白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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利かしか味消しか

2018年05月26日 23時12分31秒 | AI囲碁全般
皆様こんばんは。
本日は幽玄の間で行われている、棋士とAQの練習対局をご紹介しましょう。
5月22日、項羽(ハンドルネーム)プロの黒番です。



1図(テーマ図)
黒△と打ち、左上隅を守った場面です。
黒の構えにはやや隙があるので、多くのプロは・・・。





2図(変化図)
このような図を思い描くでしょう。
今すぐには上手くいかないとしても、将来の狙いとして残しておきたいと考えます。





3図(実戦)
ところが、実戦はあっさりと形を決めてしまいました。
白はこれを利かし(打ち得)と判断しているわけですが・・・。
黒の形が良くなっており、普通のプロの第一印象(美的感覚に近いものです)からすれば、白は随分もったいないことをした(味消し)ように感じるでしょう。
ただ、冷静に判断をしてみると・・・。





4図(変化図)
手順を変えて、1図からこのように打ったと考えてみましょう。
白1~黒4の交換は外側のプラスが大きく、白が得しているでしょう。
ここから白Aと黒Bを交換したのは悪手ですが、差し引きで考えると白が悪くないように思えてきます。

人間なら気分的に打ちたくない手でも、AIは平気で打てます。
人間の中では極めてタブーの少ない打ち手だった呉清源九段も、この打ち方には賛意を示すのではないでしょうか。