白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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永代塾囲碁サロンについて・その1「共同経営者になった経緯」

2020年07月30日 22時29分53秒 | 永代塾囲碁サロン

皆様こんばんは。
既にお知らせしている通り、7月から永代塾囲碁サロンの共同経営者になっています。
8月からは料金なども刷新されるということもあり、このタイミングで改めてご説明したいと思います。
まずは私が共同経営者になった経緯からお話しします。

そもそもの始まりは、2016年1月27日まで遡ります。
中国出身プロである樊麾二段が、AlphaGoなるAI囲碁ソフトに負けたという衝撃のニュースがありました。
その棋譜を見て、遠からず人間がAIに勝てなくなることを確信しました。

そしてそれから1か月半、樊二段との五番勝負から数えるなら約5か月。
Alphagoは、当時人類最強クラスだった李世ドル九段を4対1で破ってしまいました。
このニュースにも囲碁界は震撼しました。
既にプロレベルに達していたAIが、たった5か月でここまで進化するとは・・・。

それまでの棋士生活でも苦労が多く、将来についても思い悩んできたものですが、28か9の頃には囲碁で生きていくしかないと結論付けていました。
しかし、AlphaGoの台頭を見て、これは大変なことになったと思いました。
どう考えても、自分はあと10年程度しか生きていけそうにありません。
李九段が負けてから1週間か2週間後には指導碁用に五反田の部屋を契約し、ほどなくしてこのブログも開設しました。
商売などしたこともなかったのに、我ながら思い切ったものです。

五反田自体は商売としては成功していませんでした。
ただ、様々なお客様との出会いがあり、経験も積むことができました。
なにより、本の出版につながったことが大きかったですね。
活動の幅が広がり、少なくとも10年は寿命が延びたと思っていました。



これが昨年までの話です。
ところが、ここにきて新型コロナウイルスという、想定外の脅威が襲いかかってきました。
棋士の世界では多くの対局が中止や延期、あるいは形式の変更を余儀なくされています。
アマチュア向けのイベント等も同様で、やはり棋士としても大きな打撃を受けています。
そして、教室や囲碁会も運営が難しくなっていますし、そもそも会場となる碁会所・囲碁サロンが休止や閉鎖に追い込まれています。

これまでも、バブル崩壊以降の不況や趣味の多様化、日本棋院や棋士の努力不足などにより囲碁人口は減少してきました。
しかし、囲碁を打つこと自体が制限されてしまうということは、これまでにない緊急事態と言えます。
他の業界と比べてどうかは分かりませんが、少なくとも囲碁人口は今までに無いスピードで減少する危険があります。
個人的にも、将来が全く見えなくなりました。

そんなとき、20数年来の友人である永代和盛さんから思わぬ提案がありました。
「You、碁会所やっちゃいなよ!」と(意訳)。
私が教室移転のための契約をした直後とも知らずに・・・(笑)。
それはともかくとして、流石に迷いもありましたが受けることにしました。

最も大きな理由は、やはり碁会所・囲碁サロンが次々に閉鎖されている状況です。
囲碁が打てなくなる人、始められなくなる人が増えることが想定されますが、私が経営者として加わることで、その受け皿を作りやすくなると考えました。
もう1つの理由としては、自分自身で仕事を生み出せることに魅力を感じています。
毎月安定した給料を貰える身分ではない以上、ただ仕事が来るのを待っているという状態には大きなリスクがあります。
五反田もそれが理由で始めました。
まずは小さく始めて、ゆくゆくは囲碁サロンを開いて・・・という構想を持っていたのです。
五反田がまだまだの段階で永代塾囲碁サロンの話がくることは想定外でしたが、考えてみればこれ以上のタイミングはありません。
後は覚悟を決めるだけでした。



以上、私が共同経営者になった経緯でした。
次回はサロンの料金やシステムについてお話ししたいと思います。