<ここまでの話>
【第1部】
「<第1話> から <第24話>までのリンク」
【第2部】
「<第25話>子にゃんこ」
「<第26話>緊急信号!」
「<第27話>チーム戦!」
「<第28話>ジャジャ馬」
「<第29話>一撃離脱・・」
「<第30話>帰艦・・」
「<第31話>ソロモンへの足音」
「<第32話>小隊長・・」
「<第33話>喧嘩売ってんの!」
「<第34話>結成!MS中隊!」
「<第35話>シミュレータ・・」
------------------------------------------------------------------------------
急にセンサーが近距離表示に切り替わり、ロックオンセンサーが鳴り響く
(えっどこだ? 目視できない!・・)
やばいと感じ、スラスターを全開し、
飛び上がりビームサーベルを抜いた瞬間に、足元を白い影が通り抜けた!
(なにぃ! 背後からか? いつの間に!
やばい! 地上じゃ飛んじゃダメだ! 単純放物線を軌道するだけだ!!)
全身から冷たい汗が噴出した!
慌てて、手足のアポジモータを噴射させ、空中で体制を変えるが・・
宇宙のようには行かない・・
重力に戻され、ロックオンアラームが鳴り響く!
「・・・ 警告! 警告! 警告!」
(ダメだ・・ まずったぁ・・)
「・・・ ピー! 終了です、お疲れ様でした。14秒52です・・」
一体・・ 一体なんなんだ! こいつは!!
心拍数が異常に高い・・ (落ち着け・・)
私は深呼吸をし、息を整えた・・
「すまん・・ もう一回出来ないか?
急に地上戦だったので、間違えてしまった・・」
「・・・ そうですね・・ 皆さんも同じ事をおっしゃって♪
了解です、ではリセットします。」
と、苦しい言い訳をして、2度目を行ったのだが・・
今度は24秒25でまたアウト、更に悲惨な事に
今回はコックピットを打ち抜かれてしまう・・
実戦なら即死だ・・
シミュレータのハッチが開いた・・
目の前にタゴサ艦長の満面の笑みが広がる・・
「私の勝ちね~♪ 大尉!
さて、私のお部屋のお掃除でもしてもらいましょうか♪」
(ちょっと待て! お掃除できない人ってマメハ大佐が言ってたぞ!)
「いや・・ 言い訳は出来ないが・・
こいつは本当に実データなのか? まるで赤い彗星のシャアだよ・・
あのアムロ少尉が滅茶苦茶作っているのではないのか?」
「聞いた話だけど、アムロ少尉とRX-78-2との実データだそうよ・・」
「た~いちょ♪
でも24秒はさすがですって! 多分グリフィンでは1位ですよ♪
私なんか、たったの3秒でした ♪
最初にセンサーが察知したと思ったら・・ ズドン!って・・
もう、さいて~!」
と、ミィ少尉がいつものように楽しげに説明してくれる・・
「というか、まだこのデータに勝ったパイロットは連邦軍には居ないって
そうよね? オビッチさん♪」
「ミィ少尉・・ 軍曹で良いですよ♪
現時点での実施率は全軍パイロットの67%ですが・・
まだ、クリアは誰もおられません。
ただ・・ 全て1回目のデータだけ、収集されていますので・・」
「なんだって! それじゃ私は 14秒か?」
「そうですね♪ でも、上位ですよ♪」
「まいったな・・ これがスペシャルなオプションなんだな・・
RX-78-2の性能はジムコマンドと変らんだろ?」
「じゃ・・ 戦闘記録を見ましょうか?」
と、オビッチ軍曹がモニターを、映像モードに切り替える
皆がモニター前に集まってきた・・
モニターには私のジムが映っていた・・
第三者の視点で映像が合成されているのだ。
小さく見えるMS・・ 白い・・ というか動きが早い!
私が撃った時点では、その場に居るのに・・
いや・・ 違う・・ 撃った瞬間にその場から移動を開始している!
なぜ? どうして? 撃たれる事が事前に解っているのか?
というか、これじゃ何発撃っても当たらんじゃないか!
「これは動きが早すぎる! なにかの間違いではないのか?」
「いいえ・・ 実際にはこれ以上とも聞きますよ・・」
自信喪失だ・・・
というか、ガンダムというモビルスーツ・・
連邦軍はとんでもない兵器を作った物だ
RX-78-2・・ ガンダムという機体に興味が出てくる・・
「このガンダムを操縦できるデータは無いのか?」
「それが・・ 無いのです・・ 軍機らしく・・」
「何が軍機だ! と言う事は、公表データとは異なると言う事か?
シミュレータでも良いから乗ってみたいものだがな・・」
タゴサ艦長が話に入ってくる・・
「確かに、そのような疑問は出ているようだけど、
RX-78-2の性能値は公表通りなのよ・・
ご存知と思うけど、グリフィンだってV作戦のテスト艦よね?
私たちは、その作戦のテストメンバーだったのよ・・
その筋からの情報なので、間違いは無いわ」
「ということは・・ パイロットがすごいのか?」
「そうね・・ そのような噂が出ているわね・・」
ほんとに世界は広い、こんな奴がいるとは・・
アムロ少尉が友軍で良かったと真剣に感じていた・・
「この最終モードの3対3で、一番高い得点を挙げているのが
大尉もご存知の、レイヤー中尉のホワイトディンゴ隊なの・・
まぁ、ホワイトディンゴ隊は陸戦部隊(陸軍)だから・・
かなり、彼らもやり込んでいるようね・・ やってみる?」
「えっ?、このシミュレータで、3人乗れるのですか?」
「確か、そのように聞いたけど・・ オビッチ軍曹?」
「はい・・ ただ、コックピットは1つしかありませんので、
あとの2機は実機のコックピットを使います、
インターフェースがあり、ケーブルで接続するとリンクされるのですが
実機を使うとなると、準備が必要です」
「そうなの? すぐには出来ないんだ・・ 残念ね!
私たちのMS中隊の実力を、戦隊員に誇示し、モチベーションを
上げれる良い機会だと思ったんだけど・・」
「1機は現在修理中のジム218がありますが、
もう1機は訓練に入りますので、余剰機体が無く・・」
「いや・・ 出来たら良いわね・・って、単純に思っただけよ・・
、でも、もし出来たら・・、現在宇宙軍では最高点を出している
バニング中尉の第3小隊には勝ってよね♪ 我らの意地にかけて♪」
「了解です、タゴサ艦長!
おい! ヤーク! クマ! その時はよろしくな!」
「いいっすねぇ!
シミュレータでこんなに熱くなれるとは、いつでも声をかけてください♪」
「了解! 21独立戦隊!ここにあり! って、
全連邦軍にその名を轟かせましょうや!! 作戦は考えときます♪」
「よし! じゃぁ・・ 次! ユカ少尉だ!」
と、タゴサ艦長との、お部屋掃除の事やヒロ中尉とリン少尉との交代の事・・
更に、マスミン大尉に呼ばれている事などもすっかり忘れ
ヒポグリフの左舷MSデッキはゲームセンターと化していた・・
そのとき・・
「ビー! ビー! ビー! エマージェンシー、レベル1!
総員第1戦闘配備! 艦長、士官はコントロールに!」
急にエマージェンシーが艦内に響きわたった!
「こちら艦長! どうしたの?」
「・・・ マサップです! サイド3からの航路上に艦影3!
こちらに進路を取っています! 識別レッド!
現在、距離35000!」
「解ったわ・・ すぐにそちらに行きます・・
グリフィンと繋いでね!」
「・・・ 了解!」
「大尉! 一緒に来て!」
「了解です・・ パイロットは自機で待機だ! いそげ!!」
・・・
ヒポグリフのコントロールでは、マサップ中尉がグリフィンと回線を繋ぎ
作戦内容を検討していた。
「どうなの?」
「はっ! 艦長・・ 戦隊長は『やりすごしたい・・』とのご希望ですが」
「そうね・・ 大事な海戦前に、できればドンパチしたくは無いわね・・
回線は繋がっているの?」
「はい! どうぞ!」
「こちらヒポグリフ、タゴサです・・ グリフィンどうぞ!」
「・・・ タゴ? マメハよ・・ 嫌な感じね・・」
「そうね・・ まっすぐ来てるようね・・」
「・・・ しばらく敵の動きを監視するけど・・
MS隊は出撃準備をしておいて・・
ワサビィ? そこに居るんでしょ?」
「はい! ワサビィです、パイロットには自機待機を命じています」
「・・・ ありがとう・・ 先ほど宇宙港の電灯類の電源は落としたので
目視では解らないはずだけど・・
サーマルセンサーには反応しちゃうので、このまま直進されると
100%ドンパチになるわ・・
というか・・ ここを狙って来ている!・・って考えているの。
ダミーの定時連絡は発信させているけど、内容は毎回同じ内容だし
補給もあるはずだし・・ ジオンもバカじゃないわ
そのために・・ ちょっと考えたんだけど良いかしら・・」
「どのような?」
「・・・ 外周コロニーの影に、第2小隊と第3小隊を配置し、
サイドから敵母艦を叩くの・・ できるわよね?」
「了解! そうなると前面は第1小隊ですね・・
敵艦は3隻・・ 想定MS数は9から12機です、
正面は第1小隊と第2小隊の8機で対応させた方が・・
敵母艦が、どの位置まで前進してくるか?も推定になりますし・・
つまり、前面でのMS戦が長時間になるリスクと、グリフィンなどとの距離が
近い場所での戦闘はこちらのリスクが高くなります・・」
「・・・ 第3小隊だけで敵艦を? できると思うの?」
「出来るはずです。ボールの機動性はMSより上ですよ。
ボール3機で1艦に集中攻撃をかける事は出来ますし、
実弾は対艦攻撃にも向いています・・
そうなったら、敵MSは母艦を守りに行くはずです・・
いや・・ 母艦は宇宙では命綱です、絶対にジオンのMS隊は2手に分かれます
更にセイバーブースターYUKIKAZEが使えたら・・」
「・・・ 残念だけど・・セイバーブースターは
まだ修復には時間がかかりそうとの報告が来てるわよ?」
「そうですか・・ まだ、使えないのか・・
でも・・ 大丈夫ですよ! ただ・・ 敵のMSが艦を守るために
帰ってきた後が大変ですが・・」
「・・・ そこなのよ! だから第2小隊も・・」
「いえ・・ 基本は第3小隊で対処させます・・
細かな事は、こちらで考えます、ただ・・ グリフィンもヒポグリフも
発進準備をお願いします・・ 宇宙港から出てもらう可能性も・・」
「えっ? でるの?」
「はい、タゴサ艦長・・ レイテを守らないと・・」
「・・・ 聞こえたわ・・ そうね、ヒポグリフは発進準備を!
その時はグリフィンも一緒に出るわね!」
「よろしくお願いします!
ユカ少尉! 聞こえているか?」
「・・・ はい! 第2小隊、発進準備中です!」
「カタパルトには? 誰が乗っている・・」
「・・・ 第1小隊の援護だと判断し、ミィ少尉のスナイパーを・・」
「おう! 正解だ!
ジム1機はミィ少尉の護衛に回せ! 装備はA装備だ!
あとの2機は第1小隊に合流後に白兵援護に入れ!」
「・・・ 了解です、A装備1機とB装備2機で準備してました・・
そうなったら、全機A装備が良いですね・・」
「そうだな・・ 任せる!
とにかくスナイパーでの援護が第1小隊には必要だ!」
「・・・ 了解です!」
「オーリン准尉! 準備はどうだ?」
「・・・ こちら第3小隊、いつでも出れます。
グリフィン右舷デッキで、既に発進準備はクリアです!」
「聞いていたと思う・・ 解るな・・」
「・・・ 大体はね♪
要は外周コロニーの影を利用して、敵艦に近づき
しとめろ!って事よね
大丈夫よ! 敵は3隻とか言ってたわね? 艦種は?」
「マサップ中尉・・ 艦種は解るか?」
「そうですね・・ 月の昼部分を背後に進んできていますから
特定が難しいのですが・・ 大型艦ではないですね・・
「ということだ・・ ムサイ級と考えてよいだろう・・」
「・・・ だったら、下方からか・・
敵艦を重ねて死角をつくり、1隻に集中攻撃をかけるね・・
ただ、近接しないとダメなので、ザクはそっちでお願いよ!」
「ああ・・ 頼む・・
第3小隊が今回の作戦の肝だ! とにかく1艦で良い、ダメージを与えて
後は、臨機応変に第1小隊と第2小隊の援護を頼む!
ただ・・・ 万一ムサイからザクが出てくるかもしれん・・
その時は、全力で逃げろ! いいな! これは命令だ!」
「・・・ 了解よ! ザクは出てこないで欲しいよね・・」
「ああ・・ 私も祈っておくからさ・・」
「・・・ ご利益はあるのかしら? まぁ、無いよりましね・・ 了解よ!」
「ヒロ中尉! どうだ?
「・・・ もう待ちくたびれてるよん♪」
「ちょっと待っててくれ・・ そっちに行く・・」
「・・・ ラジャ!!」
「マメハ戦隊長! お聞きの通りの大雑把な作戦骨子ですが・・これで行きます
MSデッキに行きますので、何か変化があったらお願いします!」
「・・・ 解ったわ、常に通信回路はオープンでお願いよ!」
「了解! タゴサ艦長・・ あとは頼みます!」
・・・
ヒポグリフの右舷デッキでは、既に第1小隊が発進準備が終了していた。
見ると、天井の吊り下げ型カタパルトに2機、床部カタパルトに2機の
ジムコマンドが横たわる形で設置されている・・
「な・・ なんだ? このセットアップは!」
「あっ・・ 大尉!」
「モジト軍曹・・ これは・・」
「言ってませんでしたっけ・・
ジオンのムサイ級の仕組みをヒントに試作されたカタパルトです
奴らは狭い艦内で効率的な配置をしていますね・・
重力圏ではないので、立ち状態でのカタパルトは不要ですから・・」
「いや・・ そうじゃない・・ 1つのカタパルトに2機できるのか?」
「あっ・・ そちらの事ですか? これも軍機なんですが・・
左舷と右舷で、合計8機の連続射出が可能なんです。
上部と下部で1秒以内に2機、後方から残り2機は3秒以内に射出可能です。
つまり、8機を4秒で射出できます・・」
「だからMSデッキ班長が2人必要なのか・・ 」
「まぁ、初回発進だけですけど・・ 基本設計は、回収効率と連続再発進ですが
その実現性を考慮したら、このような事も出来る仕様になったと・・
ただ、整備デッキが無いので、整備班には申し訳ないですが・・」
「なるほど、一長一短だな・・ ヒロ中尉! 聞こえるか?」
「・・・ ほーい! 聞こえてますよん♪
つぅか、ジムコマンドって頭上カメラが無いんで、前が見えないし・・
なんか気分が変っす・・
でも、ジオンってすごいですね・・ 奴らってこんな感じなんだ・・」
「ああ・・ そうだな・・ というか、ムサイ級のMSデッキはもっと狭いぞ
上下のMSが擦れるぐらいの距離で設置されているはずだ・・
宇宙では限られた空間を如何に効率的に設計するかがポイントだが、
さすがスペースノイドだ・・ジオンの方が連邦軍より上だと思う・・
で・・ 本題だが・・
ほぼ確実にMS戦になる、最初の数分は第1小隊4機で、ザクなど9機から
12機を相手にする可能性もある・・」
「・・・ ですよね・・聞いてました・・ 12機かぁ・・ きついや・・
というかこっちに来る敵が9機以下だったら第3小隊がやばいし・・」
「多分最初は9機程だと思うが・・ それはあくまでも機数は推測だ!
ただ・・ スカート付きが出てきたら、総数が減るはずだ・・」
「・・・ ん? どして?」
「ああ・・ 調査資料によると、ムサイ級はザクなら4機格納できるが
リックドムなどの大型MSは3機だと書かれていた・・」
「・・・ そっか・・ スカート付きだけだったらMAX9機かぁ・・」
「そういうことだ・・」
「・・・ で・・第2小隊は?」
「想像通り発進に少々の時間がかかる・・
つまり、第1小隊が尖兵だ! 時間を稼いでくれ!」
「・・・ 了解っす! じゃ距離を保てる体制を組むかぁ・・」
「さすがだな! そう言う事だ、あとは第2小隊と第3小隊が均衡を崩す、
狙撃でミィ少尉が援護に着くので、ジオン側の体制が崩れるまで、
できるだけ白兵には入らず、射撃で交戦するほうが有利と思う・・
まぁ臨機応変に対処頼む!
ただ、発進のタイミングがきわめて重要だ・・ 私が指示する・・
モジト軍曹! 発進のタイミングは私の指示を待て! いいな!」
「・・・ 了解しました!」
「ヒロ中尉! 発進コールも無しで、いきなり行くぞ! 良いな!」
「・・・ 了解っす♪」
「・・・ マサップです! ワサビィ大尉! 応答どうぞ!」
「ワサビィだ! なんだ?」
「・・・ 敵艦から射出物をサーチ、数6つ・・ MSと思われます・・
敵艦を先行し、こちらに向かってきます・・」
「了解だ! 6機か・・ 1波と2波に分かれるな・・
MS中隊全員に告ぐ! どうやら避けられんようだ、
全員、生きて帰れ! 命令だ!」
<第37話>被弾!そして・・に続く
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【第1部】
「<第1話> から <第24話>までのリンク」
【第2部】
「<第25話>子にゃんこ」
「<第26話>緊急信号!」
「<第27話>チーム戦!」
「<第28話>ジャジャ馬」
「<第29話>一撃離脱・・」
「<第30話>帰艦・・」
「<第31話>ソロモンへの足音」
「<第32話>小隊長・・」
「<第33話>喧嘩売ってんの!」
「<第34話>結成!MS中隊!」
「<第35話>シミュレータ・・」
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急にセンサーが近距離表示に切り替わり、ロックオンセンサーが鳴り響く
(えっどこだ? 目視できない!・・)
やばいと感じ、スラスターを全開し、
飛び上がりビームサーベルを抜いた瞬間に、足元を白い影が通り抜けた!
(なにぃ! 背後からか? いつの間に!
やばい! 地上じゃ飛んじゃダメだ! 単純放物線を軌道するだけだ!!)
全身から冷たい汗が噴出した!
慌てて、手足のアポジモータを噴射させ、空中で体制を変えるが・・
宇宙のようには行かない・・
重力に戻され、ロックオンアラームが鳴り響く!
「・・・ 警告! 警告! 警告!」
(ダメだ・・ まずったぁ・・)
「・・・ ピー! 終了です、お疲れ様でした。14秒52です・・」
一体・・ 一体なんなんだ! こいつは!!
心拍数が異常に高い・・ (落ち着け・・)
私は深呼吸をし、息を整えた・・
「すまん・・ もう一回出来ないか?
急に地上戦だったので、間違えてしまった・・」
「・・・ そうですね・・ 皆さんも同じ事をおっしゃって♪
了解です、ではリセットします。」
と、苦しい言い訳をして、2度目を行ったのだが・・
今度は24秒25でまたアウト、更に悲惨な事に
今回はコックピットを打ち抜かれてしまう・・
実戦なら即死だ・・
シミュレータのハッチが開いた・・
目の前にタゴサ艦長の満面の笑みが広がる・・
「私の勝ちね~♪ 大尉!
さて、私のお部屋のお掃除でもしてもらいましょうか♪」
(ちょっと待て! お掃除できない人ってマメハ大佐が言ってたぞ!)
「いや・・ 言い訳は出来ないが・・
こいつは本当に実データなのか? まるで赤い彗星のシャアだよ・・
あのアムロ少尉が滅茶苦茶作っているのではないのか?」
「聞いた話だけど、アムロ少尉とRX-78-2との実データだそうよ・・」
「た~いちょ♪
でも24秒はさすがですって! 多分グリフィンでは1位ですよ♪
私なんか、たったの3秒でした ♪
最初にセンサーが察知したと思ったら・・ ズドン!って・・
もう、さいて~!」
と、ミィ少尉がいつものように楽しげに説明してくれる・・
「というか、まだこのデータに勝ったパイロットは連邦軍には居ないって
そうよね? オビッチさん♪」
「ミィ少尉・・ 軍曹で良いですよ♪
現時点での実施率は全軍パイロットの67%ですが・・
まだ、クリアは誰もおられません。
ただ・・ 全て1回目のデータだけ、収集されていますので・・」
「なんだって! それじゃ私は 14秒か?」
「そうですね♪ でも、上位ですよ♪」
「まいったな・・ これがスペシャルなオプションなんだな・・
RX-78-2の性能はジムコマンドと変らんだろ?」
「じゃ・・ 戦闘記録を見ましょうか?」
と、オビッチ軍曹がモニターを、映像モードに切り替える
皆がモニター前に集まってきた・・
モニターには私のジムが映っていた・・
第三者の視点で映像が合成されているのだ。
小さく見えるMS・・ 白い・・ というか動きが早い!
私が撃った時点では、その場に居るのに・・
いや・・ 違う・・ 撃った瞬間にその場から移動を開始している!
なぜ? どうして? 撃たれる事が事前に解っているのか?
というか、これじゃ何発撃っても当たらんじゃないか!
「これは動きが早すぎる! なにかの間違いではないのか?」
「いいえ・・ 実際にはこれ以上とも聞きますよ・・」
自信喪失だ・・・
というか、ガンダムというモビルスーツ・・
連邦軍はとんでもない兵器を作った物だ
RX-78-2・・ ガンダムという機体に興味が出てくる・・
「このガンダムを操縦できるデータは無いのか?」
「それが・・ 無いのです・・ 軍機らしく・・」
「何が軍機だ! と言う事は、公表データとは異なると言う事か?
シミュレータでも良いから乗ってみたいものだがな・・」
タゴサ艦長が話に入ってくる・・
「確かに、そのような疑問は出ているようだけど、
RX-78-2の性能値は公表通りなのよ・・
ご存知と思うけど、グリフィンだってV作戦のテスト艦よね?
私たちは、その作戦のテストメンバーだったのよ・・
その筋からの情報なので、間違いは無いわ」
「ということは・・ パイロットがすごいのか?」
「そうね・・ そのような噂が出ているわね・・」
ほんとに世界は広い、こんな奴がいるとは・・
アムロ少尉が友軍で良かったと真剣に感じていた・・
「この最終モードの3対3で、一番高い得点を挙げているのが
大尉もご存知の、レイヤー中尉のホワイトディンゴ隊なの・・
まぁ、ホワイトディンゴ隊は陸戦部隊(陸軍)だから・・
かなり、彼らもやり込んでいるようね・・ やってみる?」
「えっ?、このシミュレータで、3人乗れるのですか?」
「確か、そのように聞いたけど・・ オビッチ軍曹?」
「はい・・ ただ、コックピットは1つしかありませんので、
あとの2機は実機のコックピットを使います、
インターフェースがあり、ケーブルで接続するとリンクされるのですが
実機を使うとなると、準備が必要です」
「そうなの? すぐには出来ないんだ・・ 残念ね!
私たちのMS中隊の実力を、戦隊員に誇示し、モチベーションを
上げれる良い機会だと思ったんだけど・・」
「1機は現在修理中のジム218がありますが、
もう1機は訓練に入りますので、余剰機体が無く・・」
「いや・・ 出来たら良いわね・・って、単純に思っただけよ・・
、でも、もし出来たら・・、現在宇宙軍では最高点を出している
バニング中尉の第3小隊には勝ってよね♪ 我らの意地にかけて♪」
「了解です、タゴサ艦長!
おい! ヤーク! クマ! その時はよろしくな!」
「いいっすねぇ!
シミュレータでこんなに熱くなれるとは、いつでも声をかけてください♪」
「了解! 21独立戦隊!ここにあり! って、
全連邦軍にその名を轟かせましょうや!! 作戦は考えときます♪」
「よし! じゃぁ・・ 次! ユカ少尉だ!」
と、タゴサ艦長との、お部屋掃除の事やヒロ中尉とリン少尉との交代の事・・
更に、マスミン大尉に呼ばれている事などもすっかり忘れ
ヒポグリフの左舷MSデッキはゲームセンターと化していた・・
そのとき・・
「ビー! ビー! ビー! エマージェンシー、レベル1!
総員第1戦闘配備! 艦長、士官はコントロールに!」
急にエマージェンシーが艦内に響きわたった!
「こちら艦長! どうしたの?」
「・・・ マサップです! サイド3からの航路上に艦影3!
こちらに進路を取っています! 識別レッド!
現在、距離35000!」
「解ったわ・・ すぐにそちらに行きます・・
グリフィンと繋いでね!」
「・・・ 了解!」
「大尉! 一緒に来て!」
「了解です・・ パイロットは自機で待機だ! いそげ!!」
・・・
ヒポグリフのコントロールでは、マサップ中尉がグリフィンと回線を繋ぎ
作戦内容を検討していた。
「どうなの?」
「はっ! 艦長・・ 戦隊長は『やりすごしたい・・』とのご希望ですが」
「そうね・・ 大事な海戦前に、できればドンパチしたくは無いわね・・
回線は繋がっているの?」
「はい! どうぞ!」
「こちらヒポグリフ、タゴサです・・ グリフィンどうぞ!」
「・・・ タゴ? マメハよ・・ 嫌な感じね・・」
「そうね・・ まっすぐ来てるようね・・」
「・・・ しばらく敵の動きを監視するけど・・
MS隊は出撃準備をしておいて・・
ワサビィ? そこに居るんでしょ?」
「はい! ワサビィです、パイロットには自機待機を命じています」
「・・・ ありがとう・・ 先ほど宇宙港の電灯類の電源は落としたので
目視では解らないはずだけど・・
サーマルセンサーには反応しちゃうので、このまま直進されると
100%ドンパチになるわ・・
というか・・ ここを狙って来ている!・・って考えているの。
ダミーの定時連絡は発信させているけど、内容は毎回同じ内容だし
補給もあるはずだし・・ ジオンもバカじゃないわ
そのために・・ ちょっと考えたんだけど良いかしら・・」
「どのような?」
「・・・ 外周コロニーの影に、第2小隊と第3小隊を配置し、
サイドから敵母艦を叩くの・・ できるわよね?」
「了解! そうなると前面は第1小隊ですね・・
敵艦は3隻・・ 想定MS数は9から12機です、
正面は第1小隊と第2小隊の8機で対応させた方が・・
敵母艦が、どの位置まで前進してくるか?も推定になりますし・・
つまり、前面でのMS戦が長時間になるリスクと、グリフィンなどとの距離が
近い場所での戦闘はこちらのリスクが高くなります・・」
「・・・ 第3小隊だけで敵艦を? できると思うの?」
「出来るはずです。ボールの機動性はMSより上ですよ。
ボール3機で1艦に集中攻撃をかける事は出来ますし、
実弾は対艦攻撃にも向いています・・
そうなったら、敵MSは母艦を守りに行くはずです・・
いや・・ 母艦は宇宙では命綱です、絶対にジオンのMS隊は2手に分かれます
更にセイバーブースターYUKIKAZEが使えたら・・」
「・・・ 残念だけど・・セイバーブースターは
まだ修復には時間がかかりそうとの報告が来てるわよ?」
「そうですか・・ まだ、使えないのか・・
でも・・ 大丈夫ですよ! ただ・・ 敵のMSが艦を守るために
帰ってきた後が大変ですが・・」
「・・・ そこなのよ! だから第2小隊も・・」
「いえ・・ 基本は第3小隊で対処させます・・
細かな事は、こちらで考えます、ただ・・ グリフィンもヒポグリフも
発進準備をお願いします・・ 宇宙港から出てもらう可能性も・・」
「えっ? でるの?」
「はい、タゴサ艦長・・ レイテを守らないと・・」
「・・・ 聞こえたわ・・ そうね、ヒポグリフは発進準備を!
その時はグリフィンも一緒に出るわね!」
「よろしくお願いします!
ユカ少尉! 聞こえているか?」
「・・・ はい! 第2小隊、発進準備中です!」
「カタパルトには? 誰が乗っている・・」
「・・・ 第1小隊の援護だと判断し、ミィ少尉のスナイパーを・・」
「おう! 正解だ!
ジム1機はミィ少尉の護衛に回せ! 装備はA装備だ!
あとの2機は第1小隊に合流後に白兵援護に入れ!」
「・・・ 了解です、A装備1機とB装備2機で準備してました・・
そうなったら、全機A装備が良いですね・・」
「そうだな・・ 任せる!
とにかくスナイパーでの援護が第1小隊には必要だ!」
「・・・ 了解です!」
「オーリン准尉! 準備はどうだ?」
「・・・ こちら第3小隊、いつでも出れます。
グリフィン右舷デッキで、既に発進準備はクリアです!」
「聞いていたと思う・・ 解るな・・」
「・・・ 大体はね♪
要は外周コロニーの影を利用して、敵艦に近づき
しとめろ!って事よね
大丈夫よ! 敵は3隻とか言ってたわね? 艦種は?」
「マサップ中尉・・ 艦種は解るか?」
「そうですね・・ 月の昼部分を背後に進んできていますから
特定が難しいのですが・・ 大型艦ではないですね・・
「ということだ・・ ムサイ級と考えてよいだろう・・」
「・・・ だったら、下方からか・・
敵艦を重ねて死角をつくり、1隻に集中攻撃をかけるね・・
ただ、近接しないとダメなので、ザクはそっちでお願いよ!」
「ああ・・ 頼む・・
第3小隊が今回の作戦の肝だ! とにかく1艦で良い、ダメージを与えて
後は、臨機応変に第1小隊と第2小隊の援護を頼む!
ただ・・・ 万一ムサイからザクが出てくるかもしれん・・
その時は、全力で逃げろ! いいな! これは命令だ!」
「・・・ 了解よ! ザクは出てこないで欲しいよね・・」
「ああ・・ 私も祈っておくからさ・・」
「・・・ ご利益はあるのかしら? まぁ、無いよりましね・・ 了解よ!」
「ヒロ中尉! どうだ?
「・・・ もう待ちくたびれてるよん♪」
「ちょっと待っててくれ・・ そっちに行く・・」
「・・・ ラジャ!!」
「マメハ戦隊長! お聞きの通りの大雑把な作戦骨子ですが・・これで行きます
MSデッキに行きますので、何か変化があったらお願いします!」
「・・・ 解ったわ、常に通信回路はオープンでお願いよ!」
「了解! タゴサ艦長・・ あとは頼みます!」
・・・
ヒポグリフの右舷デッキでは、既に第1小隊が発進準備が終了していた。
見ると、天井の吊り下げ型カタパルトに2機、床部カタパルトに2機の
ジムコマンドが横たわる形で設置されている・・
「な・・ なんだ? このセットアップは!」
「あっ・・ 大尉!」
「モジト軍曹・・ これは・・」
「言ってませんでしたっけ・・
ジオンのムサイ級の仕組みをヒントに試作されたカタパルトです
奴らは狭い艦内で効率的な配置をしていますね・・
重力圏ではないので、立ち状態でのカタパルトは不要ですから・・」
「いや・・ そうじゃない・・ 1つのカタパルトに2機できるのか?」
「あっ・・ そちらの事ですか? これも軍機なんですが・・
左舷と右舷で、合計8機の連続射出が可能なんです。
上部と下部で1秒以内に2機、後方から残り2機は3秒以内に射出可能です。
つまり、8機を4秒で射出できます・・」
「だからMSデッキ班長が2人必要なのか・・ 」
「まぁ、初回発進だけですけど・・ 基本設計は、回収効率と連続再発進ですが
その実現性を考慮したら、このような事も出来る仕様になったと・・
ただ、整備デッキが無いので、整備班には申し訳ないですが・・」
「なるほど、一長一短だな・・ ヒロ中尉! 聞こえるか?」
「・・・ ほーい! 聞こえてますよん♪
つぅか、ジムコマンドって頭上カメラが無いんで、前が見えないし・・
なんか気分が変っす・・
でも、ジオンってすごいですね・・ 奴らってこんな感じなんだ・・」
「ああ・・ そうだな・・ というか、ムサイ級のMSデッキはもっと狭いぞ
上下のMSが擦れるぐらいの距離で設置されているはずだ・・
宇宙では限られた空間を如何に効率的に設計するかがポイントだが、
さすがスペースノイドだ・・ジオンの方が連邦軍より上だと思う・・
で・・ 本題だが・・
ほぼ確実にMS戦になる、最初の数分は第1小隊4機で、ザクなど9機から
12機を相手にする可能性もある・・」
「・・・ ですよね・・聞いてました・・ 12機かぁ・・ きついや・・
というかこっちに来る敵が9機以下だったら第3小隊がやばいし・・」
「多分最初は9機程だと思うが・・ それはあくまでも機数は推測だ!
ただ・・ スカート付きが出てきたら、総数が減るはずだ・・」
「・・・ ん? どして?」
「ああ・・ 調査資料によると、ムサイ級はザクなら4機格納できるが
リックドムなどの大型MSは3機だと書かれていた・・」
「・・・ そっか・・ スカート付きだけだったらMAX9機かぁ・・」
「そういうことだ・・」
「・・・ で・・第2小隊は?」
「想像通り発進に少々の時間がかかる・・
つまり、第1小隊が尖兵だ! 時間を稼いでくれ!」
「・・・ 了解っす! じゃ距離を保てる体制を組むかぁ・・」
「さすがだな! そう言う事だ、あとは第2小隊と第3小隊が均衡を崩す、
狙撃でミィ少尉が援護に着くので、ジオン側の体制が崩れるまで、
できるだけ白兵には入らず、射撃で交戦するほうが有利と思う・・
まぁ臨機応変に対処頼む!
ただ、発進のタイミングがきわめて重要だ・・ 私が指示する・・
モジト軍曹! 発進のタイミングは私の指示を待て! いいな!」
「・・・ 了解しました!」
「ヒロ中尉! 発進コールも無しで、いきなり行くぞ! 良いな!」
「・・・ 了解っす♪」
「・・・ マサップです! ワサビィ大尉! 応答どうぞ!」
「ワサビィだ! なんだ?」
「・・・ 敵艦から射出物をサーチ、数6つ・・ MSと思われます・・
敵艦を先行し、こちらに向かってきます・・」
「了解だ! 6機か・・ 1波と2波に分かれるな・・
MS中隊全員に告ぐ! どうやら避けられんようだ、
全員、生きて帰れ! 命令だ!」
<第37話>被弾!そして・・に続く
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