いちごわさびの徒然草

アニメ大好き! ガンダム大好き! そんなこんなを徒然なるままに・・

(第12話)不倫温泉・・ / [小説]甘い誘惑

2011-01-17 20:16:08 | [小説]甘い誘惑
<ここまでの話>
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【第2部】
(第10話)存在・・
(第11話)期待・・

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小さな温泉がある田舎の駅なのだが、降りる人達の数は意外と多い
そんな人達の中で、仲が良い夫婦連れが何故か目立っていた・・

(夫婦水入らずの温泉旅か・・ それも良い物だな・・)

などと考えながら、留守電でもよいので、一言『着いたよ♪』と彼女に電話を
しておこうと携帯電話を取り出したとき、手を振る見慣れた男と視線が合った・・

「遠路はるばる、お疲れ様です!」

「おう、ご苦労様・・ わざわざ出迎えてくれなくても良いのに・・
 忙しいのでは無いのか?」

と、言いながら携帯電話を上着の内ポケットに押し込む・・

(さて・・ 仕事モードに切り替えないと・・)

「いや、そんな事はありません、今週分の作業は終了していますから♪」

「そうか・・ ありがとう♪ しかし、ここは久しぶりだ! 変らんな・・」

「そりゃ都会とは違います・・ ここでは時間もゆったりと進んでいます・・」

「そうだな・・
 というか、この温泉街って・・ 意外と人気スポットなんだな・・
 あのような夫婦連れを沢山見かける・・
 週末利用の温泉旅行だろう・・ 流行っているのか?」

「いや・・ 夫婦じゃないです・・ あれは・・ あちらも違います・・」

「ん? 違うって? 夫婦じゃないのか? 仲もよさげだぞ?」

「よくご覧になってください・・
 男性も女性も、それぞれ大きなバッグを持っていませんか?」

「そりゃ旅行だったら着替えなども要るだろう・・ バッグも必要では?」

「まぁそうですが・・
 ではちょっとイメージください・・ 奥さんと2人で旅行・・」

「すまん・・ バッグだよな・・ イメージができん・・
 最近は、家族全員で車で移動だからな、適当に分けてトランクにポイだ・・」

「そうですね・・ では、車じゃなく電車であれば、荷物はどうされます?
 荷物は極力小さくしようと考えませんか?」

「そうだな・・ 着替えも少なく最小限の荷物にするだろうな・・」

「そうなんです♪・・
 そして、良くある旅行用のかばんって大き目ではないですか?
 荷物を少なくしたのに、バッグは大きくて・・
 だったら、着替えなどは一緒にしてと考え、2人分の荷物を
 1つにまとめてしまいませんか?」

「まぁ、そうなる事もあるだろうな・・」

「意外とそうなるようですよ、
 奥様方は自分の小さなバッグは持ちますが、着替えなどは大きなバッグに入れ
 旦那さんに持ってもらう・・ 夫婦だったらそういうものなんだそうです・・」

「そうか・・ 1人づつ別の大きなバッグって事は・・
 同じ家から来たのではない!・・ って事になるのか!」

「そうなんです・・ 十中八九、あれは不倫旅行ですね♪
 よくご覧になってください 男も女も別々に大きなバッグを持っています・・
 そして・・ 夫婦って、あんなにベタベタするものでしょうか?
 年も見たら離れているようにも・・ ちょいと不自然に見えませんか?
 というか、本人たちは気付かれてはいないと思っているのでしょうが
 客観的に見ると、意外にバレバレなんだと言う事です♪」

「鋭いな・・ そうか・・ ふ・・ 不倫なんだ・・」

「そうなんです、間違いなく不倫です!
 まぁ不倫なんて私が見たら一目瞭然ですね♪
 普通に考えても、夫婦で旅行するなら土曜日出発なんですよ♪
 それが、金曜の夜からって・・ ちょっと考えただけでも不自然なんですよ」

2課の課長の口から思わず出てきた、不倫という単語にドキっとし、心が騒いだ・・

(不倫というのは、他人から見たらバレバレな物なのか?
 というか、この課長・・ 要注意だ!
 それとなく彼女の事を聞きたかったが・・ それは危険かもしれない・・
 いや・・ ちょっと待て・・ 私は?・・ 私は不倫なのか?)

「不倫はそんなに解り易いのか?」

「そうですね、まぁ都会の中であれば、木を隠すには森に・・って感じで
 解りにくいですね、特に人が多い事で、常に見られる危険性から
 不倫している人は警戒し演技している事も多くなりますので・・
 でも、このような場所では開放感や知人も居ないって事が作用し
 モロに行動に出てしまいます」

「そうか、油断大敵ってことだな?」

(さっきまでの私と同じかもしれん! 浮かれていた事は事実だ・・
 人の振り見て我が振り直せ!か・・ 昔の人はいい事を言う・・)

「人の多さや、活動エリア内などは関係なく、リスクを伴う行動である限り
 どこに居ても注意が必要であるはずなのに・・
 開放感からか、リスクヘッジが甘くなるのは人間の性なんだと思います」

「言うなぁ・・ 君は評論家だな♪
 先ほどもバッグで判断したし・・ 理由も論理的で妙に説得力がある」

「いえいえ・・ バッグの話は、この街に最初に来たときに宿泊した
 旅館の仲居さんから聞いた話なんです、評論家なんて事はないですよ♪」

「しかし・・ そう言われて見ると・・ あの二人もそれっぽいな・・」

「ビンゴです♪、男性はネクタイにビジネススーツ・・
 夫婦の旅行ならありえない格好です、それと女性の髪形・・ 盛っていますよね
 完全にお水と思われます」

課長の口調が徐々に柔らかくなってきている・・

(こいつ意外と楽しい奴かもしれんな・・)

「そう言われるとほんとに多い・・」

「ですからホテルや旅館も、金曜の夜はどこも満員なんです
 この温泉街は別名『不倫温泉』って呼ばれているそうで
 都市部からも鉄道1本なので、週末の旅行には最適なんでしょうね・・」

「ほう・・不倫温泉なのか?・・、週末はそんなに混んでるのか?
 って・・ おい! 私の宿はあるんだろうな?」

「大丈夫です、ご安心ください、まぁ急だったんですが
 私やメンバーが宿泊しているビジネスホテルで、なんとか確保できました・・
 本来であれば、露天風呂や混浴がある旅館でも取れれば良かったんですが
 申し訳ありません・・ まぁ公共温泉に浸かることは出来ますが・・」
 
(何っ! 彼女と同じホテルなのか!!)

突然、彼女の姿や濡れた唇、そして手のぬくもりなどのイメージが浮かび上がる
課長の話を聞きながらも、脳裏では彼女との不倫温泉での妄想が暴走し
素敵な週末になる期待感で胸がどんどん膨らんでいった・・

(しかし、この切れ者課長と一緒だと、うかつな態度は危険だ
 話が合うとついつい余計な事まで口を滑らせてしまう・・
 この場に彼女が居なくて良かった・・ が・・ こ・・混浴ぅ?・・
 彼女と混浴かぁ♪・・ いや・・ やっぱりそれは・・ いかんいかん・・)

あらぬ妄想で胸が膨らむばかりでなく股間も・・ 悲しい男の性だ

「いや、うん、私はビジネスで十分だ・・」

(まぁ、何であろうと
 彼女と不倫温泉で、同じ宿って・・ こりゃ最高じゃないか♪)

「ほんと、ビジネスで申し訳ありません・・
 では・・ 立ち話も何ですから・・ ホテルはちょっと離れていますので、
 荷物を預けるより先に、ちょいと一杯引っ掛けますか?
 お腹もお空きでしょうから、この近所で食べていきましょう!」

(そういえば・・ 彼女は電話で『駅に着いた』と言っていたな・・
 ビジネスホテルへは電車で異動なのか?
 まぁ・・ この辺は旅館や観光ホテルが主だから仕方がないか・・
 電車の本数も少ないだろうし・・ タクシー利用も往復では無駄だな・・)

「解った、ビジネスホテルだと期待した郷土料理にもありつけんしな
 チェックインして、またここまで戻るのも大変だし・・
 なにか美味しい店が近くにあるのか?」

「任せてください! お客さんに教えてもらった店があります!
 地酒もあって、安くて美味しくて、週末は娘さんが店を手伝うので
 大人気ですよ・・ ひょっとしたら部長さん達も来ているかもしれませんね・・」

「そうか! 地酒が旨い店か?・・ ん? ひょっとしたら駅裏の・・」

(明日、彼女と行こうと思っていた店なんだが・・ まさか・・)

「そうです! 駅裏です! 既にご存知でしたか? 良く行くんですよ!」

(危なかった・・ ばったり出会ったりすると言い訳も出来ない・・
 彼女と行く別の店を探さないといけないな・・)

頭で考えている事とは全く別の話が出来る・・ 人間とは不思議な動物だ・・

「5年前に行った事があると思う・・ 娘さんって・・ 小学生だった娘か?」

「今、高校2年生って言ってましたから・・ 多分間違いないですね♪」

「そりゃ楽しみだ♪」

何とか不倫の話から他の事に話題をそらせ、地酒の旨い郷土料理屋に向かった・・

(さて・・ 彼女への電話は様子を見つつだな・・
 メールアドレスを知っていたら・・ ごまかしながらでも連絡できるのに・・)

などと考えている事は秘密だが・・

(第13話)男のロマン・・」に続く・・・
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2011-01-17 20:03:49 | [小説]甘い誘惑
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【第1部】
(第1話)きっかけ・・
(第2話)待ち合わせ・・
(第3話)イタメシ屋・・
(第4話)ワイン・・
(第5話)胸・・
(第6話)手・・
(第7話)電車・・
(第8話)携帯電話・・
(第9話)神様のバカ!・・

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