羽黒蛇、大相撲について語るブログ

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平成25年・2013年1月場所前(真石博之)

2012年12月31日 | 相撲評論、真石博之
○九州場所の白鵬は、今や伏兵と呼んでもいい琴欧洲に敗れはしたものの、場所を通して安定した相撲ぶりでした。かつて苦手とした稀勢の里を2秒で押し出したり、3連敗中だった日馬富士を豪快に投げ飛ばしたり、強さが戻りました。口には出さなかったものの、どこか悪かったのでしょうか。朝日新聞によれば、睡眠時無呼吸症候群を抱えており、下半身の張りは九州場所中にもあったとのこと。秋場所、3場所連続で優勝を逸したあとに、「悔いはありません」と語ったのは、身体が思うに任せない中で最善は尽くせたという意味だったのでしょうか。

本当の復活なのかどうか、初場所の相撲ぶりに注目です。



○業績の累積を端的に表す「持ち給金」で、白鵬は朝青龍を抜き、大鵬、千代の富士、北の湖に次ぐ史上4位になりました。優勝回数は23回で、朝青龍にまだ2回及ばないのですが、全勝優勝が逆に3回多いためです。

「持ち給金」は、勝ち越し1つで50銭しか増えないという小さな積み重ねである一方、殊勲には大きなご褒美があり、金星が10円加算、優勝が30円加算、全勝優勝は50円加算です。全勝優勝が3回多いことによる差は60円で、優勝2回分にあたるのです。なお、実際に支払われる「給金」は「持ち給金」の4000倍です。給金は極端な業績給でありながら、負け越しても減らない暖かい報酬制度です。 (別紙『持給金200円以上』)



○白鵬の年間最多勝の「6年連続」は新記録です。全盛期の平成21年と22年の年間86勝4敗(勝率:956)に比べて、23年は66勝9敗(同:880)、24年は76勝14敗(同:844)と、大横綱が必ず辿る下り坂に入っています。しかし、平成24年を1場所平均で見ると12.7勝2.3敗。横綱として立派な数字です。



○前回、『日馬富士が白鵬のような強い横綱になるのかと言えば、答は「ノー」だと思います』と書いてはみたものの、まさか9勝6敗とは・・・・。何度も書きましたが、2場所連続で全勝優勝をする直前5場所の勝星は合計46で、1場所平均は9.2勝。元の弱い大関の成績に戻ったわけです。琴奨菊の立合いの変化や、白鵬に実力負けしたのは致し方ないとしても、妙義龍、鶴竜、稀勢の里にも力負けしての終盤での5連敗はいただけません。

千秋楽の結びの一番が終った時、舞の海が「日馬富士は横綱としてやっていけるのでしょうか」と深刻な口調で尋ねたのに対して、北の富士は一瞬戸惑ったのち、「何とも言えない・・・。苦しいね」と答えていました。

屈辱の九州場所が終り、その直後から稽古に励んでいるようです。鼎の軽重が問われる初場所です。



○九州場所で化けたのが松鳳山でした。3大関を破っての10勝で敢闘賞。従来からの突きに加えて、潜ったり両差しになったり多彩な取り口を見せ、圧巻だったのは上手い豪栄道に上手い勝ちをした12日目でした。相手の再三の投げや突き落としを、身体を寄せて凌ぎ、前ミツを切っての肩透かしでした。初場所は新三役に昇進です。

学生相撲臭さが微塵もなく、勝っても負けても表情を変えず、無愛想なのが古風で好もしいです。



○その松鳳山に敗れた豪栄道が、一皮剥けたようです。貰ったのは馴染みの技能賞でしたが、これまでの上手さや器用さに加え、前に出る力がつきました。地味な稽古を何年も重ねて初めて身に着くのが前に出る力と思います。

一方、残念だったのが3場所連続で技能賞を獲得した妙義龍の負け越しでした。押しても差してもいい相撲をとっていた秋場所までとは違って、初日から精彩を欠きました。「欲を出していきたい」語った欲がいけなかったのでしょうか。しかし、負け越した後に、鶴竜、日馬富士、琴奨菊を破っていますので初場所に期待します。



○相撲をつまらなくしている体重の増えすぎについて、ある個性派親方が「体重を競って増やす原因は『立ち合いの正常化』にある。最初の当りの強さが決定的に勝敗を分ける」と指摘したこと紹介しました。これに関して、保田武宏さんから「立ち合いが正常化されていないから」との貴重なご意見を頂きましたので、お伝えします。

『今の立ち合いは、手をおろす前に呼吸を合わせようとにらみ合い、瞬時、手をおろして立っている。これでは、体重のある者の当たりが強くなって有利になり、みな体重を増やそうとする。しかし、この立ち合いは正常ではない。私の言う正常な立ち合いとは、両手をしっかりとおろして静止状態でにらみあい、呼吸を合わせて立つ立ち合いです。双葉山時代以前に行われていたものです。これだと、立ち合いの当たりは減速され、早く立った者が有利とは限らず、軽量の者も技を発揮しやすくなります』。   この「本当の正常化」が急務と感じました。



○平成24年を振り返ってみます。まず、相撲部屋の減少が目立った1年でした。2月に田子ノ浦(久島海)が急死し、力士は春日野部屋と出羽海部屋へ。北の湖部屋への「預り」になっていた処分が解けて木瀬部屋が復活した4月に、大島(旭國)が定年で力士は友綱部屋へ。5月には経営不振の花籠部屋を峰崎部屋が吸収。12月には定年間近の富士櫻の中村部屋を東関部屋が吸収。年初に49あった部屋が年末には46になりました。明25年に定年を迎える部屋持ち親方は、放駒(魁傑)、三保ケ関(増位山)、二所ノ関(金剛)。武蔵丸による武蔵川部屋の再興があったとしても、部屋数はさらに減っていくでしょう。因みに史上最多は平成16年の55部屋でした。

(1月3日が定年の大潮の式秀部屋は消滅せず、北桜への継承が12月21日になって決まりました。時津風一門から出羽海一門への異動です。)



○次は、急な年寄株のだぶつきです。初めて理事に当選した雷(春日富士)が9月に経費流用と不倫スキャンダルで退職。10月には岩友(栃勇)と立田川(豊山)、12月には浦風(照櫻)と定年退職が続き、年末時点での空き株の数は、一昨年が0、昨年が1であったの対して、今年は5に急増しています。公益法人化の申請期限が迫る中で、最大の争点である年寄株の扱いが決まらないこともあってか、年寄株を借りている借株親方の中には「年寄株を持つのがいいのかどうか」と思案する向きもあるとのこと。不安定だった借株親方の身分が安泰になってきたのです。さらに明25年は定年ラッシュの年で、9人が退職します。売り手が多すぎ、買い手が少なすぎ、年寄株マーケットは、値のつかない「出来ず」の状態になりかねません。「過去の最高は3億円で複数あった」(朝日)といわれた年寄株相場。世の中、変れば変るものです。(別紙『一門別年寄一覧』『一門別・年寄と部屋の推移』)



○今年は、「一門」にも動きがある年でした。5月に、立浪部屋(旭豊)が立浪一門を離れて貴乃花組に移ったため、「立浪一門」は「春日山伊勢ケ濱連合」に名称を変更。ところが9月に、春日山部屋のオーナーと見られる理事の雷が不祥事で退職したため、「春日山伊勢ケ濱連合」はわずか半年で「伊勢ケ濱一門」に名称を変更しました。もとは「立浪伊勢ケ濱連合」だったものが「立浪一門」になり、結局、「伊勢ケ濱一門」になったわけです。

今の伊勢ケ濱(旭富士)は、清瀬川-照國-清國の伊勢ケ濱の流れとはまったく無縁で、立浪一門の総帥・羽黒山の孫弟子ですから、「立浪伊勢ケ濱連合」の継承者に相応しいのかもしれません。   (別紙『部屋系列略図』)



○次に、今年の横綱大関の公式年収です。白鵬は、昨年より優勝回数が2回減って優勝賞金も2000万円減。ところが、昨年は1場所が開催中止、1場所は懸賞金辞退で懸賞金が少なかったため、懸賞金で4000万円以上を盛り返し、給金も増えたため、総額は昨年より約5000万円多い2億0100万円。日馬富士は優勝回数は白鵬と同じ2回でしたが、給金が1/5、懸賞金が1/3で、総額では1/2です。把瑠都は優勝はしたものの、懸賞金が稀勢の里より1000万円以上も少なく、総額でも4位でした。     (別紙『横綱大関年収』)



○最後が部屋の勢力です。(横綱20、大関10、三役4、平幕3、十両1の点数で重みづけをしての比較です)。

年間を通して大関2人の佐渡ケ嶽が、白鵬の宮城野を抜いてトップ。3位は昨年同様に、日馬富士、安美錦など関取4人の伊勢ケ濱。8位から4位に躍進したのが鳴戸です。稀勢の里の大関昇進に加え、高安が年間を通して幕内に定着し、関取は4人。境川、春日野、尾上、時津風が昨年に続いてベストテンに入り、大島を吸収した友綱と鶴竜が大関に昇進した錣山がベストテン入りしました。一門別では時津風と高砂の停滞が目立ちます。

(別紙『部屋別勢力』『一門別勢力』)              平成24年12月26日   真石 博之

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