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青磁は奥の深い焼き物です。今日は青磁一筋に作陶を続けている浦口雅行さんを紹介します。青磁という言葉に磁という文字が入っているからと言って、必ずしも磁器ではありません。石物の青磁もありますが、土物の青磁も存在します。もっと専門的な用語を使うと、釉薬の下の器を形成する土を胎土といいますが、それが石物の土であれば磁胎青磁となり、土物の土であれば陶胎青磁となります。すなわち青磁には大きく2種類の焼き物があることを知っておく必要があります。
日本における代表的な青磁の作家は、青磁で人間国宝となった三浦小平二と中島宏、それに陶磁協会賞を受賞している川瀬忍・鈴木三成、また鉄釉陶器で人間国宝となった清水卯一の青磁にも、素晴らしい出来栄えの作品があります。
陶胎青磁の多くは、胎土とガラス質の釉薬との収縮率の違いから、貫入が入ります。、亀甲貫入とか氷裂貫入と呼ばれるものもあり、青磁の焼物の景色ともなっています。
(青磁茶碗 93年新宿京王)
青磁の起源は、青銅器をかたどった宗教的な儀式に用いられた器でした。また、窯の中で降灰したものが溶けてガラス質に変化し 釉薬代わりとなる自然釉(灰釉)が掛けられていました。ですから初期は、灰黄色や灰緑色をしていて、それらを原始青磁と呼んでいます。
唐時代の「越州窯」(えっしゅうよう)で青磁が作られましたが、その色はオリーブ系の渋い色をしていました。その後、北宋時代に「汝窯」(汝官窯)でつくられた青磁は、薬の配合、釉薬の厚み、焼成温度など、工夫がかさねられた結果、淡い青色の青磁が完成しました。青磁の目指す色は、「雨過天青」の青であり、それは 「雨過ぎ、天青く、雲破るるところ、このような器をつくり、もち来たれ!」 と命じた、皇帝の望みだったのです。
(青磁花入 95年日本橋三越)
青磁のやきものにかけられる釉薬は、 木灰に長石の粉を混ぜてつくられます。その青磁の釉薬にわずかに含まれる鉄分が、通常の火力で焼かれると、鉄が酸素と化合して、赤茶色に発色します。これを酸化炎焼成と呼びます。一方、青磁の釉薬は、酸素不足の窯の中で焼かれると、酸化鉄の中の酸素が奪われ還元され、 赤茶色ではなく青色に発色します。これを還元炎焼成と呼びます。この二つの焼成方法は、焼物について考える時、重要な要素となります。
このように進化してきた青磁ですが、歴史上もっとも美しい青磁として世に知られているのは、 中国・南宋時代のものといわれています。宮中のすぐそばに築かれた 「南宋官窯」(なんそうかんよう)、淅江省龍泉県にある「龍泉窯」(りゅうせんよう)などで作られた青磁が特に有名です。主要な青磁を排出した「龍泉窯」は、カオリン質の灰白色の土に恵まれ、器胎が白い土でつくられていることと、釉薬に貫入が入っていないことで、 玉のような美しく澄んだ 碧翠に仕上がっています。龍泉窯でつくられた青磁に砧青磁(きぬたせいじ)と呼ばれるものがあります。龍泉窯でつくられた青磁のうち、粉青色の上手のものを日本で「砧手」と呼んだことに由来します。 砧青磁の素地は灰白色で、釉薬は厚く掛けられていて、釉肌は粉青色と呼ばれる鮮やかな青緑色をしています。 青磁の中でも最も優れたものとして、日本でも古くから珍重されてきました。
(青磁香炉 95年日本橋三越)
90年台の中頃の浦口雅行の青磁は、上の画像の作品のように、彼の師匠である三浦小平二に似た色合いに仕上がっていました。しかし最近の作品は、伝統的な粉青色の青磁に加え、独自に開発した暗緑色の海松(みる)瓷黒燿砕という独特な青磁を中心に、青瓷黒燿砕、青瓷黒晶、窯変月白瓷など新技法を次々と開拓しています。また、青磁の原点である中国の青銅器の形態を模したようなもう一方の彼の作品は、個性的な造形力を感じます。今後も注目して行きたい作家です。
(青磁組皿 94年新宿京王)
《浦口雅行略歴》
1964年 東京に生まれる
1987年 東京芸術大学美術学部陶芸講座卒業
1989年 同大学院三浦小平二研究室修了
1990年 国際陶芸展優良入選
1991年 栃木県芳賀町に築窯し、独立する
1993年 朝日陶芸展新人陶芸賞受賞
1998年 国際交流基金買上げ
2001年 茨城県八郷町(現、石岡市)に工房を移築する
2002年 茨城県芸術祭特賞受賞
2004年 ニューオリンズ美術館(アメリカ)買上げ
2006年 NHK BS2 器夢工房に出演
東京美術倶楽部2006東美アートフェア春
金澤美術ブースにて「青瓷 浦口雅行展」開催
茨城県陶芸美術館「現代陶芸の粋」展出品
2007年 茨城新聞社主催「青瓷 浦口雅行展2007」開催
2010年 茨城県近代美術館「第6回現代茨城作家美術展」出品
茨城県陶芸美術館 開館10周年記念展「The Kasama ルーツと展開」出品
以前に挙げた他には、岡部嶺男の作品は、数点手にとって鑑賞したことがありますが、素晴らしいと思います。