空想の戦争は現実の戦争に勝てなかったということか。米アカデミー賞の作品賞は、最新の3D映像技術を駆使したSF大作「アバター」ではなく、イラクで爆発物処理に当たる米兵を描いた「ハート・ロッカー」に軍配があがった。
ヒトよりイルカやクジラが大事だと思っているようなハリウッドの住人が選ぶ賞なので、大騒ぎする必要はないが、「ハート・ロッカー」は戦場映画として群を抜いている。映像は飛び出さなくてもバグダッドにいるような息苦しさを感じた。
日本でも戦前は、田坂具隆監督の「土と兵隊」など戦場映画の傑作が生まれた。戦後、戦争を題材にした映画は数多くつくられたが、リアルな戦場映画は皆無に近い。幸いなことにベトナムでも湾岸でも自衛隊が実戦を経験しないで済んだからだ。
65年前のきょう、東京は米軍の無差別爆撃によって焼け野原となった。米軍の恐ろしさを思い知らされた日本人が戦後、日米同盟を基礎に平和と繁栄を享受したのは僥倖(ぎょうこう)だったが、副作用として平和ボケ症が蔓延(まんえん)した。残念ながら岡田克也外相も重篤な患者の一人である。
外務省の有識者委員会は、核搭載艦船寄港を日米の事前協議の対象としない密約があったとする報告書を公表したが、びっくりするような話ではない。関係者が既に証言しており、自民党政権に密約を認める勇気がなかっただけである。
核兵器を持たず、作らず、持ち込ませずとの非核三原則は、沖縄返還交渉中の政治状況下で佐藤栄作首相が決断した。報告書によって三原則が虚構にすぎないことが明白になった以上、責任ある政治家なら見直すのが筋だ。「非核三原則堅持」「命を守りたい」と呪文(じゅもん)を唱えているだけでは、守れる命だって守れない。
産経抄 産経新聞 3/10
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