白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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THE・手筋

2017年06月10日 16時59分56秒 | 幽玄の間
皆様こんばんは。
本日は永代塾囲碁サロンにて指導碁を行いました。
お越し頂いた方々、ありがとうございました。

ところで、幽玄の間では国内外の多くの対局が中継されています。
その中に格好良い手筋が現れた対局を見付けたので、皆様にもご紹介しましょう。
中国のミ昱廷九段と周睿羊九段の対局です。



1図(テーマ図)
ミ九段の黒番です。
下辺の黒が攻められているので、黒1と逃げ出しましたが、白2、4と激しく追及されました。

ここで黒Aと白Bを交換してから黒Cと伸びるのは1つの手筋です。
白Dなら黒Eとシチョウに抱えられるという寸法ですが、白△がシチョウ当たりになっているので、逃げられてしまいます。





2図(変化図1)
かといって、黒1、3と突き破りに行くのも強引過ぎます。
白8の後黒Aには白Bと抜かれ、外側に白の強大な厚みを作られてしまいます。
その代わりに白△が取れる訳でもなく、黒が全くダメな図です。

では、1図の後黒はどうすれば良いでしょうか?
一見すると困ったように見えますね。
ところが、ミ九段は凄い手筋を用意していました。





3図(実戦)
なんと、黒1の割り込み!
本に出て来そうな手筋です。
この手の意味は、一言でいえば利き筋を作りに行ったということです。





4図(変化図2)
当然白1と反撃されますが、黒2と当たりをかけました。
白1を誘い、ここに石を持って来るのが黒の狙いだったのです。
この後白3と抜けば黒4以下突き破り、白Aに打てなくなっていることが確認できるでしょう。
黒△と急所を切った形になっており、これは白バラバラでいけません。





5図(実戦)
という訳で、実戦は前図白3で本図白1から突き破って行きました。
黒全体が薄くなったようですが、ここで黒6とコウを仕掛けたのが予定の行動です。





6図(実戦)
白1とコウを取った時、黒2という大きなコウ立てがありました。
黒6とポン抜いて振り替わりです。

この結果、黒△はほぼ取られになりましたが、全体の黒は強力な厚みに変わりました。
結果的に白△が空振りになっていますし、左上白〇の一団が心細くなっています。
元々攻められていた黒としては、上手く捌いたと言えるでしょう。

割り込みの手筋と言い、尻尾を処分して外勢を築いた打ち方と言い、捌きのお手本のような打ち回しでしたね。