怒涛の20世紀の歴史は、イデオロギーの歴史でもある。単純に資本主義対共産主義というだけではない。共産主義といっても数あり、資本主義といっても民族主義的だったり社会主義的だったり一筋縄にはいかない。資本主義は民主主義国家が多いせいで、大統領にしても首相にしても選挙で選ばれるから英雄にはなりようがない。強いて言えばイギリスのチャーチルだろうか。だが大戦後イギリス人は彼を首相には選ばなかった。アメリカのルーズヴェルトは寿命で英雄になり損ねた。軍事クーデターで政権を転覆してのちに民主主義的な政権を作る、まあ共和国という名の独裁政権だな。イラクのフセインやシリアのアサド、リビアのカダフィなどだろうか。イスラエルは議会制民主主義だが、初代首相のベン=グリオンはイマイチ英雄とはされていないような気がする。第一次中東戦争で勝ったにもかかわらずだ。多分彼が、建国=亡国と言っていたからかもしれない。そう言いたくなるほど悲惨な建国だった。あとは共産国に英雄が多い。英雄というのは結局戦争に勝たないとそう言いきれない何かがある。その意味で革命戦争は大きい。中国の毛沢東が勝てばいいんだ的な戦闘をし続けても、結果権力闘争で勝ったソ連のレーニンもある意味英雄なのだが、晩節を汚した。
しかし最強の国家と戦い続けたというのは、そうそういない。ベトナムのホー・チー・ミンとキューバのフィデル・カストロくらいだろうか。特にアメリカの裏庭である中南米で戦い続けられたのは奇跡としか言いようがない。そして英雄の称号を保持できたのもすごい。何しろアメリカの裏庭は、長い手で英雄は常に堕落するという法則に則り、悲惨な状況になるのだ。ベネゼエラのように石油で頑張った結果、モノカルチャーの怖さを現在体現しまくっている。今でもそうだが、なぜハイチが悲惨なのかと言えばキューバ憎しのためにアメリカが独裁者を優遇しすぎたためだ。
アメリカがキューバを憎んでいるのは裏庭のど真ん中というだけではない。ソ連崩壊後もいくらでも懐柔できたのにしなかったのは、フィデルがいたからだ。あの頑迷な共産主義者が何をしたのか、アメリカ資本を一方的に摂取したのだ、ハーシーやドールの資本だ。サトウキビプランテーションと工場と鉄道と土地と。保証なしにだ。今まで稼いだでしょう?ということだった。これは財産権の問題になる。そして富裕層への弾圧も行った。拷問に関してはどうだったのかはわからないが、ヒッグス湾事件があまりにも大きかったと思われる。独裁者に対してのこのお粗末な事件は、疑心暗着を産んだだけで終わる。多分拷問はこの頃だと思われる。そしてソ連に近づいてキューバ危機以降は、大国が自国の頭上を越えて解決してしまったものだから、ますます意固地になる。制海権も全て失われた国の元首というのは一体どう言ったものなのだろうか。
幸いにキューバをソ連や中国・ベネゼエラが助けてくれてなんとかなってきた国だ。時代が生んだ奇跡としか言いようがない。
なぜ共産主義だからと言って、彼を助けたのか?ちっぽけな島国だ。主な産業は音楽と野球選手と医療従事者・医者だ。砂糖やコーヒーもあるが、キューバはカストロが貧民相手の弁護士だったということで、貧民救済には医療と食料が大切と考えていた。食料に関しては砂糖モノカルチャー進みすぎて現在まで続く問題になっている。だが教育無償化で高学歴者が多いのもキューバの特徴で医者が多い。そこでベネゼエラとの医療と石油のバーター取引ということにもなる。
ただね、教育無償化で高学歴エリートがキューバのために身を粉にするというわけではない。亡命者に高学歴が大きのはそういうことだ。そして医者も優秀であればあるほど他国で稼いだほうがいい。なので亡命する。そう言った悪循環にある。
エリート以外では娯楽としての音楽と野球がある。多分これらは国策ではないだろう。だけどなんでアメリカに輸出するのかな。
まあいいや。
フィデルは確かに残虐な独裁者だったかもしれない。財産権に関しては最初に無視した。言論の自由も無視したが、街頭演説は欠かさなかったというよくわからん対処法だった。建国時の難民は富裕層だった。次のボートピープル時代はえらく変だった。最初は規制し、あとは放任した。そしてそれは今もそのようだ。フィデルはキューバにいたい人だけがいればいいと思っていただろう。貧しすぎるが故の娯楽の音楽が発展し野球選手は強くなる。
ワイロを受けた政府高官は処罰された。特にアメリカ企業と関係あれば厳罰された。そういった清廉さのある独裁者は多分今後、いたが死んでしまったビン・ラディン程度だろう。ただビン・ラディンは政府を作る前に死んでしまった。そして彼は一原論者だったので国家は作れなかっただろう。あとはどうもいそうにもない。
アメリカは世界をどう見ているのだ?フィデルはアメリカと戦い続けたドンキホーテでありロビン・フッドでもあった。誰もがアメリカのことを嫌いだったからこそ、フィデルがあの小国で英雄でい続けたのだ。だから誰かが手を出していたのだ。カナダが外交関係は保っていたのもその一つだろう。
どこかのバカが国交回復もやめると言った。ますます英雄が光り輝くだけではないのか。アメリカでは貧しくて医療も受けられないし、フードスタンプ制では太るだけの栄養失調者ばかりを生み出していても、それが自由だというのはどうなのだ。
ラウル・カストロがまだいるのに。引退宣言しているが、こいつは兄より手ごわいぞ。
冷戦期のつまらないがえらくきつく痛い棘が抜けたと喜んでいるようでは、どうしようもない。せめて勝者が敗者に贈る言葉すら述べられない、彼らに失望し、最後の最後までフィデルはアメリカに勝ってしまった、そう考えよう。
あれは負け犬の遠吠えだ。