白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第26局

2017年03月05日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
本日は新宿区小学生囲碁大会で審判長を務めました。
子供達が一生懸命に取り組む姿が印象的でした。
そして、打つのが早い事早い事・・・。
19路盤クラスでさえ、殆どが1局20分以内で終わっていました。
大人は色々な事を気にしますが、子供は素直に直感に従う傾向がありますね。

さて、本日はMasterと李東勲八段の対局をご紹介します。
李八段は農心杯で韓国代表になった実力者です。



1図(テーマ図)
Masterの黒番で、白△と伸びられた場面です。
中央の黒を狙われていますが、左上白Aあたりから仕掛けられる手も気になります。





2図(実戦)
そこで、黒1と白2の交換をしてから黒5と回りました。
黒Aと出る手を残し、いくらか中央の黒が強くなっているという訳です。

守ってくれないのではつらいと、白も6と脅かして来ました。
ここで何も考えなければ黒Bと逃げてしまいそうですが・・・。





3図(実戦)
黒1は白2と先に伸びさせる手で、ここだけ見れば車の後押しと呼ばれる悪い打ち方です。
しかし、中央黒に多少なりともゆとりを持たせ、黒3の大場に先行するための応急処置なのです。
白6と被せられても、黒7で大丈夫という読みがあります。





4図(変化図)
白1、3と切って来れば、黒6までが一例です。
黒が凌ぎに苦労する形ではありません。





5図(実戦)
直接攻めても上手く行かないと見て、白1、3と遠巻きに攻めたのは高等戦術です。
上辺への侵入と中央の攻めを見た、一種の絡み攻めです。





6図(実戦)
しかし、上辺には構わず黒1、3と中央を突破し、白6には黒7と外したのが冷静です。
薄いようですが黒△は取られても良く、そう考えれば白からさほど怖い手はありません。
こうなってみると、黒を攻めるために打った白△が心配になって来たので・・・。





7図(実戦)
白9までと中央を繋がったのは止むを得ませんが、また黒が先手になり・・・。
※白5は△の所





8図(実戦)
黒11までと進み、上辺、左辺、中央の黒が全て治まりました。
こうなっては白の攻めは空振りでしょう。
Masterの石の強弱の判断力や、臨機応変な打ち方が光った1局でした。