Absolute ZERO

オールウェイズ低空飛行(墜落寸前)な精神状態で綴る雑多オタク(主に舞台。あとラノベとアニメと漫画とゲーム)な雑記ブログ。

「武士の家計簿」

2011-01-15 23:38:02 | 映画
実在の家計簿と人物をモデルに作られた物語。

ぶっちゃけ話は超地味です。
大事件が主軸になる訳でもなければ、
アクションがある訳でもないです。
ある一家の歴史を辿ったに過ぎないような話。
間に明治維新を挟み、時代は大きく動きますが、
あくまでも話の主軸は一家のことだけ。
一家の跡取りが嫁を迎え、跡取り息子が生まれ、
やがて父が逝き、母が逝き…
成長した息子も嫁を取り、戦で行方知れずとなり、
そして明治の世になって再び戻ってくる。
一家にとっては大きな、世間にとっては限りなく小さな変化が、
節目となって進んでいく。
でも、その一家を演じる役者さんが実に生き生きと演じ、
実にリアルに見せてくれる。
じんわり来ます。

話唐突に変わるけど、仲間幸恵、時代劇とかコメディっぽいのとか合いますね。
普通の現代物の、たとえば恋愛ドラマとかやってるときより断然いいですよ。
今やってる「美しい隣人」は見てないけど。
あれは割合合ってそうですかね?
ナチュラル系の演技じゃないからでしょうねぇ、多分。

松坂慶子の、お武家の奥らしい、
ちょっと贅沢が好きで、大らかで、愛嬌のある感じが微笑ましかったです。

なんと言っても主役の堺雅人。
派手さのない、そろばん侍としての実直な人物像がよく似合うこと!
(誉めています)
あの地味さがいい。


一番ぐっとくるのは、思いっきりネタバレですが、
誰かが亡くなる、その葬儀の夜ですよ。
嬉しい日も悲しい日も、ただひたすらに毎夜家計簿をつけるんです。
葬儀を執り行った後、家族が泣き暮れる中、
自室に1人で、葬儀の香典や出費をそろばんで弾き、帳面に筆を滑らせる。
その澱みない動きと、表情のない顔と、静けさがね…もの哀しいんですよ。
でも、幼い息子には、己の父が悲しみもせずそろばんを弾いているようにしか見えない。
どれほど幼かろうとそろばんの上でのごまかしは一切許さず、厳しく接する父の態度もあり、
父と息子はいつしかすれ違って行く。

戦で一度は行方不明になった息子が、新政府の役人になって戻った後、
老いた父を背負って、母を伴い、かつて務めた藩主の城を見せに行く。
夕刻、帰り道に歩いた河原は、かつて落ちた銭を拾った幼かった息子が、返して来いと父に頬を張られ深夜に一人歩いた場所。
そのことを父が呟けば、息子はそれに頷き、「父上に背負うてもらった記憶がない」と零す。
母はそれに驚き、少し笑みを浮かべて正す。
それは覚えていないだけ。あれほど何度もせがんで、父の背で笑っていたのに、と。
静かに瞠目する息子。
そして、近く、父も息を引き取る。
その晩、息子は一人、かつての父の、今は自分のものとなった部屋で、
葬儀の収支をそろばんで弾き、帳簿に記していく。
多分きっと、そのときには息子にもわかっていたんだと思うんですよ。
父も哀しくなかった訳がないこと。
でもそれがそろばん侍として生きる、猪山家の生き方だってこと。


余談ですが、パンフレットが面白いです。
ちょっと高めだけど、凝った作りですよ。
そろばん型ケース。ひょっとしたらリアルサイズかも?
昔のそろばんですけどね。
中から帳面の形をしたパンフが出てきます。
こういうの面白いよね。
相棒のパンフもアエラもどきで面白かったです。
洒落てて気の利いた感じが好みです。

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