In the Nest

ちいさな巣の中から、見上げる空。

鬼が来て

2005-01-29 22:24:24 | Weblog

夜、実家に子供たちを迎えに行くと、
娘が、
「おばあちゃんに教わってん」
と言って、簡単なあやとりを披露してくれた。

私も久しぶりにあやとりをしてみた。
昔よくやった、ひとりあやとり。
もう忘れたかな?と思ったけど、
手が憶えていて、勝手にどんどん動く。

すべり台。カメ。ゴムひも。飛行機。
かぶと。爆弾。足袋。
ちょっとした手の動きで
どんどん形が変わり、いろんな物に変身していく。
私がやってみせると、
子供たちは、
「わぁ、お母さんそんなんできるん!すごい!」
と大喜びで見つめている。

おばあちゃん(私の母)がやってきて、
「そういえばそんなのもあったね。懐かしいねぇ。」
と笑っている。
その時突然、
ある言葉を思い出した。


 わたしが枕でねんねしていると
 鬼が来て
 エプロンをとって
 電球を消して
 遠い 暗い道を
 逃げていきましたとさ


私が子供の頃、
母に教わった、ひとりあやとりだ。
上の言葉を言いながら、
枕、鬼、エプロン、電球を
次々と作ってみせ、
最後は一本の紐(道)に戻って、おしまい。

「ねぇ、昔、こんなあやとりなかったっけ?
 鬼が来て、エプロンをとって・・とかいうやつ。」
私が言うと、
母は一瞬きょとんとして、
それから、げらげら笑いだした。

「いやぁー、あんた、そんなんよう憶えてるねー。
 それ、私のオリジナルやんか。」
私はびっくりした。
「えーーっ、これってお母さんが作ったもんなん?!
 知らんかったわ・・」

本当に、
母が自分で作ったものだとは
まったく思っていなかった。
でも、
それを何度も何度もやってみせてくれた
若い母の顔も、その手の動きも、
「鬼が来て」のところで
かならず恐ろしげに変わる声色も、
驚くほど鮮明に記憶しているのだった。


私が今やっているひとりあやとりは
自分のオリジナルではないけれど、
私がこうして、子供たちの前でやってみせたことを
大人になっても、
彼らは憶えていてくれるのだろうか。

そして私も、
たとえささやかなものであっても
「子供のために作った何か」を、
彼らにのこすことができるだろうか。


早くしないと、
子供はきっと、すぐに大きくなっちゃうね。