夕方になって、今日はどこまで歩こうかと考えた。
アパートのある139丁目からハーレムを下って110丁目に至り、そこからセントラルパークを縦断すれば、ちょうど2時間のウオーキング・コースになる。
ただ、今日はカイロプラクティックの治療日ではないので、疲れた体を休める場所がない。
リンカーンセンターまで歩いて、今季最後の『フィガロの結婚』を観るという誘惑にも駆られたが、明日28日(金)にはカーネギーホールでベートーベンの『第九』を聴く予定だ。
さて、どうしたものかと迷っているときに、ふとヤンキー・スタジアムのことを思い出した。
確か、今日はタンパベイ・デビルレイズとの地元3戦目。
宿敵レッドソックス戦やメッツ戦のような人気カードではないから、安い当日券が手に入るかも知れない。
ヤンキー・スタジアムは、ハーレムの北端を流れるハーレム川対岸のザ・ブロンクスにある。
155丁目までのぼって、白い鉄の橋を渡れば、目の前がスタジアムだ。
1時間もあれば、ゆっくりと辿り着けるだろう。
よし、今日はウオーキングを兼ねてボールゲームを楽しもう。
今まで、あまり野球を楽しむ気分にはなれず、松井の活躍に直接触れる機会がなかったのだ。
5時に家を出た。
アダム・クレイトン・パウエル・ジュニア通り(7番街)を北上すると、ハーレム中心街の125丁目方面に南下するときとは明らかに異なる雰囲気が漂っている。
ゴミが多く、いささか荒涼とした感じである。
だが、ミネラルウオーターを買うために寄ったグロサリー(生鮮食品店)は小綺麗で、爽やかなインド系青年店主の対応ぶりを眺めていると、この一帯もずいぶんと治安が良くなったのだろうなと感じ入らされた。
とはいえ、155丁目の橋の手前は、昨秋スタジアムを見物した戻りに背後から黒人少年に理由もなく“殴り逃げ”をされた「思い出」の地である。(※2005年10月21日ブログ参照)
前後左右に目を配り、警戒怠りなくハーレム川にかかる橋を渡った。
足早に歩いたせいで、なんと30分で球場に着いた。だが、すでにかなりの人が詰めかけている。
チケット売り場に並び、「今日のゲームで一番安い席を」と告げると、なんと5ドル(約600円)でTIRE15(1塁側内野席最上階)のチケットが手に入った。
エスカレーターで最上階まであがり、まずは座席を確認する。
ヤンキー・スタジアムは外野席が少なく、数層に分けた内野席に多くの観客を収容する造りだ。
私の席は、一塁ベースを高見から真下に見下ろす位置にあり、ずいぶん得をした気分になった。
全体の雰囲気をつかんで、探検に出た。1階におり、左翼側の外野まで回って、ベーブ・ルースやディマジオなど歴代の勇士たちのプレートや永久欠番の案内板を眺める。
残念ながら、すぐ脇にあるブルペンでの投球練習は終わっており、クローザーのリベラの姿を見ることはできなかった。
ビールを買い、ロング・ホットドッグで腹ごしらえをしているうちに打撃練習が終わり、一塁ベースの後方で55番が軽くダッシュを始めた。遠目に眺める松井の姿は柔らかな印象で、どこか優しげだ。
7時5分、プレイボール。日が陰って少し寒くなってきたが、空はまだ明るい。
2番ジータがヒットで出て、3番シェフィールドがいきなりホームラン性のあたりをかっ飛ばしたが、フェンス際で捕られてしまった。
ピッチャーの調子がいいのか、バックネットや3塁側へのファウルが多く、なかなか点が入らない。打率2割5分の松井も、三振や凡退を繰り返す。
その松井の打席が、同点後の好機に巡ってきた。
不調のせいか、ジータやバーニー・ウイリアムスの打席のときのような熱い声援は飛ばない。
後ろの席の男が、私の肩を叩き「日本人だろ?松井を何とかしてくれ!」と言う。
そこで、「Come on!Matsui!(松井、頼むぞ)」と叫ぶと、強いゴロがショートとセカンドの間を縫ってセンターへ抜け、2点が入った。
場内、総立ちの大歓声。後ろの男が再び肩を叩き、私にハイタッチを求めた。
そして、席に着くと「こいつが叫んだら、松井が打っちゃったよ!」と隣席の男に笑いかけている。
どんなもんだい。
結局、松井の得点が勝負を決めた。
10時、ゲームセット。帰りの人ごみに、「Win!(勝った)」の歓声がこだまする。
地下鉄方面の道は、大混雑だ。
だが、ハーレム川を渡ってハーレムへ向かう者は、私を含めて数人にしか過ぎなかった。
途中テイクアウト専門中華レストランで、チキンライススープを買うと、中国系の娘が「ありがとう」と日本語で礼を言った。驚いて、こちらも中国語で「謝謝(シェシェ)」と返す。
このレストランのカウンターには、わがアパートの近所のレストランのような防弾ガラスもなく、清潔で明るい雰囲気が印象的だった。
ハーレム再開発の余波は、こんなところにも及んでいるようだ。
さて、家に戻ったらビールで改めて乾杯することとしよう。
アパートのある139丁目からハーレムを下って110丁目に至り、そこからセントラルパークを縦断すれば、ちょうど2時間のウオーキング・コースになる。
ただ、今日はカイロプラクティックの治療日ではないので、疲れた体を休める場所がない。
リンカーンセンターまで歩いて、今季最後の『フィガロの結婚』を観るという誘惑にも駆られたが、明日28日(金)にはカーネギーホールでベートーベンの『第九』を聴く予定だ。
さて、どうしたものかと迷っているときに、ふとヤンキー・スタジアムのことを思い出した。
確か、今日はタンパベイ・デビルレイズとの地元3戦目。
宿敵レッドソックス戦やメッツ戦のような人気カードではないから、安い当日券が手に入るかも知れない。
ヤンキー・スタジアムは、ハーレムの北端を流れるハーレム川対岸のザ・ブロンクスにある。
155丁目までのぼって、白い鉄の橋を渡れば、目の前がスタジアムだ。
1時間もあれば、ゆっくりと辿り着けるだろう。
よし、今日はウオーキングを兼ねてボールゲームを楽しもう。
今まで、あまり野球を楽しむ気分にはなれず、松井の活躍に直接触れる機会がなかったのだ。
5時に家を出た。
アダム・クレイトン・パウエル・ジュニア通り(7番街)を北上すると、ハーレム中心街の125丁目方面に南下するときとは明らかに異なる雰囲気が漂っている。
ゴミが多く、いささか荒涼とした感じである。
だが、ミネラルウオーターを買うために寄ったグロサリー(生鮮食品店)は小綺麗で、爽やかなインド系青年店主の対応ぶりを眺めていると、この一帯もずいぶんと治安が良くなったのだろうなと感じ入らされた。
とはいえ、155丁目の橋の手前は、昨秋スタジアムを見物した戻りに背後から黒人少年に理由もなく“殴り逃げ”をされた「思い出」の地である。(※2005年10月21日ブログ参照)
前後左右に目を配り、警戒怠りなくハーレム川にかかる橋を渡った。
足早に歩いたせいで、なんと30分で球場に着いた。だが、すでにかなりの人が詰めかけている。
チケット売り場に並び、「今日のゲームで一番安い席を」と告げると、なんと5ドル(約600円)でTIRE15(1塁側内野席最上階)のチケットが手に入った。
エスカレーターで最上階まであがり、まずは座席を確認する。
ヤンキー・スタジアムは外野席が少なく、数層に分けた内野席に多くの観客を収容する造りだ。
私の席は、一塁ベースを高見から真下に見下ろす位置にあり、ずいぶん得をした気分になった。
全体の雰囲気をつかんで、探検に出た。1階におり、左翼側の外野まで回って、ベーブ・ルースやディマジオなど歴代の勇士たちのプレートや永久欠番の案内板を眺める。
残念ながら、すぐ脇にあるブルペンでの投球練習は終わっており、クローザーのリベラの姿を見ることはできなかった。
ビールを買い、ロング・ホットドッグで腹ごしらえをしているうちに打撃練習が終わり、一塁ベースの後方で55番が軽くダッシュを始めた。遠目に眺める松井の姿は柔らかな印象で、どこか優しげだ。
7時5分、プレイボール。日が陰って少し寒くなってきたが、空はまだ明るい。
2番ジータがヒットで出て、3番シェフィールドがいきなりホームラン性のあたりをかっ飛ばしたが、フェンス際で捕られてしまった。
ピッチャーの調子がいいのか、バックネットや3塁側へのファウルが多く、なかなか点が入らない。打率2割5分の松井も、三振や凡退を繰り返す。
その松井の打席が、同点後の好機に巡ってきた。
不調のせいか、ジータやバーニー・ウイリアムスの打席のときのような熱い声援は飛ばない。
後ろの席の男が、私の肩を叩き「日本人だろ?松井を何とかしてくれ!」と言う。
そこで、「Come on!Matsui!(松井、頼むぞ)」と叫ぶと、強いゴロがショートとセカンドの間を縫ってセンターへ抜け、2点が入った。
場内、総立ちの大歓声。後ろの男が再び肩を叩き、私にハイタッチを求めた。
そして、席に着くと「こいつが叫んだら、松井が打っちゃったよ!」と隣席の男に笑いかけている。
どんなもんだい。
結局、松井の得点が勝負を決めた。
10時、ゲームセット。帰りの人ごみに、「Win!(勝った)」の歓声がこだまする。
地下鉄方面の道は、大混雑だ。
だが、ハーレム川を渡ってハーレムへ向かう者は、私を含めて数人にしか過ぎなかった。
途中テイクアウト専門中華レストランで、チキンライススープを買うと、中国系の娘が「ありがとう」と日本語で礼を言った。驚いて、こちらも中国語で「謝謝(シェシェ)」と返す。
このレストランのカウンターには、わがアパートの近所のレストランのような防弾ガラスもなく、清潔で明るい雰囲気が印象的だった。
ハーレム再開発の余波は、こんなところにも及んでいるようだ。
さて、家に戻ったらビールで改めて乾杯することとしよう。