「マッキーのつれづれ日記」

進学教室の主宰が、豊富な経験を基に、教育や受験必勝法を伝授。また、時事問題・趣味の山登り・美術鑑賞などについて綴る。

マッキーの算数指導法『特殊算』…『流水算…その4・中学入試問題《灘中学校》』

2009年08月07日 | 学習指導法
今回の文章題は、『流水算』の4回目として、関西の雄『灘中学校』の今春の入試問題を取り上げます。

この問題は、純粋な流水算と言うよりも、『歩幅と歩数』に関する考え方と、『動く歩道』という流水算的な物の考え方・比の上手な使い方などを試す問題です。

条件が込み入っていますから、しっかり条件を整理して、問題を解く道筋をつけてから、式をたて計算します。

流水算の基本的な考え方は、以下の1回目にまとめましたので参考にしてください。

『流水算…その1・中学入試問題《浅野・吉祥女子》』



灘中学の今年度の算数は、第1日が、計算を含むどちらかと言うと小問形式13題でテスト時間60分、計算力と素早く解答する能力が問われます。

第2日は、比較的大きな問題5題でやはり60分、思考能力と根気強く問題を解く意欲が問われる問題を中心に出題されています。

この出題形式は、多少時間が変更になった以外、少なくとも30年間変わっていないようです。

以前は、西日本の中学校の算数は、非常に研究された良問が多く、そうした問題が時間を置いて東日本の中学入試問題に反映されるといった印象がありました。

現在は、首都圏を中心とする進学校が、切磋琢磨して算数の良問を量産している感があります。



ノカンゾウの花(ユリ科)
…今回の画像は、8月1日に小仏~景信山
~明王峠~相模湖駅まで歩いたときのものです


今回取り上げた問題は、第2日目の【4】の問題です。

何度も特珠算の解法で指摘しているとおり、与えられた問題の構造を理解するために、条件を整理することから始めましょう。

難易度の高い学校…灘中学校の問題でさえ、条件をしっかりと整理できれば、比較的簡単に解くことができます。

どんなに難解な問題でも、基礎的な事柄によって組み立てられていることが多いので、その問題構造を理解できれば、後は細心の注意を払って式をたて計算していけばよいのです。

最悪の解き方は、問題構造を理解せずに、思いこみによって式をたて、それを解いて答えを出すことでしょう。

そうした方法で答えを出してから、題意にそぐわないので、「あれ、おかしい?」などと、時間の浪費をしてしまうような学習は避けましょう。


では、こうしたことに注意して、初めての関西方面の中学校の入試問題となる灘の問題を、家庭で教える場合の解き方について考えてみましょう。

また、家庭で教える場合、問題を解く手順に分解し、その各項目ごと(いわば基本的小問に分解する)に子どもに質問していって、その結果、全体の解答の流れを教えていくといった指導は、基本事項の習熟度チェックにもなりますので、難易度の高い学校の入試問題を家庭で教える場合の、有効な算数指導法です。



ヤマユリ…この時期、この山域に、いたる所咲いています


【問題1】灘中学校 第2日【4】

A地点とB地点があり、その間を一定の速さで進む「動く歩道」がある。兄と弟がこの「動く歩道」を、A地点から同時にそれぞれ一定の速さで歩き始めました。
 兄が4歩歩く間に弟は3歩歩き、弟の歩幅は48cmで兄の歩幅の0.8倍である。兄はちょうど80歩でB地点につき、弟は兄より16秒遅れてB地点に着いた。
 もしもこの「動く歩道」が止まっていたならば、兄はA地点からB地点までちょうど112歩で歩くという。次の各問いに答えよ。

(1)この「動く歩道」の速さは毎秒何cmか。

(2)弟は「動く歩道」をA地点からB地点まで何歩で歩いたか。



【ヒント】

まず与えられた条件を整理してみましょう。

『兄が4歩歩く間に弟は3歩歩き』という条件から、2人の一定時間の歩数の比が出ます。

歩数の比…兄:弟=4:3

『弟の歩幅は48cmで兄の歩幅の0.8倍』という条件から、兄の歩幅が出ます。

48÷0.8=60cm

歩数と歩幅から、2人の速さの比を出します。

(歩幅×歩数=道のり。時間一定のとき、この道のりの比が、速さの比となる。)

60×4:48×3=5:3

よって、兄の速さ:弟の速さ=5:3


次に、兄はちょうど80歩でB地点につき 「動く歩道」が止まっていたならば、112歩でB地点につくという条件から、兄と動く歩道の速さの比を求めることができます。

この条件から、兄が80歩歩く間に、動く歩道は兄の歩数に換算して、112-80=32歩ぶん、進んだことが分かります。

よって、兄の速さ:動く歩道の速さ=80:32=5:2、となります。


以上求めた数値から、兄と弟と動く歩道の速さを、連比を使って表してみましょう。

兄:弟:動く歩道=5:3:2…この数値が、この入試問題を解く最も重要な値となります!


あとは、残された与えられた条件…『弟は兄より16秒遅れてB地点に着いた』…この条件を使って解いていきましょう。



オオバギボウシ


【問題(1)・解答】

ヒントで求めた速さの連比、兄:弟:動く歩道=5:3:2を使い、動く歩道上の、兄と弟の見かけ上の速さを、流水算的な考え方を使って求めます。

(兄の速さ+動く歩道の速さ):(弟の速さ+動く歩道の速さ)となり、

(5+2):(3+2)=7:5 と出すことができます。

道のり一定の時、速さと時間は反比例することを使うと、

兄と弟がA地点からB地点まで行く時間の比は、速さの比の逆比の5:7となります。

よって兄が5、弟が7の割合で、A地点からB地点まで時間がかかりました。

すると7-5=2に当たる数が、最後の条件『弟は兄より16秒遅れてB地点に着いた』の16秒となることに気づくでしょう。

よって、兄と弟のA地点からB地点まで行くのにかかった時間はそれぞれ、

兄=16÷2×5=40秒  弟=40+16=56秒 となります。


動く歩道上を兄が歩いた道のりは、

歩幅×歩数=60cm×80歩=4800cm

この間に、動く歩道が動いた道のりは、ヒントで求めた兄と動く歩道の速さの比5:2を使って、

4800÷5×2=1920cm

その道のりを進むのにかかった時間は、40秒と出ていますから、求める動く歩道の速さは、道のり÷時間で、

1920÷40=48cm/秒…(1)の答え



シシウド


【問題(2)・解答】

この問題は、簡単な問題ですが、子どもにとって比較的勘違いしやすい問題の一つです。

一定の時間で2人の進む歩数の比は、条件より…兄:弟=4:3

すると兄は、40秒で80歩歩くことが分かっていますから、同じ40秒では、弟は80×3/4=60歩歩くことになります。

弟がA地点からB地点まで行く時間は、ヒントのところで、56秒と出しています。

よって、求める弟の歩数は、この56秒間の歩数となりますから、

60÷40×56=84歩…(2)の答え



夜空の花…近くの花火大会の画像


【ちょっとお知らせ】

さて、私の今回のブログを、ここまで読まれた方は、忍耐力がある方か、算数に興味をお持ちの方、御三家を目指す保護者の方、私の知り合い、または研究熱心な教師ということになるでしょう。

私自身にとっては、とても面白い内容ですが、小学生が学習する内容といっても、こうした内容に慣れない大人にとっては、頭が痛くなる内容かもしれません。
…最後までお読みの方には、頭が下がる思いです!


ところで、これからの予定ですが、8月8日から9日にかけて、私は南伊豆下田の爪木海岸で、シュノーケリングを楽しむ予定です。

これは、『爪木詣で』と称して、下田に集合するグループがあり、昨年から私も参加させてもらっている、とても楽しい会です。



花火の土星


それから、9日に東京に戻った後、あわただしくその夜の夜行バスで、これまた私にとって恒例の『夏山登山』に出かけます。

行き先は北アルプスで、今回のルートは、裏銀座コースから黒部五郎岳を経由し、太郎平から富山方面に下山します。

そして、故郷新潟に帰省し、19日から始まるサマースクール後半授業に間に合うよう東京に戻る予定です。



夜空に浮かぶチョウ


この間、私の前にはパソコンはありませんので、不慣れな携帯のフルブラウザを使って、そして携帯の画像を添付して、日本各地の夏を皆さんにお届けできたら私も幸いです。



夏の夜空に花束を!


詳細なブログは、上京した後に投稿するとして、夏の雰囲気だけでも味わえるブログを、携帯を使って簡略な内容で投稿しますので、よろしくお願いします。





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