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情報科授業研究

一般にはなじみの少ない高等学校普通教科「情報」の教育実践・教材研究について紹介します!

非行と向き合う

2006-05-31 | 教育問題
浅川道雄 著『「非行」と向き合う』(新日本出版社, 1998)を読みました。著者は家庭裁判所の調査官をされていた方で、今まで知らなかった家庭裁判のしくみを知りました。著者が問題を抱えた多くの子どもたちと接してきた経験から子どもについて語られていることは、親として、教員として勉強になりました。

著者は「私がこの仕事をしてくる中で、十五年か二十年前くらいから子どもが変わってきたということが一つあります。」「いまの子どもは考えることがにがてになったのだ、考えること自体がどうもにがてらしい、ということに気がつき始めたのです。」と述べています。ちょうど私くらいの世代でしょうか。自分の子ども時代を振り返ると(遠い昔ですが...)、勉強の仕方を間違っていたと後悔する点が多くあります。

また私が教員になって最初に驚いたのは、試験前に生徒から「どこを覚えればいいですか」と聞かれたことです。勉強とは覚えること? じゃあ人間はコンピュータと同じだと思いました。この本には「ロボット化」と指摘しています。

自分自身の反省も踏まえて、私は授業では「コンピュータよりも人間の方が優れている。それは人間は考えることができるからである」ということをことあるごとに話をし、だから「考えることを大切にしてください」と生徒に投げかけています。これは部活動の指導でもそうなのですが、私が生徒に答えを与えるのではなく、生徒が答えを導き出せるように手助けをしています。時間はかかるし、うまくいかないことも多いですが、生徒の持っている力を信じて伸ばしてあげられればいいなぁと思います。
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いまどきの常識

2006-05-19 | 教育問題
香山リカ 著『いまどきの「常識」』(岩波新書, 2005)を読みました。この著者の本を紹介するのは2回目です。現在の社会の問題点を鋭く指摘されていて、おもしろく読ませていただきました。
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号令のない学校

2006-03-02 | 教育問題
佐藤真知子 著「号令のない学校 オーストラリアの教育感覚」(ちくま文庫, 1994)を読みました。この本は工学院大学の蔵原先生にいただいた参考文献にあったものです。第1章でオーストラリアの学校について、筆者の実体験を元に全編にわたって特に日本の学校の先生に対する筆者の不信感が綴られており、教員として耳が痛く感じました。日本だけでなくいろいろな国の教育実践にも目を向けて自己研鑽していきたいと思います。

「日本では大半の子どもが幼稚園に行き、四歳、五歳の年齢で、『みんなでいっせいに、おなじことをする』ように毎日訓練させられる。順応性が豊かで何でも吸収しようとする時期に、制服を着、制帽をかぶり、みんなが同じことを同じ時間にするように、足並みをそろえることを繰り返し繰り返し教えこまれる。足並みをあわすのが遅い子ども、自分の意思で何かをしようとする子どもは、『強調性がない』と、みんなと同じことをするように強制させられる」と述べられています。社会の人々を見ていると自分とは異質なものへ好奇の目を向け、ひどいときにはそれを排除するような言動をとる場合も見受けられます。このようなことは実は幼児期から教育されていたことだったことを気づかされ恐怖を覚えました。

一方で、オーストラリアでは、「先生の仕事は、知識を生徒に教えることであるとみなされ、マナーや道徳的なことは含まれていない」と述べられています。今はどうかは分かりませんが、私は以前にも書いたように学校や授業は、教科指導だけでは不十分だと考えています。それは、教員は生徒にとって長い時間接する大人だからです。学校と地域社会、家庭が協力して生徒の個性の伸張につとめる方がよいのではないかと私は考えます。
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よみがえる高校

2006-02-14 | 教育問題
河野啓 著「よみがえる高校」(集英社文庫, 2003)を読みました。河野さんはHBC北海道放送のプロデューサーで、北星学園余市高等学校(以下、北星余市)の取材を続けてきた方です。この本は河野さんが取材された北星余市について書かれたものです。

私が北星余市に出会ったのは、今から3年半前、教員免許状を取得するために工学院大学教職特別課程に所属していたときです。「現代教職論」(蔵原清人 教授)の授業でビデオを見せていただきました。このときは強い衝撃を受けたのを覚えています。

この本の中にはとても「熱い」人たちが何人も登場します。学校の教員だけでなく、地域も一緒になって子どもたちを育てようという取り組みは、見習うべき点が多くありました。ヤンキー母校へ帰るの義家さんは、北星余市の3年生のときに「この学校で温かさを知った。理不尽な教育がまかり通る中で、教育は愛であることを教えられた」と書いています。「教育は愛」。いいですね!
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テレビ授業

2006-01-27 | 教育問題
東京都立府中西高等学校の佐藤義弘先生のブログでテレビ授業について取り上げられていました。

Yahoo!ニュースで「テレビ授業、4割で使われず」という話題があったそうです。「衛星高速回線を使ったテレビ会議システムで学校間の交流授業」をおこなう事業で、「38.1%の学校が全く授業を実施していなかった」ということです。ここでは、その原因の一つとして「教員が機器を使いこなせない」ことを挙げていますが、果たして本当でしょうか。佐藤先生は、「授業はやっぱりライブが一番。生徒を目の前にして,反応を見ながら興味・関心・意欲を引き出すのが授業ですよね」と書かれていますが、私も同じように考えます。

クリフォード・ストールさんは、「インターネットはからっぽの洞窟」(草思社, 1997)において、学校とインターネットについて触れられています。筆者は「僕らが子供たちに望むことは、心の優しい人たちと接し、人とのつきあいを学び、発見する喜びを知り、生活の基本を身につけてくれることだろう。僕らは、子供たちにしっかり読み書きできるようになってもらいたいし、他の人たちともうまくやっていってほしい。社会常識を身につけてもらいたい。こういうことを子供たちにちゃんと授けられるのは、教室にいる生身の先生たちだ。スピーカーやテレビ、そしてコンピュータごしの授業では、とてもできることじゃない」「学校教育でもっとも必要なことは、答えだけではなくて答えの求め方も教えてくれるような素晴らしい先生と一緒に勉強できることだ。そういう先生とのふれあいがなければ、学校は知識や技術の切り売りの場所にすぎない。教える側と教わる側を物理的に切り離してしまうネットワーク授業は、学校教育とは無縁だ」と述べています。

石田一宏先生は、「先生は、自らの授業を通して、子どもの『生きる力』を育てることに関与するのです。授業は、ただ教えるだけで、あとは、『生徒指導』『生活指導』『部活動』『進路指導』『道徳』『校則』などで、生きるための方法を指導するのだというのは、本末転倒であり、また、子どもの発達の基本をゆがめてしまいます」と指摘されています(「青年の自立」大月書店, 1990)。

テレビ会議システムなどを利用した遠隔地教育支援システムについてはずいぶん前から話題になっています。しかし、これらは「授業」のある一側面を取り出して教育するものに過ぎないのではないかと危惧しています。学校で、社会で人間同士が接することで、人は教科の学習だけでないさまざまなことを学んでいくのだと期待されます。遠隔地といっても日本は狭いです。宿泊行事などで、現地の方々との直接的な体験を通して、生徒には多くのことを学んで欲しいと思います。

昨夏の選択課題研修「情報モラルの指導法とディジタル教材の作成」に参加した折、ある教員がe-learningがますます進展していくと、将来は私たち教員が必要なくなるのではとおっしゃったのが印象に残っています。そのような時代が来ないことを願います。
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青年の自立

2006-01-26 | 教育問題
石田一宏 著「青年の自立」(大月書店, 1990)を読みました。この本は蔵原先生にいただいた参考文献にあったものです。精神科医という立場から中・高生の抱える問題について書かれたものです。かなり前に書かれたものですがとても勉強になりました。

筆者は「子どもが大人になるプロセスは、自らの行動、生活体験である」「その基本的な形が『好奇心-行動-納得・感動』というパターンであること、そのパターンが多様な環境のなかで保障されることによって、個性的な感性と知性をもった大人が育つ」と述べられています。しかし、このような「子どもの発達プロセスを無視して、大人が子どもにおしつける間違った方法がよくみられ」ることを指摘しています。それは以下の3つで、筆者は「子育ての三悪」と呼んでいます。
  • 「競争主義」
  • 「賞罰主義」
  • 「言語主義」
私自身を振り返ってみて、生徒たちにしてしまったようなこともあり、ハッとさせられました。きっと多くの生徒たちは幼少時からこのような体験をしてきているのだろうと思うと、今問題がないように見える生徒でも、良く注意していないと躓いてしまう生徒がいるかもしれないと思いました。

また筆者は教師の必要条件と十分条件についても述べています。
  • 必要条件
    • 子どもが好き、子どもがいとおしい子どもをぶつなんてことはできないって言える人
  • 十分条件
    • 教育力 ... 一人ひとりの先生が子どもの発達を守る立場に立って、いかに授業を子どもたちのためのものにするかを研究することが大切
    • 自主的に研究し合い、相互批判できる集団であること
最後に筆者から中・高生に向けた言葉があります。この本が書かれたときにはまさに私は高校生。そのときを振り返るととても重い言葉ばかりです。今の生徒たちにも伝えていければいいなぁと思いました。
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先生の給料、生徒のテスト成績で決定

2006-01-13 | 教育問題
asahi.comのサイトで<先生の給料、生徒のテスト成績で決定 米ヒューストン (2006年01月13日17時09分)>という記事を見つけました。衝撃的な内容でした。公教育は一斉テストや全国テストで高得点を取るように子どもたちを教育することが目的なのでしょうか? 今後、アメリカ全体に広がっていくのでしょうか?
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進路指導の進めかた

2005-09-08 | 教育問題
東京都教職員研修センターで選択課題研修「進路指導I」を受講しました。全3回のうちの今日は最終回でした。テーマは「ホームルームでの進路指導」です。

前半は東京都立あきる野学園養護学校の原主幹が実践報告されました。知的障害を持つ生徒が不況のなか、さまざまな分野で活躍されていることを紹介され、うれしく感じました。

後半は東京都立中野地区チャレンジスクール開設準備室の笹先生が、進路指導の進め方について講義をされました。「職業観・勤労観を育む学習プログラムの枠組み(PDF File)」(国立教育政策研究所生徒指導研究センター)では、「職業観・勤労観」の形成に関連する能力を以下の4領域に大別しました。
  • 人間関係形成能力
  • 情報活用能力
  • 将来設計能力
  • 意思決定能力
この4つの能力をさらに2つずつ、計8つの能力に分けています。このうち「人間関係形成能力」のうちの「自他の理解能力」について学びました。実際に笹先生が開発された進路学習教材(ワークシート)を用い模擬授業をされました。活動は、「個人ワーク→集団ワーク→個人ワーク」という順で進められました。進路学習のうちでも特に自己の理解にかんする活動でグループ学習を取り入れられているのは、他の生徒が見ることで色々な視点でのアドバイスが得られるからだそうです。ただし、グループ学習で気をつけなければならないのは、個人情報の開示をお互いに強要しないように注意することだと言われました。ジョハリの窓の盲目の窓にあたるんだそうですね。東京都高等学校進路指導協議会(都高進)の進路学習部会では、今日紹介されたようなワークシートを作られているそうです。

最後に「自己理解」をテーマにワークシートを作る課題を与えられました。短時間で作るのは難しかったです。笹先生は、「ある1人の生徒をイメージして作ると具体化できる」というようなことをおっしゃいました。

3回の研修を通して、キャリア教育について多くのことを学びました。キャリア教育は教科指導でもおこなわれることなので、この教科のなかでの職業指導の研究に取り組んでいきたいと思います。
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子どもの規範意識

2005-08-23 | 教育問題
東京都教職員研修センター主催の選択課題別研修夏季集中講座「生活指導H」に参加しました。研修テーマは「子どもの規範意識を考える」で、心の東京革命推進協議会会長・千葉大学名誉教授の多湖輝先生がご講演されました。

先生は明治の生まれで、自由の時代から、戦争、そして戦後復興の時代を歩んでこられました。大学紛争のときにはすでに大学に勤務されていらっしゃり、そのときの話はとても興味深く聞かせていただきました。また、海外の情勢は実際にそこへ行ってみることが大切だと考えておられ、実際何度も足を運んでいるようです。これらのように、先生の豊かな経験から、今日の日本の社会と世界の情勢の根本を説明くださり、大変勉強になりました。

先生の話の中で私が重要だと感じたことを私なりに以下のようにまとめました。

--- 以下、要約 ---
現在の日本は、子どもたちの環境が悪い。以前は、地域に子育ての社会があった。子育てが苦手な親でも地域が子どもを支えていた。現在は、マスメディアや携帯電話の普及などにより、「人間」が変質してきた。それは、子どもが家に帰ってこなくても平気な親が増えていることからも見られる。「個」=「ミーイズム」が蔓延している。つまり「自分勝手で生きる」という人間が増えている。近年、教育では、「自由・個性・人権」を重んじてきた。これらのことは大事ではあるが、「ただしいこと」は体を張ってやることが必要である。子どもたちの言葉の乱れや服装の乱れを注意できないおとなが多い。「自由」と「秩序」はconflictなものであるが、バランスのとれた指導が必要である。
--- ここまで ---

なかなか子どもたちに集団としての価値観を理解させるのは大変ですが、これからも努力したいと思います。
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教育基本法「改正」

2005-07-29 | 教育問題
技術教育研究会会報「技術と教育」7月号に、8月におこなわれる全国大会の基調報告案が掲載されています。この中の教育基本法「改正」についての論述に少なからずショックを覚えました。今まで、教育基本法の「改正」の動きはいろいろな場面で耳にしていましたが、詳しい内容までは理解していませんでした。日本の将来が心配です。

全国大会には行きたかったのですが、勤務校のクラブ合宿の時期と重なってしまいました。
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