白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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杉内寿子八段-加藤啓子六段戦

2019年02月07日 23時57分02秒 | 囲碁界ニュース等
<本日の一言>
本日は有楽町囲碁センターにて指導碁を行いました。
お越し頂いた皆様、ありがとうございました。
家を出る際にスマホを忘れてしまい、行き帰りや休憩時間は久しぶりに読書をしていました。
「うつ病九段」良いですね。
</本日の一言>

皆様こんばんは。
木曜日は日本棋院棋士の公式対局日です。
本日も名人戦リーグの井山裕太棋聖-芝野虎丸七段戦(解説付き)をはじめとした、多くの対局が中継されました。

しかし、皆様ご存知のように私は杉内ファンなので、本日は杉内寿子八段と加藤啓子六段の対局をご紹介したいと思います。
加藤啓子六段は、女流棋士としては4人しかいない「一般枠」で入段した棋士です。
先週杉内八段が対局した謝依旻六段もそうですね。



1図(実戦)
杉内八段の黒番です。
この場面、棋士は何も考えなければ必ず黒Aと伸びるでしょう。
それが「普通」の手です。
囲碁における普通とは、そう打っておけば間違いないということです。
点数で言えば、100点満点中85点以上、というのが私のイメージですね。

そして、この黒Aに関しては悪くても90点は貰えそうですし、もちろん100点の可能性もあるでしょう。
にもかかわらず、杉内八段は黒△と打ちました。
一手もおろそかにせず、最善を求める姿勢がよく表れていると思います。





2図(実戦)
上辺黒が弱い状況で、黒Aと打てば逃げ足は速いですが、黒1、3と打ちました。
白地を減らして頑張った、とみるのが一般的でしょうか。
しかし、実のところ杉内八段は白×への攻めも視野に入れていたのではないでしょうか。
厚みに見えますが、まだ1眼しかありません。





3図(実戦)
白△の強手に対し、黒1、3と変わり身の術!
格好良いですね!





4図(実戦)
その後、黒△の切りに回りました。
ついに白×への攻めが現実のものとなっています。
もちろん取れはしませんが、いじめて得を図るつもりですね。





5図(実戦)
形勢不利の白が必死に頑張っています。
白△に対して黒Aとつなげば、白Bから黒地を減らすつもりでしょうが・・・。





6図(実戦)
黒1、3と打ち、皆取り作戦決行!
杉内八段は、最強手を迷わず打ちますね・・・。
結果は見事に仕留め、黒中押し勝ちとなりました。


杉内八段は本局に勝ったことで、女流本因坊戦本戦入りが決まりました。
今年の成績は、おそらく3勝1敗になったと思います。

ちなみに、ご主人の杉内雅男九段が最後に勝ち越したのは2010年、89歳から90歳にかけてのシーズンのようです(9勝7敗)。
今の杉内八段の調子からすれば、その記録を超えてもおかしくないと思います。
今年の囲碁界は楽しみが多いですね。