放送されたある裁判官の日常を描いた『裁判長のお弁当』にふれつつ、憲法第76条3の「すべての裁判官は、その良心に従ひ独立してその職務を行ひ、この憲法および法律にのみ拘束される」という条文をあげ、現今の裁判官は最高裁の人事権に縛られ、自らの良心に従って裁判に臨む裁判官は皆無に等しいと指摘する。そして、最近の冤罪事件の頻発が、刑事裁判の迅速化を目的とした「最良証拠主義」に起因するという。

 「最良証拠主義」とはなにか。警察は最良の証拠しか検察庁へ送致せず、検察は最良の証拠しか裁判所へ提出しないこと、つまり「有罪にできる証拠」しか裁判所に提出せず、「被疑者、被告人に利益になる捜査資料」は出てこない仕組みのことだ。これが「冤罪事件」を生む大きな要因で、有罪率99.9%の元凶ともなっているという。

 この記事に寄せられたきわめて有益でわかりやすいコメント(ゆでたまごさん)を収録しておこう。

 <そうなんです。最良証拠主義はとても恐ろしい冤罪製造システムです。有罪証拠の信用性を崩す証拠のことを弾劾証拠といいますが、仮に被告人が無実の罪を着せられようとしている場合、この弾劾証拠は大変に重要な意味を持つものです。

 なんでこんなむちゃくちゃなシステムがまかりとおるかといいますと一にも二にも裁判官の人手不足、裁判所の予算不足が問題の根底にあります。そして、新刑事訴訟法による、犯罪処理ベルトコンベアー化と無理な訴訟期間の短縮。そのために、「裁判所は真実を追究するところではない」などと、庶民感覚とは程遠いことを平然と口走る異常な組織になってしまいました。もう、裁判所に“心”はないと思っていいでしょう。裁判官自身、倫理観のある方は先に退職し、新たに裁判官になるのは皆ロボットのような無感情、無表情の人間ばかりです。もう、日本の裁判所には何も期待できるものはありません。冤罪に巻き込まれたら災害に遭ったと思って自分の運命の終わりを待つしかないようです。>

 『Goodbye! よらしむべし、知らしむべからず』:http://c3plamo.slyip.com/blog/archives/2007/04/post_379.html


 このいささか過激なコメントに見られるように、わが国裁判に対する国民の信頼はきわめて厳しいものがあるが、裁判官を「ヒラメ裁判官」と呼ぶ山崎康彦氏は、わが国司法制度をわかりやすくドイツと比較してくれている。裁判官数が約8倍、行政訴訟件数(年)は176倍というそのあまりにも大きな違いに誰しも唖然とさせられるだろう。先の過激なコメントが決して過激でないことの証明になっている。

 <「なぜ日本には心の卑しい“ヒラメ裁判官”が大量に発生するか?」

 日本の裁判官の実態はほとんど隠されていて、その実態は国民に知らされていません。

 私は以前日本とドイツの裁判制度を比較した記録映画「日独裁判物語」(桐山直樹監督)の自主上映会を杉並区内で何度か開催したことがあります。

 松山大学法学部田村譲教授は日独司法制度を比較した10項目のリストを作成されていますが、私が2項目(※印)を追加して12項目のリストを作りましたので下記にお知らせします。
 この短いリストを見るだけでも、市民的自由すらも与えられない日本の裁判官は、最高裁総務局を頂点とする司法官僚に給与と昇進と転勤人事でがんじがらめに管理されていることが分かります。

 その結果、最高裁総務局の意向に沿って判決を出して出世していく心の卑しい「ヒラメ裁判官」が大量に発生するのです。
 最高裁判事の人事権は時の内閣が握っているのですから、「司法の独立」など真っ赤な嘘なのです。

 ドイツでは違憲判決がこれまで500件以上出されているのに日本ではわずか10件しかない事実は、日本の司法が時の政権を擁護・維持するための「司法」の仮面をかぶった「行政機関」に成り下がっていることを物語っています。

 基本的人権や市民的自由や団結権が与えられていない日本の裁判官に、どうして権力の横暴から国民を守ることができるでしょうか?
 今回の「裁判官制度」導入は、国民が国民に対し死刑判決を出し国家の共犯者に仕立て上げていく「平成の赤紙」であり、有無も言わさずに戦争へ動員していくための上からの「司法改革」なのです。

 いま必要な真の意味の「司法改革」とは、時の政権の政治権力や行政権力の支配を排除して、裁判官が憲法の規定に照らした純粋な法理論で国民の基本的人権や市民的自由や生活を守る「市民司法」を日本に確立することだと思います。

【日独司法制度の比較リスト】

1.違憲判決の数
  日 本=10件
  ドイツ=500件以上
2.最高裁判所の建物(※)
  日 本=窓が少なく石造りの城砦のような建物
  ドイツ=広いガラス窓の3階建て軽量建物
3.最高裁判事の出勤風景(※)
  日 本=黒塗りの公用車で警備員に敬礼されて出勤
  ドイツ=ヘルメットをかぶりスクーターを自分で運転して出勤
4.裁判官数
  日 本=2,850人
  ドイツ=22,100人
5.行政訴訟の数(年)
  日 本=1,250件
  ドイツ=22万件
6.行政訴訟上原告(市民)勝訴率
  日 本=2~3%
  ドイツ=10%以上
7.申し立て手続き
  日 本=厳格・補助無し
  ドイツ=簡易・補助あり
8.裁判官の転勤
  日 本=3年ごと
  ドイツ=なし
9.出退勤時刻の拘束
  日 本=あり
  ドイツ=なし
10.ボランティア活動
  日 本= ×
  ドイツ= ○
11.政党加盟
  日 本= ×
  ドイツ= ○
12.社会的発言
  日 本= ×
  ドイツ= ○>


 今年5月からいよいよ「裁判員制度」が発足するというが、それよりもドイツとの比較で明らかな問題の解明と是正、また先進国では米国と日本だけになった「死刑制度」の廃止、さらには国際基準に照らし捜査の可視化、代用監獄の廃止、先にあげた冤罪を生む「最良証拠主義」の見直しなど、解決すべき司法の課題は多い。三権分立をうたう憲法のもと、まずは「ヒラメ裁判官」を一掃するためにも、肝腎なところに税金をまわして裁判の公平、公正を保障する体制をつくることが先決だろう。

 「ヒラメ裁判官」:http://www.news.janjan.jp/living/0902/0902197812/1.php