白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

軽さと重さ

2016年04月29日 23時59分59秒 | 仕事・指導碁・講座
皆様こんばんは。
当ブログを大橋拓文六段が紹介してくれたようですね。
大橋君は独特の(異次元?)碁を打つ印象があります。
最近ブログで対局の解説を続けているようなので、そちらもぜひご覧ください。

さて、本日は五反田での指導碁での一場面を取り上げます。
テーマは「石の重さと軽さ」です。
よくプロは石が軽いとか重いと言いますが、これはアマの最も苦手とする概念だと思います。
一言で言えば沢山道がある中から好きな道を選べるのが軽い石です。
逆に限られた道しかなく、気に入らなくてもそこを通るしかない・・・それが重い石です。
碁は自由に打てるゲームですから、それが出来ないのは大変不利な事です。

ではどうすれば自分の石を軽く、相手の石を重く出来るのか?
それはなかなか難問です。
まずは軽さと重さの概念を理解する所から始めましょう。
今回のテーマはその点では単純です。
石を助ける道と捨てる道があり、両方選べたら軽い石、助ける道しか選べなかったら重い石です。
実際に見ていきましょう。



2子局です。
白△とコウを取りました。
黒は傷が多いので守る必要がありますが、どうしますか?




実戦は黒1と守りました。
白2~6と進んでみると、白A~記号順にEまでの切断が気になります。




そこで黒1と当てながら切断を防ぎましたが、白△は「軽い」石なので無視して白2と押しました。




黒1と2子を取れば白2と打って外回りに石をつなげておきます。
なぜ取られた2子は「軽」かったのか?
それは黒Aの存在です。
必要のない所に石があるというのは、結果的にパスしたのと同じです。
相手に1回パスさせたと思えば、地に換算して数目の石ぐらい捨てても良いと思いませんか?




実戦は黒も2子を取らず、隅を守りましたが白4となって大きな白勢力が出現してしまいました。
左辺一帯の黒地は20目ぐらいありますが、黒石の数で割ると・・・かなり効率が悪いですね。



これまでの失敗は白に2子つなぐ手を省略されて、一手稼がれたのが原因です。
ということで正解は黒1の当てです。
まだ黒Aと守ってもらっていないので、今なら2子助けておきたくなるでしょう。
この瞬間、白2子は「重い」石になっているのです。



白が2子助けたのに合わせて自分も守る、これが石の軽さと重さを考えたリズムです。
白4なら黒5とノビて黒は良い形で中央に出られます。
対して白は団子石でダメも詰まっているので黒Aと切られると苦しい形です。
これだけ大きい石を捨てる選択肢はありませんから、「重い」石です。
それを守れば黒Bなどのハサミに回って主導権を握れるでしょう。




白4と当ててきたら、慌ててつないではいけません。
この黒1は取られても困ることがありませんから、「軽い」石です。
黒5、7と封鎖を避けて進出します。
実戦と違って白石を真っ二つに裂いている感じがしませんか?


石の軽さ重さの概念は言葉にするのが非常に難しいです。
どうしたらご理解頂けるか、日々苦心しているところです。
今回の記事がご理解の助けになれば幸いです。