あまの鍼灸院ブログ

鍼灸院での毎日の様子をアップしています。
鍼灸院ってどんなところ?と知っていただけたらうれしいです。

手は口ほどにものをいう

2022-03-20 22:38:00 | ブログ
こんにちは。お彼岸の今日は
静岡の実家にお墓参りに行ってまいりました。
桜が一部咲き始めていましたよ!
名古屋も一気に開花するでしょうか?
毎週日曜日は院長の自伝です。

「目は口ほどにものを言う」という言葉にも代表されますが、
アイコンタクトなどという言葉もあるぐらい言葉より先に目で挨拶されるのが通常である。
それは分かっていても、え? なぜ… と思うことがしばしばある。
例えば、私の用事で家内と一緒に出かけた時、先方は眼の見える家内の方を見て
挨拶される。アイコンタクトが先なのだ。そして私の用件であるのにやはり家内
の方を向いて説明される。画像説明なら仕方が無いが、言葉での説明ならば、
「私の方を向いて説明してよ」と思う瞬間であるが、やはり、アイコンタクトに
は負けてしまうのである。

さて私は鍼灸師である。臨床の現場では「手は口ほどにものを言う」と言いたい。
患者さんの求める所にぴたりと手を当てる(中てる)のには視力はいらない。手
の感覚が総てである。例えば、患者さんの訴える病態から、ある経絡のある経穴
を選んだとする。目で見て○○骨から右へ○○寸○分だからといってそこに鍼を
行っても手応えを感じなければ、生体変化も起こらないし、病態は改善しないのである。
眼で皮膚を見ただけでも多少の虚実反応(機能低下と機能亢進)は判るが、それ
を更に正確に捉えるには「手」で触れて診ないと治効を上げる鍼は出来ない。
更に皮膚から一㎜でも入った部分の反応は眼では見えない。「手」で感じる事に
より「診る」ことも「観る」ことも出来るのである。
そして、虚的所見として、うつろで弱々しく力なく精気を感じないところには、
精気(正規・生気)を増加するための補法と呼ばれる優しい鍼を行う。
昨今は、飽食や運動不足による生活習慣病。更に、精神的ストレスによる鬱状態
など『気の滞りによる病症が大変多いので生気を補う治療が圧倒的に多くなっている。

実的所見としても、身体に悪影響を及ぼすものがある。外的要因としては、風雨、
寒暑、湿燥などの異常気象により体調に変化を及ぼすものがある。
内的要因としては、感情の乱れとして、五志(怒・喜(笑)・思(慮)・悲(憂)
・恐(驚)などがある。
それ以外に飲食の不摂生や労倦などによる気の滞り(気滞)、血液の滞り(血瘀
・瘀血)生体の七十%をしめる水の滞り(水滞・水毒)などがある。これらに対
しては、それを取り除く為の瀉法と呼ばれるテクニックを使って治療するのである。
この治療方法を「虚実補瀉」と言いますが、残念なことに鍼灸の免許制度に欠陥
があるために、この用語さえも知らない鍼灸師がほとんどである。
ただし治療家の「手」が出来ていれば「虚実補瀉」の理屈を知らなくても自然に
それが出来ることもある。我が師である故・福島先生は一人前の鍼灸師になる為
に「按摩は棄てろ」と喝破されたが、按摩の技術も捨てがたいものが有る。つまり、
意を以って望めば何事にも無駄は無いのである。

先の福島先生が、研修会の技術修練の時間に思う所に手が触れない晴眼者に対し
て「そんな眼ならつぶしてしまえ!」と喝破していたのも古希を迎えた今ならう
なずけるのである。病を治癒せしめることの出来る「生きて働いている経穴(ツ
ボ)」に手を運ぶには目は反って邪魔になるのだ。

次週に続く
コメント
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