いつものように、
夜、実家に子供を迎えに行く。
ドアを開けると、
ふだんは真っ先に娘が飛び出してくるのに
今日は珍しく、
息子が走り出てきた。
「おかあさんおかえり」
と抱きついて、
ほっぺにチュッ、ってしてくれた。
おやおや、どうかしたのかな。
でも、やっぱり可愛い。
私ともう20cmほどしか背丈の違わない息子を
ぎゅっと抱きしめて、
チューのお返し。
「やったー」
とニコニコ顔で、部屋に戻る息子。
おじいちゃんに、
「ん?何が『やったー』なんや?」
と訊かれ、
「なんでもない、ナイショや」
と答えながら逃げてゆく。
私はもちろん子供を愛しているけれど、
本当は、
子供の、私に対する愛情の方が
ずっとずっと強くて絶対的なものなのかもしれないな。
そんな風に思ってしまう。
それはもちろん、
この先少しずつ、あるいは一度に、
失われていくことがあらかじめわかっている、
切なくてはかない期限付きの愛ではあるのだけれど。
「おかあさん」への絶対的な愛情を失っても、
いつか、
他の誰かをきちんと愛せる男の人になれますように。