「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの時事問題:日本の安全保障

2010年11月11日 | 時事随想


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多くの人が、『安全保障』という言葉を聞いて想い出すのは、日米安全保障条約、日米安保でしょう。

1960年の新安保条約の締結に至る日本を二分する騒動は、幼かった私にも鮮明な記憶として今でも刻まれています。

この日米安保条約は、アメリカ合衆国が日本を防衛することを主眼とした、日米軍事同盟と言ってよいと思います。


しかし、『安全保障』という言葉は、単に軍事的な側面だけを示す言葉ではありません。

『安全保障』の定義は、「ある集団が生存や独立などの価値ある何かを、その価値の保全を脅かす何らかの脅威から、何かの手段を以って守ること、またその国家の体制を指す」とされています。

かつて安全保障は、軍事的な脅威に対する側面を主に指した言葉でしたが、冷戦後は外交や経済や環境などを含む広範囲な領域を含んだ言葉として使われているようです。



今年は、例年になく町中の紅葉が美しい!


最近、『安全保障』という言葉が、私の頭をよぎる出来事が二つありました。

一つ目は、『中国がレアアースを含むレアメタル輸出枠を削減する』という報道によって想起された、『資源・エネルギーの安全保障』の問題です。

レア・アース=希土類元素(きどるいげんそ)は、スカンジウム 21Sc、イットリウム 39Y、ランタン 57La からルテチウム 71Lu までの17元素からなるグループです。

レアメタル=希少金属(きしょうきんぞく)は非鉄金属のうち、様々な理由から産業界での流通量・使用量が少なく希少な金属のことです。

レアメタルは、狭義では、鉄、銅、亜鉛、アルミニウム等のベースメタルや金、銀などの貴金属以外で、産業に利用されている非鉄金属を指します。

例えば、自動車産業で使用する白金やパラジウム、半導体産業のタングステン・モリブデン・ニッケルなどが、レアメタルの範疇に入ります。

レアメタルは、現代の産業の根幹を為す分野で使用する原材料として 必要不可欠なものとなっています。


レアとは、珍しいとか稀なといった意味を持つ英語ですから、よく子どもが「レア物」といって珍重する玩具やお菓子なども、そうした意味で使っています。

しかし、これらの金属がレアなのかというと、実はそうでもないらしいのです。

一般にレアメタルが希少な理由は、地殻中の存在量が比較的少なく、採掘と精錬のコストが高く、単体として取り出すことが技術的に困難で、製錬のコストが高いといったことによります。

たぶん、極めて低い人件費と、ある程度の製錬技術が共に存在した中国が、現在世界で使用するレアメタルの多くを産出する理由と考えられます。

この資源を人質に使った外交手段は、当然非難されるべきですが、『資源・エネルギーの安全保障』を疎かにした政府に対する非難は、免れません。

速やかに、レアメタルの多角的な入手手段を模索するとともに、レアメタルの再利用を積極的に推進する必要があります。


ところで、資源を外交の手段に使うことは、今回の中国に限らず、歴史的に見て常套手段であったと言えます。

例えば、太平洋戦争の端緒ともなった、アメリカによる日本に対する石油輸出の全面禁止などは、アメリカから多くを輸入していた日本にとって致命的といってよい事態でした。

今回のように、積極的に資源外交を展開している中国によるレアメタル輸出枠削減が打ち出された後に、あたふたする近視眼的な外交ではなく、もっと長期的な視点に立脚した資源やエネルギーにおける日本の『安全保障』を早急に推進してもらいたいと、私は考えます。



桜の紅葉も、ハッとする美しさ


二つ目は、環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)について、関係国との協議を開始すると明記した「包括的経済連携に関する基本方針」を閣議決定したと伝えられたことによる、『食料の安全保障』の問題です。

TPP(環太平洋戦略的経済連携協定:Trans-Pacific Partnership)は、自由貿易協定(FTA)の物品およびサービスの貿易自由化に加え、貿易以外の人の移動や投資、政府調達などの分野も含めた包括的な「貿易障壁」撤廃を、多国間で協定しようとするものです。

FTA(自由貿易協定:Free Trade Agreement)とは、二国間または地域間(多国間)の協定により、モノの関税や数量制限など貿易の障害となる壁を相互に撤廃し、自由貿易を行なうことによって利益を享受することを目的とした協定のことです。

TPPは、例外品目がなく100%自由化を実現する質の高いFTA であるとされています。

報道によると、TPPへの参加を強く求めているのは大企業および財界で、農林水産業従事者および沖縄や北海道などの地方公共団体が反対に回っているようです。

国際競争力があり、自由な貿易を行うことによって利益を得られる自動車や弱電メーカーと、国土が狭く人件費がかさみ、国際競争力のない第一次産業の従事者との、相容れない主張の対立と見ることができます。


かつて日本では、輸入制限で国内の果実や畜産農家を保護してきましたが、アメリカなどからの圧力を受け、1991年に牛肉とオレンジを自由化(小学生の社会科にも出てくる重要事項)した経験があります。

このオレンジの自由化は、みかんを生産していた農家に対して大打撃を与える結果となりました。

農水省の資料では、『かんきつ(うんしゅうみかん及び晩かん類)生果の消費は、昭和50年以降、食生活の多様化や他の果実の増加に伴い、減少傾向で推移したことから、自由化による影響の程度は明らかではない。一方、果汁は、輸入量が急増し、消費量が大幅に増加(生果の消費量に匹敵)する中で、国産果汁の消費量は大幅に減少した。』としています。

TPPは、例外無き完全自由化の自由貿易協定になりますので、農業分野への打撃は厳しいものとなることが予想されます。

現在日本は、食糧自給率の低い国であり、食料の入手可能性とその方法に関しての『食料の安全保障』に対して、心細い印象を私は受けます。

TPPの仲間入りをして、現在よりも一層食糧自給率を下げた後で、食料を人質とした外交を、例えばアメリカに実行されたら、日本は餌を待つアメリカの従順な飼い犬として生きる他はないようです。



晩秋の青空に浮かぶ飛行船


TPPに参加することに、私は反対する立場ではありませんが、もう少し議論を深め国民のコンセンサスを得て、長期的な展望…すなわち『国家の安全保障』をしっかりと見据えてから、前進することも必要ではないかと考えます。

ここまで外交の分野で出遅れ、また戦略的(最近、意味不明な戦略的互恵関係という言葉が流行ったが)にも戦術的にも稚拙な政府(無論、現民主党政権より、旧自民党政権に非がある)が、国際会議間近()という時期的な考慮もあるのでしょうが、今更あたふたしてもしょうがないと思うのは、私だけでしょうか。


※横浜で開催される21カ国・地域が参加するアジア太平洋経済協力会議(APEC:Asia Pacific Economic Cooperation)首脳会議
およびソウルで開催される20カ国・地域が参加するG20(Group of Twenty)首脳会議


(TPP、FTAの他に、最近話題となった言葉に、菅直人首相がソウルで開催されたG20首脳会議に出席の折、欧州連合(EU)のファンロンパイ大統領とバローゾ欧州委員長に対して交渉開始を提案した、経済連携協定(EPA)があります。

この経済連携協定(EPA:Economic Partnership Agreement)は、経済条約のひとつで、自由貿易協定(FTA)を柱として、関税撤廃などの通商上の障壁の除去だけでなく、締約国間での経済取引の円滑化、経済制度の調和、及び、サービス・投資・電子商取引等のさまざまな経済領域での連携強化・協力の促進等をも含めた条約です。)



小春日和の陽光を受け、燦然と輝く黄葉



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