白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
ブログ移転しました→https://note.com/shiraishi_igo

囲碁の才能

2019年02月26日 23時59分59秒 | 囲碁について(文章中心)
<本日の一言>
花粉症が酷くなり始めました。
目、鼻、喉と全部ダメです・・・。
花粉症を完治させる薬があったら、全財産出しても買いたいぐらいです(笑)。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
本日は才能についてお話ししたいと思います。

囲碁の才能には様々な種類があると考えられますが、私は主に3つに注目します。
それは「センス」「理解力・吸収力」「集中力」です。
4つじゃないかと言われそうですね(笑)。
理解力と吸収力に関しては近い分野であると考えているということです。

「センス」の意味を一言で表すことは難しいのですが、「直感で答えを出す力」と言えば比較的近いでしょうか。
普通の人が、ああでもない、こうでもないと一生懸命に考えるような場面でも、センスのある人はパッとそれらしき所に石がいきます。
あるいは、普通の人がどれだけ考えても思い付かないような所でも、センスのある人は真っ先に目が向くいくという場合もあります。
一般的には、センスは後天的に磨くことができますが、天才に関してはその限りではないと思います。
常識レベルを超えた発想は、持って生まれた才能によってもたらされると考えます。

「理解力・吸収力」とは、学んだことを身に付ける能力ですね。
例えば、囲碁のルールを教わってすぐに、終局までスムーズにこなせるようになる人がいます。
あるいは、新しい考え方を知り、すぐに実践できるようになる人もいるでしょう。
また、生き死にの形をあっという間に覚えてしまう人もいるでしょう。

「集中力」も大切です。
人間、ぼんやりとした頭で考えたことなど、何も覚えていないものです。
集中力次第で、学習効率は何倍も変わってくるでしょう。
もちろん、学習だけでなく、その場で答えを出せるかどうかにも大きく関わります。
次の1手を決めるのに30分、1時間考えなければならない場面だってありますからね。

人の才能を計る際には、主にこういったところを見ます。
その時点での棋力は、必ずしも重要ではありません。
棋力そのものは、それまでの勉強量や環境次第というところも大きいですからね。

プロになるような人は、程度の差こそあれ、全てを備えているものです。
ただし、理解力・吸収力と集中力に関しては、心身の成長度合いとも大きく関わってきます。
早い話、5歳の子が1時間勉強するのと、10歳の子が1時間勉強するのでは、成果が何倍も違ってくるということですね。
ですから、私のように9歳で囲碁を覚えた人間でも、なんとかプロになれたわけです。

ところが、世の中にはとんでもない天才がいるもので、その代表が仲邑菫新初段です。
5歳の時、既に毎日集中して7時間勉強に取り組んでいたとか・・・。
普通のプロは4歳や5歳で碁を覚えたとしても、最初はただ遊んでいるだけで、本格的に取り組むようになるのは7歳とか9歳になってのことです。
大袈裟に言えば、幼少期の数年はあっても無くても大きくは変わらなかったということになります。
ところが、彼女の場合はその数年が丸々アドバンテージになってしまったのですね・・・。

ところで、山下敬吾九段や井山裕太五冠も、幼くして頭角を現していましたが、彼らよりも仲邑新初段の方が成長スピードが速いです。
では仲邑新初段の方が才能が上かと言えば、それは分かりません。
なにしろ、全員大天才ですからね。
少なくとも、それほど大きな差があるとは考えにくいでしょう。
では何が違うかと言えば、始めた年齢と環境です。
仲邑新初段の碁を始めた年齢は他の2人より早く、そして囲碁の入門法、上達法は昔より進歩しています。
その結果、歴史上例を見ないほどのスピードで成長したのでしょう。
そう考えると、同時に入段する上野梨紗新初段や福岡航太朗新初段らも、色々な記録を塗り替えていく可能性は十分にあると思います。

ただ、これはごく一部の例外の話です。
プロとして活躍するためにはなるべく早く覚えた方が良いのは確かでしょうが、それは多くの人に当てはまるものではないと思います。
多くの人は、3歳かそこらで囲碁をスムーズに覚えることはできませんからね。
難しくて嫌になったり、年上に勝てなくて嫌になったり、そして最終的には囲碁自体が嫌いになってしまうリスクが大きいです。
ですから、無理に教えるようなことは避けなければいけません。
まだ理解力や集中力が足りないなら、それが身に付くまで待てば良いのです。

囲碁の世界は英才教育志向が進んできており、今後もその流れは続くと思います。
ただ、棋力が高ければ囲碁を楽しめるというものではありません。
囲碁があくまでゲームであることは、忘れないように気を付けたいですね。
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