白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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李世ドルーハンドル

2019年12月21日 23時59分59秒 | 囲碁界ニュース等

<本日の一言>
今年も残り少なくなってきましたね。
年末年始は、31日~3日まで仕事を入れないことにしました。
ブログは・・・気分次第でしょうか(笑)。



皆様こんばんは。
本日は李世ドル九段とハンドル(韓国製AI)の三番勝負、第3局をご紹介します。
第1局は李九段が2子(黒7目半コミ出し)の手合で完勝、第2局は互先でハンドルの完勝、という結果でしたね。
第3局は再び李九段の2子(黒7目半コミ出し)の手合で行われました。

コミ碁で学習したAIは、コミ無し碁への対応が難しいそうです。
今回の手合は、私の感覚では目数にして12、3目ぐらいのハンデになると判断しています。
そこそこのレベルのミスが5、6回あれば追い付かれてしまうので、人間には厳しい手合だと思います。
それでは振り返っていきましょう。

1図(実戦)
李九段の黒番です。
李九段の早い仕掛けから、ややこしい部分戦になりました。
白3のハネが好手順で、白Aのコウ仕掛けを残しましたね。

黒は2と受けずに黒5につなぎ、右下白を取ってしまう手もあったところです。
それなら簡明ですが、実戦は頑張った打ち方ですね。



2図(実戦)
しかし、コウ争いの中で黒1、3と打ったのは不思議でした。
ただつながるだけの手に見えるのですが・・・。

黒1では、黒4、Aなどと連打して白×を取りにいく方が、これまでの流れからしても自然に思えます。
手堅く打つ作戦だったのでしょうが、李九段らしくないと感じました。



3図(実戦)
左上は手順こそ違えど、何十年も前からある型ですね。
ここで白1、3には驚きました。
既知の手筋とは言え、ここで1線を渡っていくとは・・・。
見た目は白が悪いですが、この碁の配置では有力ということでしょう。

そして、次は当然黒Aとつなぐかと思いきや、黒Bと打ったのにも驚きました。
プロはあまり考えない手だと思います。
あえてコウの形を残すことで、AIの対応を見てみたかったのでしょうか?

ただ、現実問題として黒Bは良くなかったようで、手元のAIによる評価値は20%以上急落・・・。
ここで形勢が逆転したようです。



4図(実戦)
黒1とコウを仕掛け、黒3、5と振り替わりました。
黒1が無駄石になってしまうので、通常は白が得になります。
ただ、李九段としては白×を攻めなければチャンスが無いとみたのでしょう。
これが人間相手なら、じわじわと差を詰めていこうとしたかもしれませんが、AI相手にそれは難しいですからね。
しかし、李九段の勝負手は不発となり、白中押し勝ちとなりました。

本局は李九段の着手が一環していないような印象を受けました。
もっとも、例えそうだとしても、普通の舞台や相手ではないので無理もありませんが・・・。


思えば、当ブログは李九段とアルファ碁の五番勝負を見て始めたものでした。
あれから色々なことがありましたが、まだ4年も経っていません。
まさかこんなに早く李九段が引退するとは思いませんでした。



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