白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第55局

2017年08月08日 23時52分31秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
本日もMasterの棋譜紹介です。
本局は陳耀燁九段、孟泰齢六段が相談碁で挑みました。



1図(実戦)
陳九段チームの黒番です。
左上の形は、細かい手順の違いはあるものの何度も現れましたね。
本局では左下との組み合わせにも注目です。
左下、左上共に白は隅に籠り、黒が外勢を得る分かれになっていますね。
これだけ外に黒石が多くなっては、黒が打ちやすいと見るのが常識でした。
Master登場以前にこの局面を棋士に見せたら、1000人中999人は黒良しと答えるのではないでしょうか。





2図(実戦)
しかし、白△と滑ったところで意外に黒の打ち方が難しくなっていることに気が付きます。
と言うのは、黒は勢力を生かして戦いに持ち込みたいのですが、白にはどこにも弱い石がありません。
また、黒A、白B、黒Cなどと囲いに行く打ち方も、白の実利に対抗できるか怪しいところです。
厚みを囲うなの格言がある通り、あまり好ましい打ち方ではありません。





3図(実戦)
と言う訳で、黒は左辺を囲いに行かなかったのですが、ならばとMasterは得意の壁攻めを開始、結果黒△を取り込んでしまいました。
当初圧倒的と見えた黒の勢力が、見る影もなくなってしまいました。





4図(実戦)
終局直前、黒1の当てに白Aではなく白2とつないだのは、例によってサービスです。
黒Aの抜きを許し、白が5目半勝てる碁が1目半差になりましたが、Masterにとってはどうでも良いことです。
黒にチャンスの無い碁だったとみるべきでしょう。

勢力や厚みの勝ちを正確に判断しようと思うと、ずっと先の局面まで想定しなければいけません。
それは人間にとっては非常に難しいのですが、Masterは驚くべき精度で判断しているようです。