羽黒蛇、大相撲について語るブログ

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2012年1月場所前(真石博之)

2011年12月30日 | 相撲評論、真石博之
1月場所の資料をお送りいたします
○いつぞや、「不入り続きの九州場所はなくしてしまい、名古屋場所を11月に移して、暑い7月は北海道東北巡業にしましょう」と提案したところ、九州男児にえらいお叱りを受けました。それにしても、今年の九州場所の不入りはひどいもので、テレビが観客席を映すたびに溜息が出ました。定員7500人のところに入った客は平均4300人で、60%を切りました。最低だった5日目は3122人で6割が空席。しかも、この協会の公式記録は、切符が売れた席数のことで、実際に会場に足を運んだ入場者はもっと少ないでしょう。売れているはずの砂かぶりの座布団が目立つのは情けない限りです。
○その九州場所、史上初の9回目の全勝優勝はならなかったものの、白鵬が慎重な中にも気迫のある相撲で21回目の優勝を果たしました。これによって白鵬は、力士の業績の積み重ねをもっとも端的にあらわすといわれる「持給金」で貴乃花を抜きました。優勝回数では、貴乃花にまだ1回及ばないものの、全勝優勝が4回も多いからです。ただ、貴乃花にとっての曙、武蔵丸のような、優勝争いをする強いライバルが白鵬にはいませんので、私は、まだ貴乃花の方が業績は上と思っています。「持給金」の仕組みについては、別紙『平成10年以降の引退 持給金200円以上』の脚注をご参照ください。
○横綱昇進後の白鵬の年間勝率を見ますと、平成20年が79勝11敗で8割7分8厘。21年と22年は86勝4敗で9割5分6厘。そして、5場所しかなかった今年はというと、66勝9敗で8割8分0厘。
最盛期を過ぎたことを数字が示しています。しかし一方で、白鵬の66勝に次ぐのが琴奨菊の55勝だったことからも、今の相撲界で、白鵬が一頭抜きん出ていることは間違いありません。
そして今後については、白鵬よりも年上の琴欧洲、琴奨菊、日馬富士には立ちはだかるだけの力はないでしょう。同じく年上ながらも、怪力でいつも白鵬を苦しめる把瑠都には、相撲をおぼえるための稽古をする心がけを感じません。残るは1歳年下の稀勢の里でしょうか・・・。どうやらというか、やはりというべきか、白鵬の優勝回数は、千代の富士に、大鵬に迫っていきそうです。   (別紙『年齢順一覧』)
○大関を目指した稀勢の里が、場所の直前に師匠を亡くす不幸に見舞われました。鳴戸親方(元横綱・隆の里)は、見るからに太っていて、国技館の階段を昇るのも大仕事に見えました。何でも、体重は現役時代を上回って180㌔もあったとか。貴乃花親方は痩せすぎにしても、激しい稽古をしていた力士が引退して親方になった時、まず体重を落とすことが健康上の急務です。北の富士が「残念です。もっと健康に気を付けて・・・」の一言は苦言に聞こえました。理事に意欲をもっていた鳴戸親方本人も無念だったでしょう。
○その稀勢の里。苦手になってしまった琴欧洲からは辛くも星を拾ったものの、日馬富士、白鵬には完全な立ち合い負け。3連敗中だった把瑠都には組みとめられて、いつも通りの負け方でした。
マスコミが決めた「3場所で33勝」のメドにまだ一つ足りない段階の14日目の打ち出し後、審判部は「大関昇進」を決めました。関脇連続5場所で50勝、強い横綱に2勝3敗なのですから、私は大関昇進に賛成です。舞の海が民放で「貴乃花審判部長は稀勢の里を可愛がっていて、食事に誘ったりしています」と語ったのは、喋りすぎ。喋るのが商売ながら、知っていることを何でも喋ってはいけません。
そして、生れてこのかた使ったこともない「四字熟語」を、辞書からさがし出してきて、たどたどしく言上する悪習を真似なかったのも結構でした。これからの課題は、把瑠都、琴奨菊、琴欧洲など苦手の克服です。横綱に勝っても大関に勝てないのでは困ります。                
○琴奨菊は、9連勝のあと4連敗したものの、千秋楽に稀勢の里を破って11勝。新大関としては立派すぎる合格点です。今年の秋場所からというもの、それまでとは別人のように、心の動揺がまったく外に出なくなりました。一番難しいといわれる精神力の成長は、ある日、突然にやって来るものなのでしょうか。
その琴奨菊や稀勢の里をリードして、一昨年までは大関候補の本命だった鶴竜が、関脇に返り咲いてから10勝、9勝、10勝。じわじわと大関に迫っています。只今の瞬間風速では、琴欧洲、日馬富士より上かもしれません。果して、史上初の6大関はあるのでしょうか。
○幕下上位から8場所連続で自己最高位を続けてきた栃乃若が、千秋楽に鶴竜に敗れて、ついに負け越しました。しかし、初めて顔があった横綱大関に対して2勝3敗の成績は、この力士の非凡さを示しています。また、新入幕の妙義龍、松鳳山、碧山、新十両の勢、徳勝龍が二桁勝利をあげたのは頼もしい新風です。初場所は、新入幕の天鎧鵬、千代の国、旭秀鵬、鳰の湖を楽しみにしています。
○3月場所が中止、5月が「懸賞辞退」の技量審査場所となった八百長事件の波紋は、横綱大関の懐具合にも大きなマイナスになりました。年間の懸賞本数が、昨年の5120本から3237本へと4割近く、金額(1本が5.5万円)にして1億円を越える減少となったのが大きく響きました。最大の被害者は白鵬で、懸賞金が昨年より4500万円減少。優勝が去年より1回少なかったこともあって、白鵬の公式年収は、昨年の2億2000万円強から1億7000万円弱となりました。優勝があった日馬富士が最下位だった去年から2位に、新大関の琴奨菊は関脇時代の三賞が大きく物をいって、部屋の先輩大関で戦績も収入も最下位の琴欧洲を上回りました。(別紙『横綱大関の公式年収』 公式年収とは協会からの支給金です)
○新十両のその後の2年間の出世を追っています。別紙『平成22年新十両16力士の戦績』をご覧下さい。16人のうち来る初場所で、幕内に上っているのが7人、一度は幕内に上ったものの十両に戻っているのが3人。十両のままなのが2人で、幕下に逆戻りが3人です。出世頭は幕内3枚目の高安で、十両昇進後の6場所での負け越しは1回だけと順調すぎる出世。2番手4枚目の栃乃若は、横綱大関と対戦済みで実質ナンバーワン。3番手5枚目の妙義龍は、不運にも新十両2日目に膝を負傷、三段目94枚目まで陥落したものの、その後は大勝ちを続けて劇的な出世街道驀進中。この3人に加え、出場停止の謹慎処分を跳ね返した松鳳山と大道、それに佐田の富士の6人が幕内に定着しそうな気配。魁聖、舛ノ山は怪我の回復次第。宝富士はまだ幕内では家賃が高く、剣武は十両がお似合いといったところでしょうか。
八百長がらみで解雇されたのが中国出身の蒼国来。惜しい力士を失いました。
○『時津風一門の錣山(寺尾)、時津風(時津海)、湊(湊富士)が、初場所後の理事選挙での貴乃花支持を表明。身内だけでは7票しかない貴乃花の再選が確実になった』と、早々と11月に一部で報道されました。
理事の定員は10人。一方、投票する選挙人は、年寄全員のほか、日本人の横綱大関代表、行司代表の計110人前後で、当選には10票が必要です。15票ほどの票を持つ時津風一門は、前回は高砂一門との連携によって理事2人を当選させました。錣山ら3人の動きが、個人の意志か、一門の作戦なのか。二年に一度の、大相撲界あげての駆け引きが、一門間で、その前に一門内で展開される季節とはなりました。
○番付などにある身長・体重は一昨22日に測定されたものです。目につく増加は、新小結・若荒雄の8㌔、佐田の富士の10㌔、大道の7㌔。逆に7㌔減った栃乃若と魁聖は減量でしょうか。軽量代表の隆の山と日馬富士の2㌔減は気の毒。昨日の横審総見で精彩を欠いた白鵬の4㌔減がちょっと気になります。
平成23年12月24日  真石 博之 

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