お姉ちゃん

　私には幸いな事にまだ元気な母がいる。
父は８年前にガンで亡くしているが、
ややあって、私の母は、私の自宅の近所のアパートに
７年前から住みだした。

　小さい頃、自宅が商売をしていたせいで私はずいぶんと
淋しい想いをしていた子どもだったはずである。
弟も生まれた頃には経営している店もとても忙しく、
父も母も朝早くから晩まで働いていた。
母も子どもの事に構ってはいられない毎日だったようだ。

私はそうゆう寂しさを近所の家にこっそり遊びに行ったり、
（時には自宅を脱走…してまでも他の家に泊まっていた。）
広い空き地で、ただ一人で遊んで紛らわせていた。

母娘でも相性が合う、合わないというのがあると思う。
大人になってから、そう思えた。
私と母は決して相性の合う母娘ではなかったようだ。

今の私の娘の年齢になっている頃には、
私はいつか母を殺してしまうのではないかと思うくらい
母を憎んでいた。

それでも、私は姉弟の中では「お姉ちゃん」で育てられた。
だから、何かと頼られる。
弟たちの嫁とソリが合わないとはいえ、
私の近所に母が住む事は、母が選んだ。

私がこの病気になって、とても母は悲しんだ。
「私がなにも出来ないと…。」「娘が可哀想だ…。」と。

やはり、この人は昔から変わらないのだなと
こうゆう時にそう思う。そうゆう自分が一番可哀想なのだ。

私の娘の事を心配したり、うちの旦那の事を心配してくれるのは
有り難い。でも、この病気に罹ってから、
否応なしにこうなる事はわかっていた。
だから、パパも娘も必死で家事もこなすようになっている。
これからの人生の方が長いからだ。

　私は、「この人を自立させなきゃ」と思っている。
今だに私になんでも頼ってくるからだ。

今日もしんどくてベッドで寝ている私を起こしてまでも、
後期高齢者医療制度の事でわからないから、どうすれば良いのかと聞いてくる。
（だいたい、判断の落ちた老人に申請を強要してくる行政が悪いと思うが。）

私の願いは、母には、自分で自分の人生を生きて欲しいという事。
アパートでの一人暮らしは淋しいと思う。
今まで、父になんでも頼って生きてきたから、
余計に淋しいのだと思う…。


母に向けて、ここに残そうと思う。

私は今後、母の老後のめんどうもみれないし、
これからの人生を一緒に
歩いていく事は出来ないと思う。
私が介護を母にお願いしなければならない時もくるかもしれない。
だから、私は母の幸せのために自立を願っている…。



でも、私自身、「お姉ちゃん」と言われるとその呪縛から
なかなか抜け出せないのである。

うぅ～。