【タイ山岳民族の村に暮らす】

チェンマイ南西200キロ。オムコイの地でカレン族の嫁と綴る“泣き笑い異文化体験記”

【90日間ヴィザ取得】

2009年03月04日 | アジア回帰
 今朝6時半に目覚め、近くの公園でウオーキングを楽しんだ。

 グッティオ屋を始めてから、なぜか腰の痛みが再発した。

 その調整を兼ねて、軽い体操を混ぜながらのエクササイズである。

 市場で、みかんとナムトーフ(豆乳)をあがない、朝食代わりにした。

      *

 8時半、イミグレーションへ。

 今日こそは、ヴィザ騒動に決着をつけたい。

 銀行の残高証明書が2週間前のものだったので気になったが、バンコク銀行のセンタン(セントラルデパート)支店は、10時開店だ。

 その前に、とりあえず7日間の延長手続きを済ませる腹積もりだ。

 すでに、20人ほどが窓口に並んでいる。

「リタイアメント」と書かれた2番窓口に顔を突っ込むと、なんと、先日「ビエンチャンに行くしかない」と言った若い係官が応対に出た。

 また間違われると困るので、一昨日に女性のボスが書いてくれた英文のメモをパスポートにはさんで差し出すと、それをちらっと見て、

「あなたには二つのステップが必要です。まずは、1番窓口で7日間の滞在延長手続きをしてください。それが済んだら、今度は3番窓口で“ヴィザ替え”の手続きをしてください。そうすれば、90日間のヴィザが出て、その2ヶ月後以降に1年ヴィザへの延長手続きができることになります」

「バカヤロー!じゃあ、なんでこの間は“ビエンチャンに行くしかない”なんて抜かしたんだ!」

 そう怒鳴りつけたいところだったが、私もそれほど青くはない。

 ここは耐え難きを耐え、忍びがたきを忍び、まずは90日ヴィザを取得し、その暁の反撃を画策するのが大人の喧嘩というものだろう。

       *

 7日間の延長手続きは、あっけなく終わった。

 ただ、その料金が1,900バーツと聞いて、再び頭に血が昇りかけた。

 “ヴィザ替え”には、さらに2,000バーツが必要だから、合計3,900バーツの出費である。

 これに、キャンセルしたチェンマイ~バンコク便の出費やもろもろの精神的、肉体的負担を考えると・・・この若造め、やっぱり許せん!

 とっさに、にっくき若い係官を目で追おうとした途端、マイクで私の名前が呼ばれるではないか。

 見ると、別の係官がニコニコしながら手招きをしている。

 事務所内に入ると、紳士的な態度で私の書類をチェックし、「この残高証明書は2週間前のものなので、今日改めて取り直しに行ってくださいませんか?」

「あ、やっぱり駄目か・・・」
 
 出ばなをくじかれた私は、そそくさと事務所をあとにし、ソンテオを拾ってバンコク銀行支店のあるセンタンへ向かったのである。

       *

 銀行では、30分待たされた。

 その間に夏用のズボンを買い、ラーのために日本語教本をあがなった。

 再びイミグレに戻ると、すでに正午近くである。

 窓口は、すでに“昼飯モード”に入っている。

 順番待ちノートに名前を記入し、敷地内の食堂でカオパッカイ(鳥肉焼き飯)を注文した。

 そこへ、それまでに何度も顔を合わせていた男のイミグレ係官がやってきて向かいの席に座り、片言の日本語で語りかけてきた。

「リタイアメントは日本語で何と言いますか?エクステンション(延長)は、日本語で何と言いますか?日本人から、いつも質問されるんだけど、とてもむつかしいです。もっともっと日本語勉強したいけど、ほんとうにむつかしくて困っています。とくに、漢字がむつかしいね・・・」

「まあ、漢字は日本人にとってもとても難しいんだけど・・・。でも、あなたの日本語はそれほど悪くありませんよ。どこで勉強したんですか?」

「・・・ドクガク?自分で本買って、勉強しました」

「それは、すごい!」

「5年前に勉強したときは、もっとよく喋れました。でも、日本語使う仕事につけなかったから、ほとんど忘れました。イミグレで働き始めて、まだ1週間。だから、毎日日本人からの質問、頭が痛いです」
        *

 その後、彼は自分の妻が教師をしていて、かつてはオムコイの学校で働いていたこと。今もオムコイと同様に山岳地の学校に単身赴任しているので、とても寂しいこと。幼い子どもがふたりいて、その世話に日々追われていること。妻の影響でカレン語の勉強もしたことがあること、などを問わず語りに語り続けた。

「日本にも、ぜひ一度行ってみたいです。でも、物価が高いでしょう?今年は、オーストラリアに行きます。オーストラリアは、物価がそれほど高くないからね。でも、いつかはきっと日本に遊びに行くつもりです」

 そして、彼は私に自分の携帯電話の番号を教えてくれ、

「困ったことや分からないことがあったら、いつでも相談してください」

 にっこりと笑って、席を立っていった。

        *

 うーむ。

 まだ就業1週間とはいえ、悪評高いイミグレにもいい奴がいるんだなあ。

 私は、さっき感じた一瞬の怒りもすっかり忘れて、丸っこい肩をした彼の後ろ姿を眺めやった。

 彼らも、毎日毎日雲霞のごとく押しかける外国人たちとの対応にすっかり疲れ切っているんだろう。

 中には英語もしゃべれず、意思の疎通ができない外国人も珍しくないという。

         *

 心なごむ昼休みを過ごした私は、再び混み合い始めた待合室で静かに本を読み始めた。

 20分ほどで事務所に迎え入れられ、一昨日に的確な指示を出してくれた女性係員がてきぱきと事務処理を行ってくれた。

 手数料の2,000バーツを支払うと、「これで手続きは終了です。上司の決裁が済むまで、もうしばらく待合室でお待ちください」

 5分ほど待つと、再びこの女性係官に事務所に呼ばれた。

「このとおり、あなたのパスポートには90日間の滞在許可スタンプが押されました。今日から2ヶ月以上経ったら、再びここで滞在延長の手続きをしてください。そうすると、あなたは今日から1年間タイに滞在することができるようになります。そのときにも、今日と同じく銀行の残高証明書が必要なので、決して忘れないよう気をつけてくださいね」

 この係官の対応も、きわめて快いものだった。

 その背後には、あの若い係官の姿が見えたが、もう何も言う気はなくなっていた。

 もとはといえば、ノーヴィザで入った直後にイミグレで1年ヴィザに関する確認をしなかった私が迂闊だったのである。

 たとえ、若い係官に間違いがあったとしても、その背後には電話番号を教えてくれた心優しい同僚や、この女性係官のようなしっかりした上司がいる。

 イミグレ発行のリーフレットをよくよく眺めてみれば、「不都合があった場合」として、相談窓口となる上部機関の電話番号も記載されている。

 タイという国は、私が思っている以上に懐が深いのかもしれない。

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