ようやく、300枚を超える原稿が書き上がった。
あとは、最後にもう一度目を通して、約束の明日、友人の編集者にデータ送信すればいい。
そのあとも、何らかの形で日の目を見るまでにはまだまだ長い道のりが待っているのだけれど、ともかく、明日にはいったん自分の手元を離れると思うと、心は軽い。
手帳をめくってみると、本格的に原稿を書き始めたのは昨年12月半ばである。
ちょうど、麺屋の開店から1ヶ月後だから、ここまで4ヶ月以上かかったことになる。
物語の始まりは、3年前にさかのぼる。
従って、大仰な宣伝風にいえば「取材・構想実に3年!」ということになる。
その前段階も含めれば、6年近くの時間が必要だった。
それにしても、開店準備やどんぶり洗いのかたわらで、しかもしょっちゅう誰かさんによる妨害が入る中で、よくもまあ集中力が持続できたものだ。
3月に近づくと気温は30度を超えだしたし、4月に入ってナームトック支店を開設してからは、ほぼひとりで店を切り盛りしながら合間に書き続けてきたのだから、私の脳味噌もかなりタイ向けになってきたといえる。
最後の2週間は、家出をしながら、その原因となった誰かさんや村の暮らしについて書き綴るという皮肉な結末になってしまったけれど、その苦境も友人編集者の励ましのおかげで、なんとか乗り切ることができた。
本の成否だけを考えれば、ラストスパートの時期に重なった今回の家出はきわめて有効に左右したということができるだろう。
*
ところで、私の家出もそろそろ2週間を過ぎた。
ひとまず原稿を書き終えたのだから、そろそろ身の処し方を考えねばなるまい。
誰かさんはしきりに「戻ってほしい」と言ってくるのだけれど、正直まだその気にはなれない。
すぐに次のテーマに取りかかるという道もあるが、それをやるには、また数ヶ月がかかる。
さて。
*
行動を起こす前には、まず現状分析が必要だろう。
私たちの日々の暮らしは、「ムエタイvs柔道」による異種格闘技戦に近い。
柔道家の私は、黒帯一本だけを腰に巻いて、オムコイという名のリングの上にあがった。すべてを捨てて、丸裸である。
かたわらには、支えてくれるセコンドもトレーナーもおらず、声援してくれる日本人などひとりもいない。
孤立無縁である。
典型的な、適地での闘いである。
ルールも、敵側に圧倒的に有利だ。
現地のガキ大将である相手は、金的攻撃以外何でもあり。
こちらは投げ技のみ。締めや関節技は使えない。
ところが、熱くなると相手は平気で金的に蹴りを入れてくる。
レフリーの声などには、耳を貸さない。
こっちが悶絶すると泣きながら「悪かった、もうしない」と約束するのだが、それが何度も何度も繰り返される。
悪気はなさそうなのだが、すぐに忘れてしまうようである。
たまらず、こちらはリングから転がり落ちる。
観客の中には同情してくれる者もいるようだが、こちらの気持ちを彼らに伝えるほどの会話力はない。
下手をすれば、殺気立っている彼らにも誤解されかねない。
そこで、異邦人の柔道家は身を守るためにすみやかに会場から飛び出して行き、某所に身を潜めるのだった。
*
うーん、なんだか訳のわからん例えになってしまったが、体験者にはなんとなく分かってもらえるのではないかと言う気がしないでもない。
ここまで書いたところで、激しい天気雨が降り出した。
何度か、停電になるほどの激しさだ。
雨なんぞ、実に久しぶりだ。
ふと、庭に放置したままの丸太の柱が気にかかる。
あ、そうか、ここはチェンマイだった。
呆れたムエタイ戦士は、ここにはいない。
☆応援クリックを、よろしく。
あとは、最後にもう一度目を通して、約束の明日、友人の編集者にデータ送信すればいい。
そのあとも、何らかの形で日の目を見るまでにはまだまだ長い道のりが待っているのだけれど、ともかく、明日にはいったん自分の手元を離れると思うと、心は軽い。
手帳をめくってみると、本格的に原稿を書き始めたのは昨年12月半ばである。
ちょうど、麺屋の開店から1ヶ月後だから、ここまで4ヶ月以上かかったことになる。
物語の始まりは、3年前にさかのぼる。
従って、大仰な宣伝風にいえば「取材・構想実に3年!」ということになる。
その前段階も含めれば、6年近くの時間が必要だった。
それにしても、開店準備やどんぶり洗いのかたわらで、しかもしょっちゅう誰かさんによる妨害が入る中で、よくもまあ集中力が持続できたものだ。
3月に近づくと気温は30度を超えだしたし、4月に入ってナームトック支店を開設してからは、ほぼひとりで店を切り盛りしながら合間に書き続けてきたのだから、私の脳味噌もかなりタイ向けになってきたといえる。
最後の2週間は、家出をしながら、その原因となった誰かさんや村の暮らしについて書き綴るという皮肉な結末になってしまったけれど、その苦境も友人編集者の励ましのおかげで、なんとか乗り切ることができた。
本の成否だけを考えれば、ラストスパートの時期に重なった今回の家出はきわめて有効に左右したということができるだろう。
*
ところで、私の家出もそろそろ2週間を過ぎた。
ひとまず原稿を書き終えたのだから、そろそろ身の処し方を考えねばなるまい。
誰かさんはしきりに「戻ってほしい」と言ってくるのだけれど、正直まだその気にはなれない。
すぐに次のテーマに取りかかるという道もあるが、それをやるには、また数ヶ月がかかる。
さて。
*
行動を起こす前には、まず現状分析が必要だろう。
私たちの日々の暮らしは、「ムエタイvs柔道」による異種格闘技戦に近い。
柔道家の私は、黒帯一本だけを腰に巻いて、オムコイという名のリングの上にあがった。すべてを捨てて、丸裸である。
かたわらには、支えてくれるセコンドもトレーナーもおらず、声援してくれる日本人などひとりもいない。
孤立無縁である。
典型的な、適地での闘いである。
ルールも、敵側に圧倒的に有利だ。
現地のガキ大将である相手は、金的攻撃以外何でもあり。
こちらは投げ技のみ。締めや関節技は使えない。
ところが、熱くなると相手は平気で金的に蹴りを入れてくる。
レフリーの声などには、耳を貸さない。
こっちが悶絶すると泣きながら「悪かった、もうしない」と約束するのだが、それが何度も何度も繰り返される。
悪気はなさそうなのだが、すぐに忘れてしまうようである。
たまらず、こちらはリングから転がり落ちる。
観客の中には同情してくれる者もいるようだが、こちらの気持ちを彼らに伝えるほどの会話力はない。
下手をすれば、殺気立っている彼らにも誤解されかねない。
そこで、異邦人の柔道家は身を守るためにすみやかに会場から飛び出して行き、某所に身を潜めるのだった。
*
うーん、なんだか訳のわからん例えになってしまったが、体験者にはなんとなく分かってもらえるのではないかと言う気がしないでもない。
ここまで書いたところで、激しい天気雨が降り出した。
何度か、停電になるほどの激しさだ。
雨なんぞ、実に久しぶりだ。
ふと、庭に放置したままの丸太の柱が気にかかる。
あ、そうか、ここはチェンマイだった。
呆れたムエタイ戦士は、ここにはいない。
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文章がうまいなあーーといつも関心してます。
私はバンコクの北パトゥムタニに住んで5年と6ヶ月になります。
年は今年で59になってしまいました。
妻はタイ人ですので、言われてる事は全て(勝手に全てと思ってるだけ)
「ウンウン」とうなずいてしまいます。
色々ありますが今は家庭内別居状態。
妻曰く「友達と住んでると思ってる」らしいです。
もう何でも良いわ、こっちも気楽になったでーー気分。
いっそ分かれてやり直すか、と思ったりもするのですが
娘がいますのでなかなか思いきれない。
棺桶までのカゥントダゥンに入ってる私は少し焦り気味で
だんだん気が短くなってきてます。
昔はこうじゃなかったんだけどなあーー。
毎日読んでますよ。
頑張ってください。
しばらく仕事で悩み事が多く、コメントは控えておりましたが、ブログは毎日楽しく拝見しておりまたヨ。
去年とは見違えるほどのブログ更新率に驚きです。(爆)
書き物のほうも一段落ついたようです
ね。
で、そろそろオムコイに戻られた方がよいように思っております。
おせっかいですみません。そういう性格でして...(結構これが私の欠点でして)
お気を悪くされたかもしれませんが、クンター様はオムコイの生活を愛していると思います。そしてラー様も...
日本はそろそろ春ですよ~。
初めまして。やっぱり、分かってくださる方がいらっしゃったんですねえ。援軍、ここにあり(笑)。あんまりお元気がないようですが、お互いに頑張りましょう。
*
案山子さん
お久しぶりです。仕事上の悩みにかかわらず、お気遣いいただきありがとうございます。私も、そろそろなんとかせねばと思っているところなんですが・・・。