白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第34局

2017年04月05日 23時58分00秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
本日で、2016年4月6日からの365日連続更新達成となります!
更新が厳しい時も、この目標を達成するために頑張って来ました。

当ブログはアルファ碁の記事から始まりました。
そこで、節目の回もアルファ碁の記事にしましょう。
Master対棋士 第34局、党毅飛九段(中国)との対局です。
党九段は22歳、今年のLG杯で世界戦初優勝を果たしました。



1図(テーマ図)
白△と隅を守り、同時に左下黒の根拠を奪いました。
黒の対応が問われています。





2図(変化図1)
弱い石を逃げ出す、黒1は素直な手です。
ただ、白6までと飛び合う展開は、黒にとって少し不満があります。

左辺は黒石が増えましたが、白△の構えは堅固であり、何ら影響を受けません。
一方、黒△の構えはいかにも薄く、どこからでも入って来られそうです。
2間締まりの弱点が目立つ進行です。





3図(変化図2)
逃げても上手く行かないとなれば、当然捨てる事を考えます。
人間としては、まず黒1、3のような打ち方が思い付きますね。
右下を中心に、黒模様を大きく広げて行く作戦です。





4図(実戦)
ところが、Masterは左辺から持って行きました!
黒1、3、5と利かし、一転して大場へ向かっています。

こういうパラパラした打ち方は、人間にはなかなか思い付きません。
3図なら黒石が明らかに右辺にプラスになっていますが、本図の黒1、3、5は右辺との連携が希薄です。
しかし、Masterは全局的に、将来的にはこちらの方が役立つと見ているのです。
具体的な手としてはAとBがありますが、それらは実際に盤上に現れます。





5図(実戦)
後に黒1が良いタイミングで打たれました。
白3と押さえるのは黒Aの当てを利かされ、つらすぎます。
実戦は白2と反発しましたが、黒3と連打して根拠を万全にしつつ、地を得する事ができました。





6図(実戦)
また、黒1の押さえにも回る事ができました。
白10の受けに黒11と打って全体が繋がり、中央に地ができそうです。
黒△が立派に役立っている事が分かります。

もちろん、Masterが当初からこうなる事を想定していた訳ではありません。
膨大なシミュレーションの中で、本図も含めて黒△が役立つ展開が数多く存在したという事でしょう。
当然ながら、人間には不可能な判断方法です。
ですから、ただMasterの手を真似しても上手く保証は全くありません。
人間の考え方で理解する事が必要でしょう。