goo blog サービス終了のお知らせ 

ロースクール留学(していた)日記

米国ロースクールLLM卒業生の日常→アメリカ駐在員の日常

幽霊は存在するか?

2014-04-07 14:34:54 | ロースクール・法務・法律・仕事ネタ関連
こんにちは。

期末試験対策の勉強の休憩がてら日本のニュースを見ていたら、いわゆる”事故物件”に住む人が増えていると書いてありました。

さて、私は幽霊だとかホラーだとかの話が大の苦手なのですが、皆さんは幽霊を信じますか。ここアメリカではどうやら存在するということになっているようです…。

ニューヨークの1991年の判例(Stambovsky v. Ackley)をご覧ください。

この裁判は住宅の売買案件において、売主が買主に家が"haunted"されていることを告知しなかったため、買主が契約の解除を求めたという案件です。

判示は次の書き出しから始まります。(強調は私が追加)
> Plaintiff, to his horror, discovered that the house he had recently contracted to purchase was widely reputed to be possessed by poltergeists, reportedly seen by defendant seller and members of her family on numerous occasions over the last nine years. Plaintiff promptly commenced this action seeking rescission of the contract of sale.


そして核心へ…
> The unusual facts of this case, as disclosed by the record, clearly warrant a grant of equitable relief to the buyer who, as a resident of New York City, cannot be expected to have any familiarity with the folklore of the Village of Nyack. Not being a “local,” plaintiff could not readily learn that the home he had contracted to purchase is haunted. Whether the source of the spectral apparitions seen by defendant seller are parapsychic or psychogenic, having reported their presence in both a national publication (“Readers' Digest”) and the local press (in 1977 and 1982, respectively), defendant is estopped to deny their existence and, as a matter of law, the house is haunted.


さらに判示が続きます。(ここでいう"caveat emptor"はラテン語でして、意味は”買主をして注意せしめよ(let the buyer beware)”になります。ざっくりいえば買主の危険負担です。)
> From the perspective of a person in the position of plaintiff herein, a very practical problem arises with respect to the discovery of a paranormal phenomenon: “Who you gonna' call?” as the title song to the movie “Ghostbusters” asks. Applying the strict rule of caveat emptor to a contract involving a house possessed by poltergeists conjures up visions of a psychic or medium routinely accompanying the structural engineer and Terminix man on an inspection of every home subject to a contract of sale.

こういうジョークを織り交ぜるのはアメリカ人らしい気がします。


興味がある方はthe Ghost of Nyackとか入力するといろいろ詳しい情報が出てくるようです。

サービス貿易

2014-03-31 09:23:03 | ロースクール・法務・法律・仕事ネタ関連
こんにちは。台湾で学生が国会を占拠していたとか。その理由の一つにサービス貿易協定があるそうですけど、こちらにきて貿易協定関連で一法務担当者でも役立ちそうな情報を最近学んだことを思い出しました。遠いニュースが身近に感じられるかもしれません。

それがこちら。

WTO Schedules of commitments and lists of Article II exemptions

新しい国に進出したいという相談を受けたときに”外資規制はどうなっているのか”を事前調査をするのにかなり苦労した覚えがあります。もしかすると、こちらのWTOのサービス市場開放の"約束表"を見るとある程度の勘所がつかめるかもしれません。

あいにく上記サイトには日本語の資料はないのですが(英語はあります)、例えば、JETROのサイトにはベトナムの約束表の翻訳が置いてありました。
ベトナム:サービス約束表(pdf)


さて、この表を読む前に、理解しておく概念として”モード”と呼ばれるものがあります。以下の外務省資料のP.18にあるとおり、WTOの世界では外国への進出形態をざっくり4つにわけて整理しています。
外務省:GATSの解説(PDF)

ここで先ほどのベトナムの表に戻ってみると、2ページ目にあるとおり、例えばベトナム国内には外資100%企業を設置できることがわかります。

続いて、個別サービスについては、例えば9ページの「リーガルサービス」という欄にあるとおり、
”市場アクセスに関する制限”については、
(1)越境取引
(2)国外消費
のどちらも特に制限がないことがわかります。

他方、進出形態の(3)業務上拠点を取る場合は、拠点の設置のほかベトナムの法科大学院を卒業した顧問弁護士が必要なことがわかります(変な和訳ですが、たぶんそういうことでしょう…)。


というわけで、各国は基本的には約束したとおりに市場を開放するように内国法(例:移民法、各種業法)を改正しているはずですので(中国のように遵守していないところもありますけど)、新たな国にサービス進出する場合は約束表からある程度参考になる情報が取れると思います。

注意点ですが、英語の約束表の
”unbound”=約束しない
"none"=制限しない
ですので、unbound=市場開放ではないので注意してください。

そのほか、WTO協定の詳しい解説資料はこちら(日本語;経産省)

インターン

2014-03-16 09:21:37 | ロースクール・法務・法律・仕事ネタ関連
こんにちは。

また少し時間があいてしまいましたが、その間に春休みを利用してインターンに参加してきました。

英語で業務をするというのはなかなか大変で、日本語でやり取りできる環境ほど効率的にはできませんでしたが、特にトラブルもなく無事アサインメントを完了できてよかったと思います。ごく短期間ではあるものの、クライアントとの打ち合わせを含めて、通常の業務では経験することがないであろう法律業務を現場で体験できたので、非常によかったなと思っています。

業務内容自体は守秘義務の関係でこちらには記載できませんが、英語で外人と仕事をするという点でいくつか思ったことがありました。

・ 仕事の進め方は意識合わせが必要
⇒ とあるクライアントとのミーティングに二人で参加しその議事録を作成して提出するというタスクに関し、私は提出前に双方で作成した議事録の照合作業を行うつもりでいましたが、外人側は「別々に提出すればよい」と言って譲りませんでした。
結局、のちのちに私が主張したとおり議事録の照合作業が発生したのですが、自分の常識が必ずしも通用しないということが改めてわかりました。

・ できることとできないことの見極めが重要
⇒ 英語がネイティブ並みにできれば気にする必要はありませんが、やはりそうではないものからすると、ある程度の自分の実力の見極めは必要になってくると思います。必要以上におびえてしまって、簡単な仕事だけを狙っていくと自分の存在価値がなくなりますが、かといって、できもしないことに手を広げすぎるのも考えものかと思います。
今回のタスクの中にクライアントと数時間に及ぶミーティングを行って情報を引き出すという作業がありましたが、英語ネイティブの学生とタッグを組む形を提案したのは結果からみると良い判断だったと思います。
予期した通り、クライアントがアメリカ英語のようなわかりやすい英語を話さなかったため、ネイティブでさえやりとりに苦労をしていました。

・ 自分の意思や状況を伝えることが重要
⇒ 今回のインターンに限らずそうですが、アメリカでは基本的に外国人だからとこちらが内心で思っていても、英語でのコミュニケーションの速さや内容を落としてくれることがありません。話すスピードも落としてくれないし、わからないといわない限りこちらが理解できている前提で物事が進んでいきます。聞き逃した場合に「ちょっとゆっくりもう一度いってくれない?」といっても、本当にもう一回だけそのセンテンスだけをゆっくりリピートして、その次のセンテンスからは通常のスピードで会話が続いていきます。したがって、自分から必要最低限のアピールをしていかないと、コミュニケーションが成立しなくなると思います。

・ 重要な専門用語はきちんとおさえておくことが重要
⇒ 残念ながら、日本語と同じレベルで英語を駆使するのは難しいと思います。会話をする際に、はっきり話す、簡単な単語を使う、文章を短めにするといったように理解してもらいやすい英語を話すように心がけるのは重要ですが、プロフェッショナル間の会話の場合は専門用語については簡単な用語におきかえるのではなくてきちんとした用語を使うことが必要だと改めて感じました。

有料サービスの実力

2014-03-05 09:40:01 | ロースクール・法務・法律・仕事ネタ関連
こんにちは。

ロースクールに入学するとLexisNexis, WestLaw, BloombergLawが卒業まで使えます。
いままではせいぜいケースを調べたり、制定法、リステイトメントを見たり、法律記事やニュースを探したり、法律用語の意味を確認するくらいしか使っていなかったのですが、よくよく見てみるともっと素敵なサービスがありました。

1.各国の法制度概要(総論、各論)
2.各種契約の条文例と解説
3.アメリカ基礎法のアウトライン
などなどを発見して若干テンションが上がっています。国際案件担当中にもこんなのが自由に使えればよかったととても思います。

1)例えば、WestLawの世界各国法制度概要ですが、その国の弁護士が簡単に概要の記事を書いています(ニュースレターくらいのレベル)。コンタクト先も書いてあるので、おそらく営業を兼ねているのでしょうが、クライアントサイドからすると弁護士を探す手間も省けるし一石二鳥かなと思います。

エリアカバー率も70か国なのでなかなか。弁護士に金を払ってまで依頼したくないけども、その国の法制度を調べたいときなんかはよくあるので、とても重宝しそうです。(こういう得られる情報の差がないと現場に対する存在意義のアピールもしにくかったり。)

2)続いて条文例ですが、これも使えたらいいなと思いました。契約類型もかなり豊富ですし、それぞれが単純に条文が数個羅列してあるだけではなく、それに関連したオプション条文も置いてありますし、それぞれに簡単な解説も書いてありましたので、これはドラフティングをする際に便利だなと思いました。

いずれも本やセミナーだと情報が劣化するリスクがありますが、情報更新日から推察するに、これらの情報はアップデートをかけているようなので、その点の安心感もあります。


日本版のサービスで同じようなものが使えるか知りませんし、どれくらいのお値段になるのか知りませんが、国際案件を担当するときの情報入手の困難さを思い出してみると、それなりのお金を払っても価値はあるかなと思いました。月10万くらいまでなら欲しいかも。(アソシ弁護士に2時間ちょっと相談するよりは断然価値がある気がする。)

仲裁

2014-02-25 10:18:32 | ロースクール・法務・法律・仕事ネタ関連
今期は国際商事仲裁の授業をとっています。

国内契約ではほとんどお目にかかることがない仲裁条項ですが、国際契約ではほぼすべての契約に何らかの形で規定されていると思います。正直なところ、細かいところまではよくわからないけども、とりあえずテンプレ条文を挿入しているというひともかなりいるんじゃないかなぁと思います。自分もこちらで授業をとってみて、あらためて知らないことが多かったなぁと実感しています。

国際契約で仲裁が重視される理由はよく裁判制度との対比で語られますけども、多くの方がぱっと思いつくのは国際仲裁に関するニューヨーク条約の存在だと思います。
こちらに和訳もありました(日本海運集会所のページ

この条約の重要な点はざっくりというと
・内国裁判所に、外国での仲裁判断を承認し執行することを要求していること
・内国裁判所に、仲裁合意の有効性を承認することを要求していること
・仲裁合意の当事者が有効な合意をしていたならば、裁判ではなく仲裁で案件を取り扱うように促すことを、内国裁判所に要求していること
かと思います。ちなみにNY条約と国内法の関係ですけども、(当たり前ですが)NY条約が即国内法化するというより、各国は(国際商事)仲裁に関して国内法を用意しているのが通常のようです。(例:Federal Arbitration Act)
また、厳密には関係する国内法も見ておかないと自分の書いた仲裁合意が本当に有効となるかはわかりません。見たところでわからないことも多々ありそうですが。
(例えば、特定の種類の契約については(例:婚姻契約、対消費者の契約)仲裁を禁止している国もある模様)

普段はNY条約くらいしか意識していなかったのですが、ほかにも地域限定の仲裁に関する条約(例:EU内、環アメリカ)や二国間条約に基づくような仲裁に関する取り決めもあるとのこと。

さて、国際仲裁は非常に奥が深いなーと感じています。もしセミナーか何かに参加する機会があれば、例えば次のようなポイントを講師に突っ込んで聞いてみると面白いんじゃないかなぁと思います。
(「ケースバイケースですね」といわれて逃げられるような気もしますが…)

Q.国際仲裁の場合の準拠法ってどうやってきまるの?
⇒ 契約書に書いといた準拠法でしょ?と思うかもしれませんが、そう単純な話ではないようです。ほぼどの法域でも認められている概念として”仲裁合意は独立した合意である”という原則(Separability Doctrine)があるとのこと。これは例えば売買契約(仲裁条項あり)が仮に無効になったとしても、仲裁条項自体は必ずしも無効にならないということです。要するに、本体契約とそれに付随する仲裁合意は別の契約として扱われるという原則です。したがって、理論上は売買契約と仲裁合意とで準拠法が異なることがあり得ます。
仲裁合意の準拠法としてあり得るパターン(例):
・当事者が仲裁合意用に指定した法律
・仲裁地の法律
・本体契約で指定した法律

ちなみに単に“This agreement shall be governed by the law of XXXX ” と書いているだけですと仲裁合意の準拠法を指定したことにはならないと解釈される可能性が高いようでして、もし厳密に指定したいならば(その必要性があるかは別として)、
“All of the provisions of this contract (Articles 1-30, including the arbitration clause in Article XX) shall be governed by the law of XXXX”くらい明確にしておかないといけないようです。


Q.仲裁合意って何を、どのように最低限合意していないといけないの?
⇒ 仲裁合意というと一般的には次のようなエレメントの全部またはいずれかが入っていると思います。どれが必須なのでしょうか。(前提として、仲裁は当事者の合意があって初めてできるものなので、合意が不十分ということになれば当事者は仲裁に行くことはできないという結論になる。)
・仲裁をするという合意
・仲裁にもっていく紛争の範囲
・仲裁機関および仲裁ルールの指定
・仲裁地
・仲裁人の指定方法
・仲裁に使用する言語
・仲裁の準拠法
・仲裁費用の取り扱い
・仲裁人によるディスカバリーの有無
・友好的な交渉努力の後に仲裁とする合意
・主権免除の放棄
・秘密保持
基本的には、仲裁をするという合意は必須なのですが、そうだとして、どこまで明確に書いていればよいのでしょうか。

裏返しの論点として、どのような文言があったら仲裁合意の有効性に悪影響を及ぼすかというところも面白い論点だと思います。
たとえば、実際にあった判例(香港)ですが、存在しない仲裁機関を指定していた場合(International Commercial Arbitration Association)、どうなるのかというのも興味深いポイントと思います。

Q.仲裁合意条項が有効かどうかは裁判所で判断するの?仲裁廷で判断するの?
⇒ 仲裁合意条項の有効性自体を争う場合、それは仲裁なんでしょうか、裁判なんでしょうか。当然裁判でしょ?と思うかもしれませんが、そう単純な話ではないようです。"Competence-Competence"でググるといろいろ情報が見つかると思います。