白石勇一の囲碁日記

囲碁棋士白石勇一です。
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Master対棋士 第14局&女流棋聖戦結果

2017年02月06日 23時59分59秒 | Master対棋士シリーズ(完結)
皆様こんばんは。
第20期ドコモ杯女流棋聖戦第3局は謝依旻女流棋聖牛栄子初段を破り、タイトルを防衛しました。
ハラハラドキドキの内容でしたが、最後に踏ん張れたのは経験の差でしょうか。
牛初段は勝利目前まで来ていましたが、残念でしたね。

なお、この対局は幽玄の間にて中継されました。
解説者としては力不足の面もありましたが、両者の溌溂とした戦いは私自身も楽しませて頂きました。

さて、本日はMasterの棋譜をご紹介します。
相手は嚴在明三段(中国)です。



1図(実戦)
Masterの黒番です。
左上黒1はお馴染みのカケですね。
そして左辺の戦いの中、黒11は手筋です。
この手で黒Aは白Bと飛ばれ、左上の黒が弱くなっていけません。





2図(実戦)
白1以下黒△の石を抜かれましたが、1子取るのに6手かけた格好ですし、欠け眼です。
形が良くないので黒が十分と見ています。
まあ、このあたりまでは驚きはありません。





3図(実戦)
しかし、黒1、3にはビックリ!
黒1と打った以上、白2には黒Aと伸びるのが自然な一手に見えます。





4図(実戦)
白1とハネられ、黒2と引くのではつらい形です。
一方白5までとなると白は好形ですから、こういう打ち方は黒が良くないとされています。

しかし、それはあくまで部分的な話という事でしょう。
先手を取って黒6と、深々と踏み込みました。
Masterの中では、ここに回る事が最優先だったのですね。





5図(実戦)
手順が進み、黒△までとなりました。
いつの間にか、明らかに黒地が多い局面になっています。
こうして見ると、中央の白もあまり働きそうにないですね。





6図(変化図)
3図黒1で、単に本図黒1と打てば白2でしょう。
4図と比べ、下辺の黒が手薄な事が感じられると思います。
この状況では、黒Aまで行くのは危険でしょう。

部分的に悪い打ち方でも、全局的には良い手になる事もあります。
それを示す好例でしたね。

全局的な判断というのは、人間の苦手な部分です。
部分的な石の形のパターンはある程度限られており、経験的に判断する事ができます。
しかし、同じ局面というのは中々現れませんから、経験として蓄積する事が難しいのです。
何千万局、何億局と経験できるAIには、とても敵わない部分ですね。