羽黒蛇、大相撲について語るブログ

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2010年01月04日 | 相撲評論、真石博之

1月場所を前に (真石博之)




本ブログにデータを提供頂いた真石博之氏の記事を、ご本人の許可を頂いたので掲載します。

                       ブログ管理人 羽黒蛇


○一年納めの九州場所は白鵬の完璧さだけが目立ちました。192cmの長身、相手の力を吸収してしまう身体の柔らかさ、自分の体勢が整った瞬間に勝負をつけてしまう決定力。それに加えて、九州場所での進歩は、相手に相撲をとらせながら自分優位の体勢に持ち込むまでの我慢強さが完全に身についたことです。そして、勝負をつけたあとの高ぶらず奢らずの立ち居振る舞いが何よりも結構。立派な横綱です。


年間6場所のすべてが14勝か全勝で、1年で負けたのは4回だけ。空前の年間86勝の大記録達成です。この一年に限っていえば、戦後の五大横綱、大鵬、北の湖、千代の富士、貴乃花、朝青龍を上回りました。不思議なのは、朝青龍相手に千秋楽結びの本割では6連勝なのに、優勝決定戦では連敗していることです。千秋楽で相星に追いついて決定戦にも勝つのは難しいことではありますが、勝負強さでは、まだ朝青龍に及ばないのでしょうか。それより今後に向けて心配なのは、何度もいいますが、稽古が足りないことです。九州でも場所中の朝稽古に下りたのは2回だけだったとか。好漢、自らをいじめてほしいものです。




○対する朝青龍の九州場所は終盤4連敗の竜頭蛇尾でした。肩と腕をがっちり固めた大仰なテーピングは、舞の海が「言訳になるテーピング」と指摘した通りです。横綱としてはあまり前例がなく、見苦しいものでした。三十路も近く、若い頃にはしなかった怪我をするのでしょう。それでも、一年を通して見れば、優勝2回、72勝18敗、平均12勝3敗ですから、立派なものです。




○これに続く年間勝ち星の3位は、11勝少ない61勝の琴欧洲、4位は日馬富士の59勝。日本人大関は、6場所連続して8勝7敗という神業(笑い)をやってのけた魁皇が48勝、琴光喜が47勝。千代大海に至っては、なんと30勝52敗8休の体たらくで、2年連続しての大きな負け越しでした。九州場所直前に師匠の九重が『負け越した段階で休場。来場所は (大関復帰の望みが消える) 6敗をしたら引退』と、負け越しを前提にした妙な発言をしました。かつては弟子に潔い引退を勧めていた師匠が、意地きたなく大関の権利をありったけ行使するのは、初場所後の理事選挙を前にしての発言力確保のためでしょうか。




○若手が揃って期待を裏切った九州場所でもありました。横綱に善戦はするものの一度も勝てない把瑠都。三役の座に留まりたいばかりに千秋楽に注文相撲で7勝目を手にした鶴竜。「百年河清を俟つ」と書かせてもらった稀勢の里は6勝止まり。低い踏み込みが消えしまって1場所で平幕に戻る豪栄道などなど。上位ばかりと対戦する2枚目で10勝をあげた琴奨菊が三役に復帰しますが、もう26歳も間近かなのです。




○というわけで、2横綱でもっている大相撲ですが、その2横綱と過去の23人の横綱とを一覧にしたのが別紙「23横綱の横綱昇進後の戦績」です。優勝回数で、朝青龍は歴代3位の北の湖と並ぶ24回、白鵬はその半分の12回です。二人の年齢差は4歳半、場所数にして27場所。27場所中に白鵬が12回優勝すれば、今の朝青龍に追いつける勘定で、その可能性はあるでしょう。そして、横綱昇進後の勝率では、白鵬が玉の海、大鵬を上回って歴代横綱のトップです。しかし、この先は下がっていくでしょう。多くの横綱が昇進しての2、3年が全盛期で、あとは衰えていくからです。




○ここ数年、舞台をすっかり外国人力士に明け渡してしまっている大相撲の現状を端的に表しているのが、別紙の「外国人力士の優勝」「年齢順一覧」「平成20年新十両13力士の戦績」です。


平成16年からの6年間の36場所で、外国人力士の優勝が34回。その率は何と94%です。そして、今後を担う若手を見ても外国人力士が優勢です。「年齢順一覧」の右側が27歳以下の若手です。<続く>その中で、外国人力士には横綱1人、大関2人がいるのに対して、日本人力士には大関候補もいません。「平成20年新十両の戦績」で見ても、順調に出世しているのは外国人力士です。しかも、外国人力士が1部屋に1人と制限されている中でのことなのです。外国人力士が強い理由は、ここでは省略いたします。




○例年通り、九州場所の不入りは目を覆うばかりで、入場者が3000人台の日が5日もあったとのこと。九州場所をもって大相撲の不人気を云々したくはありませんが、やはり大相撲の人気は下り坂です。


①テレビ局主催の花相撲は賞金が高く、かつて貴乃花や曙が年間に1000万円近くを、平成16年には朝青龍が1100万円を獲得しました。ところが、そうした花相撲が、次々に姿を消しています。まず、平成18年に中日放送の「王座決定戦」がなくなり、今年、日本テレビの「最強決定戦(もとの勝抜優勝戦)」がなくなり、「全日本力士選手権」に賞金を提供していたテレビ東京が手を引きました。その結果、残ったのは、この道の草分けで33回を重ねているフジテレビの「大相撲トーナメント」だけになりました。(NHKの「福祉大相撲」とテレビ朝日の「社会福祉大相撲」は賞金なしです)


②読売新聞社が昭和29年から発行してきた雑誌「大相撲」が、今年の5月号を最後に、月刊から隔月刊になりました。そして、廃刊の噂しきりなのです。


③今年、入門した新弟子は81人でした。これは平成18年の86人を下回り、平成での最少記録です。若貴人気がピークだった平成4年の224人の1/3近くにまで落ち込みました。(別紙「入門者数」)


真剣勝負でない花相撲では視聴率が取れませんが、真剣勝負の本場所は1場所で何日か視聴率ベスト30


に入っています。大相撲の潜在的な人気はあるのに、それが入場者に結びついてないのです。一人1万円


で脚も伸ばせない狭い桝席など、言われて久しい問題点を改革する気持が相撲協会執行部にはないのです。




○その改革を掲げて理事に立候補を表明した37歳の貴乃花。理事10名のうち3名を取れる票数を持つ二所ノ関一門から、現職の放駒、二所ノ関に加え、鳴戸と貴乃花の4名が立候補し、このままだと選挙に突入します。貴乃花支持は、貴乃花部屋の3票と大嶽部屋の2票、それに玉ノ井など彼を信奉する他の一門の若手親方が何人かいるでしょう。果して、当選ラインの10票に届きますか。(別紙「一門別年寄一覧」)




○平成13年から幕下付出の基準が厳しくなり、大学相撲出身の利点が小さくなったため、高校相撲から直接入門する者が増えています。別紙「学生相撲出身の幕内力士」にある通り、初場所では12名となり、最盛時より7名減となりました。しかも、このうち、嘉風と土佐豊を除く10名は30代ですから、今後、大学相撲出身の関取はさらに急激に減っていくことでしょう。




○別紙「横綱大関の公式収入」にある通り、公式収入(公開されている収入)のトップは、3年連続して白鵬で約1億7700万円でした。優勝が前年より1回少なく優勝賞金が1000万円減りましたが、懸賞賞金が1000万円近く増え史上最高の9000万円近くになり、給金も400万円以上増えたため、合計で昨年を約300万円上回りました。収入でも2横綱と5大関の差は歴然です。外国人の横綱大関4人だけで4億円を越え、年間平均で19.7人いた外国人関取全体では7億円を上回る国際貢献となりました。




○番付などにある身長、体重は今週22日の測定値です。朝青龍が4㎏増の154㎏で身長が8㎝高い白鵬より重くなり、把瑠都が4㎏増の188㎏で幕内最重量、35歳でまだ育っている旭天鵬が6㎏増、9月場所前に8㎏増だった千代大海が7㎏減です。体重の増える力士が多く、幕内42人中40人が140㎏以上になり、日馬富士と白馬だけがポツンと120㎏台です。


      平成21年12月25日   真石 博之

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