「(第1話)きっかけ・・」
「(第2話)待ち合わせ・・」
「(第3話)イタメシ屋・・」
「(第4話)ワイン・・」
「(第5話)胸・・」
------------------------------------------------------------------------------
神様のいたずらなのか?、妖精の気まぐれなのか?
理由は全く解らないのだが、楽しい時間は本当に早く経過してしまう
気がつくと、店に入って既に3時間が経過していた・・
ワインの甘さにも負けて、ボトルは3本目が空になっている・・
「わ・た・しぃ・・・ ちょびっと酔っちゃいました♪ てへっ・・」
「そうだね・・ いい感じに仕上がっているね♪」
「女性の酔っ払いって・・ お嫌いですか? 」
「いや・・ 酔ってっても酔って無くても、君は君だ・・ 嫌いじゃないよ・・」
「嫌いじゃ無いって事は・・ す・き? って言う事ですかぁ?」
「おいおい・・ 大丈夫か? 本当に酔ってるのか?」
「そんな事はないですよ~ で・・ どっちなんですか? す・き? きら・い?」
「参ったなぁ・・ 好きだよ・・ 」
「やったぁ! 今、私の事を『好き』って言いましたよねぇ~ ♪
へっへぇ~・・ ドサクサにまぎれて、私の事をくどいてるんだぁ!」
「いや・・ 君が好きか嫌いか?って聞いたから・・ 好きって答えただけで・・」
「でしょう? すきなんだぁ・・ ああ! なんか幸せっ!!
お世辞でも、好きって言われると、気分は悪くは無いですよ・・ ♪」
「そ・・ そうか? そんなもんなのか?」
「そうですよぉ・・ じゃ・・ 試してみましょうか?」
と・・ 彼女は私の耳元に口を近づけてきて・・ ささやくように・・
「・・ す・・ き・・ 」・・と
彼女の息遣いが耳に感じられ
頭のテッペンから足先まで、電気が走った・・
一体なんなんだ!・・
「どう?・・ 嫌な感じじゃないでしょ? ふふっ・・ ねっ!」
と無邪気に笑う彼女の顔に、私も笑うしかなかった・・
本当に楽しい子だ♪
彼女はすっかりと上機嫌で、常に肩がふれあい、その重みとぬくもりを
心地よく感じ、また、しっかりと受け止めている自分がそこにいた・・
座席の関係もあり、顔と顔の距離も短く、常に彼女の整った唇が目について離れない・・
この時間が永遠に続けば良いのに・・ と感じていたが・・
世の中、そんな上手くは出来てはいない・・
「あっ・・ もうこんな時間ですねぇ・・」
「ああ・・ お尻に根っこが生えたみたいに、居座ってしまったね・・
お互いに、ちょっと酔ったみたいだし・・」
「そろそろ出ましょうか?」
「そうだね・・」
「いくらかなぁ・・ ワリカンで良いですよね!」
「いや・・ 私が無理にここに誘ったから、今日はこちらで何とかするから・・
気にしなくて良いよ・・」
「えっ? 良いんですか? ひょっとしたら・・ 会議費ですか?♪」
「まぁ、そんなもんだ・・ ♪」
「は~い!♪ ご馳走様で~す!」
私は支払いを済ませ、外に出た・・ 既に夜の10時をまわっているのに
じっとりとした熱気が冷えた体にのしかかってくる・・
「やっぱり・・ 外は暑いね・・」
「そうですね・・ で・・すっかり夜になっちゃいましたね♪
これって不良の時間ですよね♪」
「そうなのか?・・ 不良の時間か?・・ 私は、宵の口と言うけどね・・」
「酔いのくちぃ?♪」
「ははは! 座布団1枚だな♪
違ってるよ・・ 宵の口だ! まだまだ、これから!って事だな ♪」
「そうなんだ・・ ひょっとしたら、曜日を間違えちゃいましたね・・」
「ん? なぜ?」
「だって・・ 明日も仕事だもん・・ 金曜日にすれば良かった・・」
「ああ・・ そういうことかぁ・・ おっちゃん連中で、はしごする条件が
金曜だもんな・・ やはり、平日は次の日が辛いから・・」
「平日に、はしごした事があるんですか?」
「若いときは曜日は関係なかったからなぁ・・ 昼間はガッツでユンケル飲んで・・」
「へぇ・・ ユンケル飲んで頑張ってるのぉ?・・ なんか、間違ってるぅ♪ 」
と、お馬鹿な話をしているうちに、2人は駅に到着していた・・
この駅は、他の電鉄との乗換駅だが、2人が乗る電車は始発駅である・・
3つ目の駅で、私は別の路線に乗り換えるが、彼女はそのまま乗っていくのだ・・
切符を購入し改札を入った時、電車の発車のベルが鳴った・・
「あっ! 待って! 乗りま~す!!」
と、とっさに私は彼女の手を掴み、慌てて改札から一番近いドアから飛び乗った、
車内は首都圏ほどでは無いがかなりの混みようで、押し込むように車両にもぐり込む
2人は急いで入った事もあり、私の顔のすぐ下に彼女の頭があるような
ほぼ密着状態になってしまっていた・・
「ふぅ・・ 間に合ったね・・」
と声をかけようとして、ふと気がついた・・ 彼女の顔が見えない・・
というか、彼女の頭の真上に私の顔があるのだ・・
彼女がかろうじて顔を持ち上げ
「はい・・ 間に合いました・・ ・・」
と小さな声で言い、すぐに顔を下に向けた・・ ほんとに小さな声で・・
「どうしたの? しんどいの?」
「ううん・・」
今度は顔を上げずに言う・・
その時、私はあることに気がついた・・
それは、私の手が何かを握っていて
その何かが、逆に私の手を握り返してきたからであった・・
それは、柔らかく、あたたかく・・
私には、それを振り解く勇気を持ち合わせてはいなかった・・・
「(第7話)電車・・」に続く・・
------------------------------------------------------------------------------
←良かったら押してね♪